皆様こんにちは。島村楽器別室 野原のギター部屋管理人の野原です。
Vol.61ではThe Indiana Guitar Showの様子を、Vol.62ではギブソン製品開発責任者マット・ケーラーさんのインタビューをお送りしましたが、皆様ご覧頂けましたでしょうか。
インディアナポリスから始まった4月の海外出張ですが、勉強のためナッシュヴィルの楽器店も巡ってきました。出張レポートや資料用にたくさん写真を撮影してきましたが、社内に留めておくにはもったいないので2回に渡ってシェアしたいと思います。
各楽器店の1枚目の画像にGoogleマップのリンクを貼り付けましたので、旅行気分でお楽しみください。
Blues Vintage Guitars
住宅街の中の一軒家がまるごと楽器店になっているBlues Vintage Guitars。
オーナーのガブリエル・ヘルナンデス氏は一時期ギブソン社で働かれ、独立後はインターネットで楽器の売買を始め、2016年初頭にこの地にショップを開かれたそうです。店内は幅広い年代のユーズドやヴィンテージが所狭しと並べられており、お買い得な商品も多数見受けられました。近年のものでしたが、一般には販売されないであろうレアなレスポールが裏から出てきた時は「さすがナッシュヴィル」と心の中で呟いてました。




柔らかな窓明かりに照らされるGibson ES。私が勤務してきた店舗や馴染の楽器店には窓が無いか、あっても「窓あったっけ?」と記憶も曖昧になるほどのものですので、新鮮に目に映ります。並んでいるのは様々な年代のES-335、ES-345、ES-355です。


ショップ内にはいくつも部屋があるため、部屋に入る前の期待感が途切れません。ある程度一目で見渡せる楽器店には無い感覚です。



エルヴィス・プレスリー。周りのレスポールと比較していただくとお分かりになると思いますが、とにかく大きいです。しかもアコースティックギターまで抱えてらっしゃるので厚みも凄い。エルヴィスのおかげでこの一区画がだいぶ手狭になっているのですが、不思議と「エルヴィスなら仕方がないか」と思えてしまうUSマジック。

そんなエルヴィスの近くには、蓄音機に耳を傾けるそこそこ大きいニッパー。


二階に行ってみましょう。

階段を登り切った正面にはThe One to One Concertのポスター。モディファイされたレスポール・ジュニアを抱えてCome Togetherを演奏する姿に憧れました。

2階の一室。まさに今入室しようとしているタイミングで撮影した写真ですが、この時点で私はある1本のギターに注目しています。どのギターかお分かりになりますでしょうか。

正解はこちら。1963年製のFender Jazzmasterでした。今でこそ様々なカラーがラインナップされていますが、当時のカスタムカラー(サンバースト以外のカラー)は私たちが想像するよりもずっと数が少なく希少です。

スタッフの方が近くにいらっしゃらなかったためお伺いできませんでしたが、ボディにはアーティストのものと思われるサインが書かれています。

ハングタグを見る限りオール・オリジナルとのことですが、このコンディションのフィエスタレッドは貴重です。今回は買い付けではなく視察としてお邪魔しているので購入はしませんが、$10,999.99って結構良心的なプライスですよね。


Rumble Seat Music
こちらは学生時代から毎日のようにWebサイトで眺めていた大好きな楽器店。
エリオット・マイケル氏が1992(1993)年にイサカ (ニューヨーク州)で創業し、ブルックリン、アルバカーキ、サンタフェ、カーメル・バイ・ザ・シーに店舗を拡大、2016年に5店舗を統合する形でナッシュヴィルに移転しました。質の高いヴィンテージなど品揃えが素晴らしく、店舗(やWebサイト)の雰囲気も大変魅力的です。
ギブソンがリイシューを製作する際に、サンプルとして自店のヴィンテージギターを貸し出したりもしているそうです。




どんなギターが並んでいるか胸を膨らませながら扉を開けた瞬間、写真の大きな看板犬が私に飛びついてきました。全く予想だにしなかったお出迎えでしたが、あまりの勢いと人懐っこさ、可愛さに、ギターそっちのけでわしゃわしゃと撫でてました。※画像出典:Gibson Nashvilleファクトリー訪問記2026 後編 / 札幌店 坂口

店内を見てみましょう。そこまで大きな店舗というわけではありませんが、とにかく展示している楽器が素敵なものばかり。

1967 Gibson Trini Lopez Cherry

2011 Gibson Custom Shop Korina Futura Reissue Aged by Tom Murphy
こちらは2011年製のGibson Custom Shop Korina Futura Reissue。2018年にトム・マーフィー氏の手によってエイジングされた1本で、ご本人の署名入りレターが付属しているほか、2011年出荷当時の付属品も完備しています。

1961 Gibson ES-345 Sunburst

1998 Gibson Lonnie Mack Flying V Cherry
Gibson Lonnie Mack Flying V!確か1994年頃に発売されたモデルと記憶しています。モデル名の通りロニー・マック氏が愛用した1958年製フライングVを再現したモデルで、製作本数は約195本です。ボディとネックはコリーナではなくマホガニーで製作されていますが、この佇まいの前ではどうでも良く思えてしまいます。
右下に見切れているのはPaul Reed Smith創立20周年を記念して75本製作された2005 PRS Dragon Double Neck。Lonnie Mack Flying Vに夢中になってしまい全身写真を撮り忘れてしまいましたが、圧巻の品揃えです。






1959 Fender Jazzmaster Sunburst

1964 Fender Jazzmaster Sonic Blue

1965 Fender Jaguar Fire Mist Gold

1963 Fender Stratocaster Sunburst

1965 Fender Stratocaster Sunburst

1966 Fender Jazz Bass Sunburst

アメリカの楽器店に来ると毎回思うのですが、とにかく古いFenderアンプが豊富にあります。自国の製品なので当たり前と言えば当たり前なのかもしれませんが、羨ましい限りです。

ガラスケースに収められたGibson J-200とデヴィッド・ギルモア氏のクリスティーズ・オークション・カタログ。まさかと思いつつ近づいてタグを見てみると、、

やはりご本人が所有されていたJ-200でした。
このGibson J-200はデヴィッド・ギルモア氏が所有した2本目のギブソン J-200で、1994年に発売されたPink Floydの名盤『The Division Bell』で使用されました。The Division Bell tour(1994年)で”Poles Apart”を演奏した際に抱えていたDADGADチューニングのJ-200がまさにこれです。





1957 Gibson Les Paul Model Gold Top

2008 Gibson Custom Shop Jimmy Page Signature Les Paul Custom

1967 Gibson Flying V Sunburst


2021 Gibson Custom Shop Collector’s Edition 1958 Explorer & Korina Flying V Murphy Lab Aged
指板にブラジリアン・ローズウッドを使用した米国限定モデル。1958年当時と同数のエクスプローラーが19本、 フライングVが81本生産されました。かなり希少なプロダクトですが、エクスプローラーとフライングVを揃えて展示しているのが素晴らしいですね。




Gruhn Guitars
言わずと知れたヴィンテージ・ギター界の権威ジョージ・グルーン氏が1970年に創業したショップ。
ジョージ・グルーン氏と言えば著書「Gruhn’s Guide to Vintage Guitars」で有名で、ヴィンテージ・ギターやベースを知る上で欠かせない書物として世界中の楽器店で活用されています。そんなイメージからコテコテのヴィンテージギター・ショップを想像される方もいらっしゃるかもしれませんが、近年物も交えた選びやすい品揃えになっています。



何十年も前に呼んだ書籍のインタビューで、ジョージ・グルーン氏がこのキャラクターについて言及していた記憶があります。The Gibson(リットーミュージック)だったような。このキャラクターを見ると「Gruhn Guitarsに来たんだ」という実感が湧いてきます。



落ち着きのあるシックな色合いの壁には比較的お買い求めやすいモデルからハイエンドまで様々なモデルが展示されています。演奏キャリアや年齢を問わず、どの層のお客様でもゆっくりと楽器選びが楽しめるショップといった印象です。個人的に好きなCollingsのエレクトリックもありました。

写真中央、お客様が持ち込んだアコースティックギターを年季の入ったショーケースに寝かせています。スタッフの方がスツールに腰を掛けた持ち主と談笑しながらギターを隅々見ていたのですが、その光景が本当に素敵で。

で、ショーケースの中に目をやると1950年代のFender Champアンプとストラトキャスターが飾られていたり、更によく見るとガラスの縁がヘリンボーンだったりと、老舗のセンスにやられっぱなしです。
ちなみに、ショーケースの上に乗っている書籍が世界中の楽器店で使用されているGruhn’s Guide to Vintage Guitarsです。もちろん、私も1冊所有しています。



いかにも1980年代前半のレスポールといった佇まい。ボディTOPのメイプル材の表情、アンバー・カラーの強いコントロール・ノブ、楽器のシェイプやアーチの形状などから一目見てそれと分かります。1950年代のレスポールの「再現性」という点では圧倒的に近年のヒストリック・リイシューに軍配が上がりますが、この時代ならではの特有の魅力があります。

こちらのレスポールは1982年製のGibson Les Paul Jimmy Wallace。
※ジミーさん、いつも弊社とルシアー駒木がお世話になっております
1970年代当時のレスポールは多くのギタリストが望む1950年代の仕様からかけ離れていたため、ジミー・ウォレス氏自身が所有する1959年製のレスポールとES-335を持ってギブソン社を訪れ、それらを基にしたモデルの製造を依頼しました。そしてリリースされたのがこのレスポールです。



1958年製のGibson EB-2のピックガードに貼られているのは1949年に劇場用短編映画『Fast and Furry-ous』で初登場したロード・ランナーのステッカー。一般的に買い取られたギターに貼られたステッカーはクリーニングの段階で剥がされることが多いのですが、このステッカーを残したくなる気持ち、とても良く分かります。


The 1852 “Elegant’ or “Lula” Guitar
『これはC.F.マーティン・シニアの在任中に製造されたマーティン・ギターの中で、現存することが確認されている最も豪華なモデルです。』
ジョージ・グルーンのメモ書きとともに展示されていた貴重なマーティン・ギター。
マーティンのアーカイブに残された3通の手紙によると、製作依頼主は結婚を控えた女性への贈り物としてこのギターをオーダーしたそうで、国内で最高のギターを望んでいました。ローズウッド製のケースの上部には「Lula」という名前が筆記体で象嵌されており、このギターを結婚祝いの贈り物として受け取った女性の名前だろうと考えられています。
1852年12月27日出荷、最終卸売価格110ドル


壁に飾られた写真や記事を眺めていると、ギタービジネスに従事する者としてまだまだ頑張らないとという気持ちになります。
残念ながらジョージ・グルーン氏をお見かけすることはできませんでしたが、若い頃からグルーン氏の書籍やインタビューを読み漁っていたので、お店に来れただけでも良かったです。

まだまだナッシュヴィルの楽器店巡りは続きますが、長くなってしまうので続きは次回Part.2で。











