Martinファクトリーでの木材選定&特別モデルの買付をレポート【Martin Factory Tour2024】

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Martinファクトリーでの木材選定&特別モデルの買付をレポート【Martin Factory Tour2024】

記事中に掲載されている価格・税表記および仕様等は予告なく変更することがあります。

皆様こんにちは。
島村楽器にてアコースティックギターのバイヤーを担当している古川と申します。

2024年11月12日から16日まで、歴史あるペンシルベニア州ナザレスにあるMartin(マーティン)ファクトリーを訪問しました。
今回で6度目の訪問となりますが、新たにカスタムショップ専用のルームがリニューアルされるということで、例年より少し遅い11月の訪問となりました。

本記事ではファクトリー訪問の様子をレポートしてまいります。

現地到着

羽田空港から12時間のフライトの末、ニューアーク空港に到着しました。そこからは車で約2時間移動し、ホテルを目指します。

日本では10月並みの20℃を超える暖かい気候が続いていましたが、ペンシルベニアは肌を刺すような寒さです。
こちらにいらっしゃる際は、必ず天気予報を確認して防寒対策をしてください。

ホテルに到着後は軽く軽食を取ってから、明日から始まるファクトリーツアーに備えて就寝します。
長旅の疲れを癒し、しっかりと休むことで、充実したツアーに臨めるようにしたいと思います。

1日目

当日は非常に晴天に恵まれ、爽やかで気持ちの良い1日が始まる予感がします。

どんな新しい発見や出会いが待っているのか、ワクワクしながら歩みを進めます。

ウッドセレクション

1日目は、各ディーラーが情熱を持って行うエキサイティングなウッドセレクションから始まります。
新しくリニューアルされたカスタムショップのショールームの扉を開けると、息をのむような高級感が漂うモダンな空間が広がります。

訪れる人々を魅了するこの場所で、次にどんな木材と出会えるのか、その期待感で胸がいっぱいになります。

ギターにおける『顔』とも言える木材の選定は、ファクトリーツアーに参加する最大の魅力のひとつです。
ここでは、各ディーラーがそのこだわりを反映させるためにトップ材、そしてバック材(サイド材はバック材とのマッチング)を慎重に選んでいきます。

この選定した木材がどのように楽器としての生命を吹き込まれていくのか、想像するだけで胸が高鳴ります。

急遽使用可能となった貴重なマダガスカルローズウッドは、ディーラーたちの間で非常に人気が高く、約30本ものオーダーが殺到しました。

そのため、フェアな方法として出目が最大12のサイコロを2つ振り、その目の大きなディーラーから順番に木材を選ぶこととなりました。
私が振ったサイコロの出目はなんと10と10の20で、参加ディーラーの中で最高の数字を引き当てることができました。

この瞬間、自分の運の強さをひしひしと感じながら、もしかしたら、これが今回の出張での最大の成果となるのではないかと思いました。
選び抜いた木材が、どのような素晴らしいギターへと生まれ変わるのか、今からとても楽しみです。

こちらに並べられているのは、厳選された40ピースのマダガスカルローズウッドのバック材です。
その中でも、特に目を引くひときわ輝いている木材があります。私が選んだのはどの木材か分かりますか?

正解は、画像の手前にある『25』番のマダガスカル・ローズウッドです。

今回選んだこの木材は、際立った濃淡と美しい板目を持ち、並べられた瞬間に特別な存在感を放っていました。
まるでこの出会いが運命付けられていたかのように、自然と引き寄せられてしまいました。

この木材から作られる特別なギターを手にするお客様が、どれほど幸せな顔をされるかと思うと、私たちの期待も高まります。
音色だけでなく見た目でも楽しめる、唯一無二のギターが誕生する予感がします。

こちらの製品は仙台ロフト店に納品されます。

続いて、希少なハワイアンコアの選定です。

この作業では、目が細かく、フィギュアードが美しい木材を見つけることが鍵となります。
揮発性の高いアルコールを木材にかけて、その場で完成時の色合いや状態をチェックします。

異なる角度から何度も視線を送り、細かな目の詰まり具合を丹念に確認しながら、最終的に息をのむような美しいグラデーションを持つ木材を選ぶことができました。この選定によって、今後どれほど素晴らしい楽器が出来上がるのか、その期待に胸が膨らみます。

ハワイアンコアのTOP材

ハワイアンコアのBACK材

こちらの製品は仙台ロフト店に納品されます。

D45クラスの木材選定では、思いもよらない嬉しい展開が待っていました。

当初はプレミアムグレードの木材からの選定を予定していましたが、なんと急遽アップチャージなしで最上級のマスターグレードの木材を選べることになったのです。
濃い色合いと目の詰まった柾目が特徴のこの木材は、ひと目でその特別さを感じ取ることができます。

近年、ここまで美しく整った木目を持つインディアンローズウッドに出会うことは稀であり、この貴重な機会を活かせたことに心から感謝しています。
この選定が、どれほど素晴らしい楽器の誕生を導いてくれるのか、今から期待でいっぱいです。

こちらの製品は静岡パルコ店に納品されます。

オーダー品の入荷先店舗情報

為替レート1$=151円~155円とした場合の販売金額となります。実際の販売金額は入荷時の為替レートにより変動します。
なお、入荷は約1年後の予定です。予めご了承ください。

店舗名型名カラー販売価格
仙台ロフト店CTM 000-45 Adirondack #C24-039493N3,320,900(税込)
店舗名型名カラー販売価格
仙台ロフト店CTM 000-42 Cocobolo #C24-038428N2,075,700(税込)
※TOP材の撮影ができておらず、申し訳ございません。
店舗名型名カラー販売価格
仙台ロフト店CTM 00C-28 Koa #C24-038431N1,359,600(税込)
店舗名型名カラー販売価格
静岡パルコ店CTM D-45 #C24-042885N2,874,300(税込)

店舗名型名カラー販売価格
静岡パルコ店CTM D-45 #C24-042880N3,183,400(税込)
店舗名型名カラー販売価格
新宿PePe店CTM OMC-28 #C24-039550N1,576,300(税込)
店舗名型名カラー販売価格
札幌パルコ店CTM 00-12 Fret Cutaway #C24-033618N1,027,400(税込)

マーティンミュージアム見学

1日目の最後に訪れたマーティンミュージアムは、マーティン社の歴史と音楽界への影響を深く理解することができる素晴らしい場所です。

1833年にその幕を開けたマーティン社は、アコースティックギター製造の最前線で革新を続け、音楽界における存在感を強めてきました。
このミュージアムでは、過去の伝説的なミュージシャンたちが愛用したギターが展示されており、彼らがどのようにして音楽史にその名を刻んだのかを偲ぶことができます。

また、製造工程の進化を垣間見ることができる展示も数多くあります。
これらの展示物はただの楽器ではなく、音楽の歴史に残された不滅の足跡であり、技術革新の証でもあります。

訪れる人々は、マーティン社が培ってきた職人の技術と情熱に触れ、これらの楽器がいかに音楽文化の発展に寄与してきたのかを実感します。

ミュージアムを巡る中で、長年にわたるマーティン社の変わらぬ情熱と卓越した技術に心を打たれました。
これらの展示は、訪れる人々に単に視覚的な感動を与えるのみならず、音楽そのものの価値を再認識させてくれます。

見学の後は、ホテルに戻って小一時間ほど仮眠をとり、日本との14時間の時差ボケを少し解消しました。

その後、マーティン社の新社長であるトーマス氏と、海外営業部長のリック氏と共にレストランで会食を楽しむ機会がありました。
美味しい食事と共に、貴重な話を伺うことができ、非常に充実したひとときとなりました。

夜10時頃にホテルに戻り、まだ完全には取れていない疲れと時差ボケを感じつつも、翌日に備えてしっかり休むことにしました。
1日目という初日のイベントの数々を振り返り、充実感とともに徐々に眠りに落ちていきました。

2日目

プレビルド・カスタム受注会

2日目には、Martinカスタムショップによる特別なイベント、世界でたった1本のオンリーワン商材『プレビルドカスタム』の受注会が開催されました。

ショールームには、厳選された合計31本のギターとウクレレが展示され、それぞれの楽器が独自の魅力を放っています。
この特別な機会には、8つのディーラーが参加し、ドラフト制で入札を行うという興奮に満ちたプロセスが展開されました。

各ディーラーがどの楽器を選ぶのか、その選択が決まるまでショールームには緊張感と期待感が漂い続けました。

当社の1位指名として選んだのは、ショーモデルにふさわしい華やかな美しさと見事なフレイムメイプルのグラデーションが施されたモデルでした。

そのデザインは、一目で人々を魅了する圧倒的な存在感を放っています。
幸運なことに、この特別なモデルを単独指名で獲得することができ、喜びと満足感に包まれました。

この逸品は、ギターコレクションにおいて間違いなく話題を呼び、訪れるお客様にも大きな感動をもたらしてくれることでしょう。

プレビルドカスタム 受注商品の紹介①

型名カラー販売価格展示店舗入荷予定
CTM GP ALP/BLM-Flameトーステッド バースト¥2,679,600(税込)仙台ロフト店12月25日
バイヤーコメント

このカスタム「GP」グランドパフォーマンスボディのギターは、その芸術的なデザインと卓越した音響性能で奏者を魅了します。

プレミアムな認定ユーロスプルース(高地スイス産)のトップ材は、音響グレード7-8に相応しい豊かな響きをもたらし、スキャロップドブレイシングとゴールデンエラスタイルが深みのあるサウンドを支えます。パシフィック ビッグ リーフ フレイムメイプルを使用したバック&サイドは、音に立体的な厚みを加えます。

ビジュアル面では、トーステッドバーストのトップカラーとヨーロピアンフレイムメイプルのバインディングがクラシカルでありながら個性的な美しさを提供します。
フレイムメイプルのネックとヘッドプレート、そしてスタイル45のリデュースドヘキサゴンインレイが施されたブラックエボニーの指板は、演奏者に贅沢感を与えます。
音楽愛好家からプロフェッショナルまで、すべてのギタリストにとって、真のパートナーとなるモデルです。

仕様
ボディシェイプ“GP” グランドパフォーマンス ボディ
トップ材認定ユーロスプルース単板 (高地スイス)
トップグレードプレミアム
ファイナルトップグレードグレード 7-8
ブレイシングシェイプ, トップスキャロップド
ブレイシングスタイル, トップゴールデン エラ
バインディングヨーロピアン フレイムメイプル
バック, サイドパシフィック ビッグ リーフ フレイムメイプル単板
ネックフレイムメイプル 2ピース
ネックプロファイルモディファイド ロー オーバル
ヘッドプレートパシフィック ビッグ リーフ フレイムメイプル
フィンガーボードブラック エボニー
ナット材コンペンセイテッド ボーン
ナット幅44.5mm
スケール645.2mm
フィンガーボードインレイスタイル 45 リデュースドヘキサゴン
トップカラートーステッド バースト
ブリッジブラック エボニー
サドル材コンペンセイテッド ボーン
チューニングマシンウェイヴァリー ゴールド 4060-G W16 w/ BB ボタン
付属品ハードケース
保証期間3年
ギャラリー

次に、2位指名として選んだのは、『カスタムショップらしさ』をテーマにしたモデルです。

このモデルは、サンバーストカラーの鮮やかさとマッチングヘッドの美しいデザインが際立ち、多くの注目を集めました。
幸運にもこちらもスムーズに獲得できました。その独特の美しさと個性が放つ特別な存在感は、これから多くの音楽愛好家を魅了することでしょう。

加えて、フィンガーボードとブリッジに使用されたグァテマラン・ローズウッドの色合いが一層の高級感を与えており、その美しさがモデル全体を際立たせています。

プレビルドカスタム 受注商品の紹介②

型名カラー販売価格展示店舗入荷予定
CTM GP SW/BLM-Flameアンバートーン1933¥2,101,000(税込)名古屋パルコ店12月25日
バイヤーコメント

「GP」グランドパフォーマンスのボディシェイプが生み出す音色は、澄んだ鈴なりの響きを持ち、スキャロップドブレイシングとゴールデンエラスタイルにより、深みのある音圧を放ちます。認定ユーロスプルースのトップ材とパシフィック ビッグ リーフ フレイムメイプルのバック&サイドは、高い音響性能を誇ります。

アンバートーン1933のトップカラーやフレイムメイプルのネックとヘッドプレート、スタイル45のインレイが施されたフィンガーボードが、芸術品のような美観を提供します。
これは、演奏するたびに視聴覚を豊かにし、贅沢な時間を生むギターです。

仕様
ボディシェイプ“GP” グランドパフォーマンス ボディ
トップ材認定ユーロスプルース単板 (高地スイス)
トップグレードスタンダード
ファイナルトップグレードグレード 3-4
ブレイシングシェイプ, トップスキャロップド
ブレイシングスタイル, トップゴールデン エラ
バインディングアンティークホワイト
バック, サイドパシフィック ビッグ リーフ フレイムメイプル単板
ネックフレイムメイプル 2ピース
ネックプロファイルロープロファイル
ヘッドプレートパシフィック ビッグ リーフ フレイムメイプル
フィンガーボードグアテマラ・ローズウッド
ナット材コンペンセイテッド ボーン
ナット幅44.5mm
スケール645.2mm
フィンガーボードインレイスタイル 45 リデュースドヘキサゴン
トップカラーアンバートーン1933
ブリッジグアテマラ・ローズウッド
サドル材コンペンセイテッド ボーン
チューニングマシンウェイヴァリー ゴールド 4060-G W16 w/ BB ボタン
付属品ハードケース
保証期間3年
ギャラリー

今回獲得した2本の商品は、再度セットアップを行った後、約1ヶ月ほどで入荷する予定です。

これらの特別なギターがどのような音色を届けてくれるのか、今から楽しみです。
詳細な入荷先についてご興味のある方は、どうぞお気軽に名古屋パルコ店 古川までお問い合わせください。

ファクトリー工場見学

プレビルドカスタムの受注会が終了した後は、工場見学を行いました。

マーティン工場は、最新技術とトラディショナルな手法の絶妙なバランスを保ちながら、その進化を続けています。
毎回訪れるたびに、このバランスには感銘を受けます。

最新の機械が導入され、効率化と精度が向上している一方で、多くの工程で職人の手作業が欠かせない部分もあります。
この伝統的な手作業こそが、マーティンサウンドの独特さを形作る要因だと感じました。

職人たちは、一つ一つの楽器に魂を込めて取り組んでおり、長年にわたって培われてきた技術と知識を惜しみなく注いでいます。
そうした姿からは、単なる製品作りを超え、音楽という芸術を創造するという深い情熱が伝わってきます。

このようにして生まれた楽器は、演奏者にとって単なる道具ではなく、真に音楽のパートナーとなることでしょう。

工場を巡り、一流の職人たちの情熱と技術に触れたことで、新たなインスピレーションを得ました。
これを機に、これらの楽器の持つ魅力や奥深さを、より多くのお客様にお伝えしたいという思いが一層強くなっています。

ファクトリーギャラリー

夜には、マーティン社の方々との最後のディナーが開催されました。
楽しいひとときを過ごし、ステーキをはじめとした美味しい料理を存分に堪能しました。

今回のツアーを通じて、マーティン社の方々はもちろん、黒澤楽器様や各ディーラーの皆様と有意義な時間を共有でき、多くのことを学ぶ貴重な機会となりました。

音楽を愛する仲間と共に過ごした日々を振り返ると、次にまたご一緒できることを心から楽しみにしています。
さらなる交流や新たな発見を通じて、この経験を次にどのように活かせるかを考えると、ますます期待が膨らみます。

以上で、今回のMartinファクトリーレポートを終えます。

ツアーを通して、マーティン社の技術と情熱に触れることで、音楽と楽器製造に対する深い理解を得ることができました。
この貴重な体験を、多くの方と共有できることを嬉しく思います。

ツアーに関してご質問やご興味のある点がございましたら、どうぞお気軽に私、古川までお問い合わせください。
皆様からのお問い合わせを心よりお待ちしております。

最後までお読みいただきありがとうございました。
今後もさらに多くの情報や経験を皆様と共有できる機会を楽しみにしております。

明日の帰国に備えて、今日はしっかり休もうと思います。ちなみに、朝の集合は4時30分です。それではおやすみなさい。

この記事を書いた人

名古屋パルコ店 古川 惠亮(ふるかわ けいすけ)
電話番号:052-264-8316

2004年に中途社員として島村楽器に入社しました。
島村楽器オリジナルブランドHistoryの最高峰モデル『NT-C1』のデザインを担当し、アメリカ・ペンシルベニア州ナザレスにあるマーティン・ファクトリーにて、島村楽器×マーティンのコラボレーションモデルのスペック案や杢材選定を行いました。

また、フォルヒ、タカミネ、K.ヤイリとのコラボレーションモデルの企画や、国内の有名製作家による1本限定カスタムモデルの企画、国内での買い付けなども担当しています。

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