今年で開催3年目となる島村楽器が考えるギター好きのための「ギターの祭典」、ギタラバ。
静岡パルコ店によってオーダーされた拘りの品々が集結する「ギタラバSHIZUOKA」の開催が迫ってきました。
いつもは「ギタセレ中の人の見どころ」という事で個人的に気になるアイテムを紹介していましたが、今回は特別編。
静岡パルコ店平林(ひらばやし)に登場いただき、「ギタラバSHIZUOKA」を語る上では外せない希少材“ハカランダ”について紹介いただきます。
ギタラバSHIZUOKAコンセプト「Modern&Luxury」
皆様こんにちは。静岡パルコ店の平林です。
ギタラバSHIZUOKAでは「Modern&Luxury」をテーマに、国内外の工房へオーダーした逸品を取り揃えます。
さらに今回は「Jacaranda special feature」を副題として掲げ、ハカランダ材を使用した特注品が多数入荷します。
楽器用のマテリアルとして最も高い人気を誇りながら流通量が極端に少なく、レアウッド中のレアウッドであるハカランダ材。
楽器に造詣が深くなるに連れて耳にする機会が多くなるマテリアルの一つですが楽器としての纏まった情報は少ない印象があります。
こちらで書かせていただく私の今までの経験から得た情報が皆様の参考になれば幸いです。
ブラジリアンローズウッド=ハカランダ・デ・ブラジル
「ハカランダ=ブラジリアンローズウッド」と思われがちですが実は中南米産のローズウッドの総称で、ブラジリアンローズウッドに限定した呼び名ではありません。
ハカランダは「ハカランダ・○○」と呼称されるので、厳密に言うと「ブラジリアンローズウッド=ハカランダ・デ・ブラジル」となります。
当記事内でのハカランダ表記は「ブラジリアンローズウッド」材を指しますので予めご了承ください。
学名は「Dalbergia Nigra」
ブラジリアンローズウッドはその名の通り、主にブラジルのアマゾン地域に自生する木材で、正式な学名は「Dalbergia Nigra」です。
Dalbergia Nigra→Brazilian Rosewood→ハカランダ・デ・ブラジル→ハカランダ
というように呼称が変化していき、現在では「ハカランダ」という呼び方が定着しているのだと予想します。
赤褐色から紫褐色の木目が特徴的な美しい外観と、しっとりとした上質な質感や高い耐久性があるため、高級家具や箸、万年筆などに使われます。
↑ギタラバSHIZUOKA出品 Y.O.S.ギター工房Quintic用のハカランダネック材
なぜ希少なのか?
大きく分ければ希少さは以下の4つが要因です。
1.ワシントン条約(CITES)による保護対象
1975年に発効した「ワシントン条約(CITES:絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)」は、自然のかけがえのない一部をなす野生動植物の一定の種が過度に国際取引に利用される事のないよう、これらの種の保護を目的とした条約です。
ブラジリアンローズウッドはその中でもCITESⅠ(附属書Ⅰ)という全体の3%しかない、最も高いグレードに掲載された種で、すでに絶滅の恐れがあり、一番厳しい「取引禁止」いう規制の対象です。
動物では、ジャイアントパンダやトラがCITESⅠですので、ブラジリアンローズウッドがいかに希少かつ保護されているのかが想像いただけるのではないでしょうか。
EUではピック1枚でも厳しく輸出入が制限されておりますので、PRS社ではワールドワイドで発売するモデルへのブラジリアンローズウッド材の使用を避けております。
日本国内で流通するハカランダ材を使用した楽器ですが、PRS社などは輸出国のCITESⅠの申請をクリアしています。
他は国内で建築資材として使用されていたものや数十年以上の間、日本でシーズニングされていたマテリアルなどがありますが、限られた資源を大切に使用している状況です。
2.伐採の制約
流通だけでなくブラジリアンローズウッドの伐採には法的な制約や規制が存在します。
多くの国や国際的な規制機関がこの木材を保護対象とし、持続可能範囲での伐採を確保しようとしています。
過去に過度な伐採が行われたため、種の保存と持続可能な利用が必要とされる理由です。
3.成長に時間がかかる
ブラジリアンローズウッドの木は成長に時間がかかり、十分な木材を得るには長期間が必要です。
木材が十分な大きさに成長するまでに何十年もの歳月がかかる事があるため供給が限られています。
4.需要と供給のバランス
記述の通り、供給量が極少数なのに対してユーザーの需要は非常に大きいです。
その結果、ブラジリアンローズウッドの希少性が高まっています。
以上の要因が結びついて、ブラジリアンローズウッドの希少性と高い価格にも繋がっています。
楽器とBrazilian Rosewood
音色や質感、外観に関しては好みがあるので、全ての方に好まれるというわけではない事を前提に特徴を記載いたします。
ブラジリアンローズウッド材が持つサウンドの特徴は下記の通りです。
1.豊かな低音と透明感のあるプレゼンス成分
ブラジリアンローズウッドは深く豊かな低音と透明感があるプレゼンス成分が特徴です。
これによりアコースティックかつ迫力のあるサウンドを奏でる事ができます。
2.複雑な倍音構造
ブラジリアンローズウッド材は複雑で豊かな倍音構造を持っており、偶数倍音と奇数倍音が混在した芳醇かつ響きの深いものとなります。
またブラジリアンローズウッドは優れたプロジェクション(響きの広がり)を持ち、ダイナミックなサウンドをもたらします。
3.硬質なマテリアルによるプレイアビリティとロングサスティーン
ブラジリアンローズウッド材は硬質な木材であるため、ネック材や指板材に使用した場合、反りや拗れに強い特性を持ちます。
加工は容易ではありませんが弦高を低くセッティングできるため、ハイエンドギター等において好まれる高いプレイアビリティの確保が可能です。
さらにプレイを楽しむ適度な生鳴り感を有しながら弦振動を損なわないため、ロングサスティーンを得る事もできます。
4.演奏や環境・時間の経過とともに変化するサウンド
ブラジリアンローズウッド材は時間とともに熟成し、サウンドが深みを増す事が知られています。
楽器が年月や楽器演奏を経て成熟するにつれて、そのサウンドはより魅力的になります。
木材は生きている有機物であり、乾燥による安定をはじめとした環境の影響、演奏による影響などにより変化する結晶構造が存在します。
木材内部の結晶構造が変化し、これが楽器のサウンドに影響を与えます。
特に楽器が演奏される事による振動や共鳴の発生によって木材が環境以外の変化を経験し、サウンドが独特の深さや豊かさを持つようになります。
演奏者のスタイルや演奏頻度よって木材が変化し、楽器のサウンドが進化します。
5.高い耐久性
ブラジリアンローズウッドは非常に硬く、耐久性があります。
これにより楽器は長寿命であり、弾き手にとって信頼性が高いです。
ネック材に使用する際はヘッド角の違いによって非常に厚みのある木材を必要とする場合があり、価格にも大きく影響します。
↑ヘッド角度付きネック(PRS Private Stock Custom22)
ハカランダ材の色によるサウンドへの影響
ブラジリアンローズウッド材には赤みが強いものやブラックハカランダと称されるエボニー材のような黒々とした色の木材がありますが、色の違いが直接サウンドの違いには直結しません。
↑ブラックハカランダ・ネック(Sugi Guitars DS496)
板目のハカランダ材はワイルドかつ赤褐色のマテリアルが好まれ、柾目のマテリアルはブラックハカランダの方が相対的に好まれます。
極稀にフィギュアドハカランダと呼ばれる杢入りの市場価格が高いマテリアルもあります。
ヴィンテージ楽器の場合は付着した皮脂の酸化などによる変色もありますので、お好みの楽器を探求する楽しみもあります。
↑板目(フラットソーン) のブラジリアンローズウッド材 (SUGI Guitars DS496)
↑フィギュアドハカランダを使用したオール・ブラジリアンローズウッドのボディ材(PRS Private Stock Santana)
様々な要因が複雑に絡み合い、ブラジリアンローズウッドがプレイヤーや時間とともに成熟し、サウンドが変化していく事が個体差の一因に繋がります。
PRS社を象徴するアーティストであるSantanaモデルの多くや、50~60年代のレガシーブランド黄金期と言われるギターのボディ材や指板材に使用されているため、数々の名演で音色を堪能いただけます。
ギタラバSHIZUOKA出品商品のご紹介
ギタラバSHIZUOKAではブランド各位にご協力のもと、希少かつ限られた資源を提供いただき製作された特別な品々を出品いたします。
ブラジリアンローズウッド材の特徴を活かした楽器製作や演奏をお楽しみいただければ幸いです。
Y.O.S.ギター工房
「Quintic /Brazilian Rosewood Neck」
2024年に創業10周年を迎えるY.O.S.ギター工房のアニバーサリーモデルを先行販売いたします。
ブラックハカランダ・ネックにアルダーボディを組み合わせた、静岡県が誇るギター製作家である吉田氏が手掛ける1本です。
※2023年12月16日(土)17:00~ 静岡パルコ店店頭にて抽選販売いたします。
Altero Custom Guitars
「ASTRA/Brazilian Rosewood Neck&Angel Quilted Maple」
希少材ブラジリアンローズウッドをネックに、さらにAngel Step Quilted Mapleをボディトップだけでなくボディバックにまで使用した、究極とも言えるスペックを実現しています。
※2023年12月16日(土)18:00~ 静岡パルコ店店頭にて販売開始。購入希望者が複数の場合、店頭で抽選いたします。
MT Guitarworks
「Matrix/Brazilian Rosewood Neck&Black Korina Body」
MT Guitarworks社の市販品では初となるハカランダネックモデルをギタラバSHIZUOKAにて発売。
ブラックコリーナボディに、コントロールパネルやパーツ類までブラジリアンローズウッド材を使用した逸品です。
※2023年12月16日(土)18:00~ 静岡パルコ店店頭にて販売開始。購入希望者が複数の場合、店頭で抽選いたします。
T’s Guitars
「DTL22-Hollow&DST24/Brazilian Rosewood Neck&Top」
日本が誇るハイエンドギターブランドが製作するブラジリアンローズウッドネック&ボディトップという逸品を2モデル出品いたします。
※2023年12月15日(金)10:00~ 静岡パルコ店店頭にて販売開始。購入希望者が複数の場合、店頭で抽選いたします。
Minamo Guitars
「S2 5Strings Brazilian Rosewood Fingerboard」
静岡県発Minamo Guitarsが製作する初のブラジリアンローズウッドモデルです。
素晴らしいキルトメイプル・ボディトップとのマッチングをお楽しみ下さい。
※2023年12月15日(金)10:00~ 静岡パルコ店店頭にて販売開始。購入希望者が複数の場合、店頭で抽選いたします。
ご来場お待ちしております
ギタラバSHIZUOKA会場では上記の商品販売以外に、ミュージシャンやビルダーによるエフェクターイベントや配信イベントも実施いたします。
ぜひ皆様のご来場をお待ちしております。
ギタラバSHIZUOKAについて詳しくは下のボタンから特設ページをご覧くださいませ。