久々のメーカー探訪です。
皆さん、大変長らくお待たせいたしました。
今回はギタセレでのブランド検索で常に上位をキープしているMOON GUITARSの制作現場にお邪魔して、そのコダワリと高品質な理由をこの目で確かめたいと思います。
MOON GUITARS & PGM
MOON GUITARS
MOON GUITARSは1978年に始動した、カスタム・コンポーネント・メーカー。1979年には現在もMOON GUITARSを制作するPGMでの生産を開始します。その後、TOTOのSteve Lukatherが”あの”真っ赤なボディ&ネックに、ピックガードを含めたアッセンブリーをゴールドでまとめたSTモデルを使用してMOON GUITARSの名は日本だけでなく世界にとどろきます。

↑35周年記念で製作された当時のモデルを再現したST-35th ANV TR/M GO
今やMOON GUITARSはコンポーネント・メーカーとして国内では角松敏生、山本恭二、鮎川誠、近藤房之助、西山毅、海外ではLarry Grahamを始めとした数多くのアーティストが愛用する一流ブランドとしての地位を築いています。
PGM(Professional Guitar Manufacture)
PGMは代表の乳井和彦氏が1978年に設立したコンポーネント・メーカー。PGMブランドでのギター製作だけでなくMoonやその他ブランドのギター製作を担っています。先述のとおりMOON GUITARSとの縁は浅くは無く、MOON GUITARSの歴史はPGMとともに作り上げられたと言っても過言ではありません。ST用ツバ出し22Fネックや洋銀(シルバーニッケル)ナットなど、現在ではスタンダードになっているアイデアも乳井氏が生み出したものが多いのです。(詳しくは後ほど記載します)
いざPGMへ
2月某日、世間では大寒波が来ると寒さへの警戒をしている中、埼玉県比企郡にあるPGMへ電車で向かいます。

目的地である小川町駅に向けて、だんだんとのどかな風景が広がってきます。


着きました。MOONを製作するPGMはここから車で約10分。ワクワク♪

PGMの入り口には大きな看板は無く、「K.nui」というロゴ・ステッカーが貼られています。
潜入
入口~塗装ブース


入口を入ってすぐ、MOON、PGMブランドを愛用する数々のアーティストたちの写真が飾られています。
桑田佳祐さん、Mick Taylerさん、今沢カゲロウさん…
国内、海外問わず錚々たる面々。

ネックで作られたドアノブを開けて塗装ブースを覗かせて頂きます。
いや、こっちじゃないです、すみません。

ちょうどメタリック・カラーの塗装をやっている最中で、手を止めさせてしまいました。
重ねがさねすみません…
1Fは乳井氏のお部屋と塗装ブース、そして倉庫になっていて、作業のメインは2F。
いざ、2Fに上がって行きます。
職人の道具とネックポケット

2Fに上がってすぐ、「今、すべて任せられる人」と乳井氏が全幅の信頼を置く吉田恵一氏が作業中。

乳井氏、吉田氏からPGMの「命」とも言うべくき職人の道具を見せて頂きます。

ネックポケットを細かく調整するためのノミ。
「使い方」がポイントとの事で、その使い方をマスターするにはかなりの時間がかかるそう。
以前他社のビルダーが修行に来たとき、「こんなことまでやるんですか!?」と驚いたそう。
PGMではそこまで細かく設置面にこだわるんです。

PGMでこだわる設置面は画像の赤い矢印のポイント。
青い矢印(ポケットの側面)においては、多少の隙間はさほど問題にはならないそうです。

というのも、弦が張られると白矢印の方向に力が働くため、とのこと。
「それ以上は企業秘密だなw」と乳井さんは笑います。
もっと知りたい…
「面(ツラ)」が大事
ふと視界の隅にピックガードの山が…
全部ですか!?


「市販のピックガードを買って付けると、『面』がみんな一緒になっちゃうんだよ。」
「自分のところで削るとさ、その楽器に合わせて『面』を作ってあげられるでしょ?」
ネックポケットのところももちろん削って仕上げできるという事です。
そういった所まで細かくこだわるからこそ、生産数は少なく、ハイクオリティな楽器が出来上がるわけですね。
実はこれはその元になっているピックガード。

35周年モデルは生産数がかなり少なかったモデル。そのためブラスピックガードは実は乳井氏がすべて磨いたそうです。
とおっしゃるお顔はとても嬉しそう。
乳井氏、本当にギター作りがお好きなんですね。
K.nyuiモデル
K.nyuiのお名前が入ったモデルも多数あります。
MOONの中でも特にK.Nyuiモデルはどういった点が違うのでしょうか…?

「やっぱり日本の会社が買える材には限度があって、どうしてもアメリカ製ギターのような本当に硬い材は買えない訳で。でも日本に入ってくる材の中でも硬い材があるので、その選定からやるんだよね。で、組み込みや仕上げなんかまでを自分が口を出して手を出して行うのがK.Nyuiの名前が入ったモデルなんだ。」
基本的な造りはすべてPGMのハイクオリティなレベルを維持しているにもかかわらず、更にシビアな材選定や組み上げのマッチング(硬いネックと、その硬さにあったボディの組み合わせ)を乳井氏自身で関与するK.Nyuiモデル。ゾクゾクします。
PGM乳井氏が生み出した現代の定番スペック
ツバ出し22フレット指板

昔ESPにいた頃、Charさん用にSTを作ることになって。21フレットで作り終えたんだけど、Charさんはムスタングを使ってたから22フレットが良いって言われて、「どうしようかなぁ~」と悩んでたら「ハッ」と閃いたんだよね。指板を延ばせばイイんじゃないかって。その後Tom Andersonなんかもしれを見て、「これは良いアイデアだ!」って。そうやって定番化していったんだよね。
今では様々なメーカーが採用しているツバ出し指板。スケールを変えずにフレット数を増やせるというメリットが享受できます。
ブラスナット

ルカサーのモデルを作るとき、赤いボディにゴールドパーツで派手だから、「ナットもゴールドにしよう」ってなって。それが始まりなんだよね。
ブラスナットも乳井さんが生み出したんですね!?
カーボンロッド
ベースを作るときはネックに鉄を入れたほうが良い音するんだよね、ネックの剛性が上がって。だからネックには鉄を入れたいんだけどさ、重くなっちゃって。ヘッドが落ちちゃうでしょ。だからどうしようか、ってことでカーボン入れたんだよね。そうしたらすごく音が良いんだ。
カーボンロッドまで…
乳井さん、ホントにアイデアの宝庫。
オイルフィニッシュ

オイルフィニッシュも日本でやり始めたのはウチなんだよ。昔ウォルナット材を使ったMOONのベースを作ってね、当時「塗装してくれ」って言われたんだけど、いやぁ~、ウォルナットは塗装しちゃうと安っぽくなっちゃうからオイルがいいんじゃないかって提案して。やり方は自分で考えたんだけどさ。やっぱりオイルのほうが高級感出るんだよね、ウォルナットは。コアなんかもそうだよね。木材によって塗装した方が良いか、オイルで仕上げたほうが良いか、判断するんだ。

MOON GUITARSの高い品質を維持しながら製作しているPGMの代表、乳井和彦氏(左)とその後継者、吉田恵一氏(右)。
今回はお忙しい中ありがとうございました! 今後もハイクオリティな楽器をお待ちしてます!!「
乳井和彦氏プロフィール
青森県出身。クラシックギター製作家茶位幸信氏のもとでギタービルダーとしてのキャリアをスター トさせ、ギター製作、ひいては木工技術において知識と経験を蓄積。その後フェルナンデス、ESPに勤務して舞台をエレキギター、ベースに移してPGMを設立。Steve Lukather、Larry Graham、桑田佳祐といった数々のトップアーティストの楽器を手がけ、日本のトップビルダーの一人として世界に名を馳せる。
















