【徹底検証】「アンプの王道」Marshallを改めて知る! Part1 ~Marshallを知る~
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- 【徹底検証】「アンプの王道」Marshallを改めて知る! Part1 ~Marshallを知る~
- 【徹底比較】「アンプの王道」Marshallを改めて知る! Part2 ~Marshallヘッド・ラインナップ~
- 【徹底比較】「アンプの王道」Marshallを改めて知る! Part3 ~Marshallキャビネット・ラインナップ~
「アンプはMarshallだぜ~」と言いながら、王道が故に実は知らない事も意外とあったり(汗)
今回の企画でMarshall博士への道に一歩近づいてみましょう。
Marshallの歴史を改めて振り返る
今まで語り尽くされてきた感も若干あるMarshallの歴史。でももう一度確認しておきましょう。知らない方は新鮮な驚きをどうぞ。
文中で出てくるスタック・アンプの誕生秘話なども知っておくと良いですよ。
実はドラマー、創設者ジム・マーシャル
Marshall Amplification社の創設者、Jim Marshall(ジム・マーシャル)(James Charles "Jim" Marshall)は元々はドラマーでした。もっと元を辿れば、ボーカリストだったのです。1936年、13歳の頃に楽団のオーディションを受け、リード・ボーカリストとして活躍し始めたのが14歳の頃。1942年19歳になると、徴兵されたドラマーの代わりにジムはドラムを演奏するようになりました。
ジムのドラムの才能は開花し、ドラム教室を開くまでになったジムの門下生にはジミ・ヘンドリックスのドラムを叩いていたミッチ・ミッチェルやリトル・リチャード、ジェフ・ベック・グループで活躍したミッキー・ウォーラーもいたのです(!!)
1960年にはロンドンの西部にドラム・ショップをオープンしたジム。程なくしてドラマーたちがバンドメンバーを連れてくるようになり、その中にその後のMarshallの運命を大きく変える事になるピート・タウンゼントやリッチー・ブラックモアもいました。リッチーやピート達のリクエストから、ギターアンプを取り扱うようになったジム。そこがMarshallアンプが誕生する原点と言えるでしょう。
Marshallアンプの誕生
ジムのドラムショップでアンプを扱うようになった頃、メインの商品はFenderアンプでした。しかしFenderアンプはアメリカから輸入すると非常に高価でなかなかイギリスのギタリストにとって手が出るものではありません。また、ピートやリッチーが望んでいるサウンドを把握していたジムは、従業員やエンジニアと一緒にアンプ製作を始めます。
ジム達が最も気に入っていたのはFender Bassman。ジェンセン・スピーカーを4基搭載したアンプで、元々はベースアンプとして発売されたものの、ギタリストにとっても名機として語り継がれるアンプです。
彼らはBassmanを参考にアンプを製作します。最初のプロトタイプは6個出来上がり、これぞ「マーシャル・サウンド!」と当時ジムが叫んだようにMarshallの音を出していましたが、これに満足しないジムたち。オリジナルのアンプを製作するのです。
試行錯誤の末、1962年に生まれたのが、Marshall社最初のプロダクトである「JTM45」です。
Bassmanとの差別化を図ったジムは、アンプとスピーカーを分けたスタイルを選択。プリ管にはECC83を採用。スピーカーも12インチセレッションを4基搭載してクローズド・バック構造にしました。完成当初、彼らは「MarkⅡ」と呼んでいましたが(ジムたちの中では2つめのアンプだったので)、JTM45と命名されました。“Marshall Amplification”として、アンプ製造販売を正式にスタートしたのも同じ年。JTM45に並々ならぬ自信を持っていたんですね。
ちなみにJTM45は45Wの出力です。
スタック登場!
1965年、ピートはジムに「100W のヘッドと8×12”キャビネットを作ってほしい」とリクエストします。大音量を求めたピートならではのリクエストだったのですが、ジムは持ち運びの利便性も考えて4×12"の二段を進めました。しかしピートは首を縦に振る事は無く、8×12"を製作。
しかしその後、ピートから「コレを半分に切ってくれ」というリクエストが届きます。ジムの最初の提案どおりのものです。
そうして生まれたのが現在ではもう当たり前になっているスタイル、100WMarshallスタックです。
この3段積みスタイルは、今では他のアンプメーカーも採用しているほど。ここからロックの歴史が変わったと言っても過言では無いでしょう。
ちなみにThe Whoの1970年発表「I Can't Explain」でもJTM45の姿が見えます。
JCM800誕生
JTM45以降、Marshall Amplificationは数々の名機を製造。1965年には伝説的なコンボアンプ、「1962」も発売します。
これは66年にエリック・クラプトンが“ジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズ”で使用した事から“Blues Breaker”という愛称がついています。
また、リッチー・ブラックモアはJTM45、100Wの出力をもっと上げた物をリクエスト。「1967」が発売されます。これも「200」や「Pig」といった愛称で一世を風靡します。
当時のリッチーの後ろにしっかりと写っていますね。
この頃のMarshall AmplificationはRose-Morris社との販売代理店契約を結んでいました。(1966年から15年間。1981年まで。)当時Marshallアンプはイギリス国外では非常に高価で、それはRose-Morris社が大幅な利益を得ていたためと言われています。そしてRose-Morris社との契約が切れた1981年、Marshallは満を持して新世代モデルを発売。
JCM800の登場です。<モデル名:2203(100w)、2204(50w)>
これは1981年直前に発売されていた「MV」と呼ばれるマスターボリュームを搭載したモデルを踏襲して作られており、リバーブもついていないシンプル設計。しかしながらロックの代名詞とも言えるサウンドを生み出す事が出来たため、またイギリスからの輸出価格も下がったために、瞬く間に世界中に広がって「ハードロックのスタンダード」となったのです。
JCM900~JCM2000
JCM800の「800」という数字は、当初ジム・マーシャルの所有している車のナンバーの数字と説明されていましたが、後々になって「80年代」を意味する事が判明しました。それはJCM900が1990年に、JCM2000が2000年直前に発売した事からも証明されました。(後付けでそういう意味になったのかも知れません...今となっては真相は藪の中。)
JCM900
80年代後半からはハードロック全盛とも言える時代。かれらはJCM800を改造したり、ブースターを使ってより歪みを得られるようにしたりと、それぞれが「より深い歪み」を求めて試行錯誤していました。JCM900は、そんな当時のギタリスト達への新たな提案でした。チャンネルAとBを使用して歪み/クリーンを切り替えられる「4100」は瞬く間に世界を席巻したのです。
※4100は100w、4500が50wモデル。
※2100(100w)、2500(50w)というモデルもラインナップしていましたが、こちらは「High Gain Master Volume」というシリーズで、4100等の「High Gain Dual Reverb」と違ってクリーンとの切り替えはできませんでした。いわば「歪ませるためのアンプ」です。
JCM2000
そして時代は2000年代。JCM2000が登場します。
JCM2000はさらにシリーズが2つに分かれていました。上の画像はDSL。“Dual Super Lead”の頭文字を取ったDSLです。呼んで字のごとく、2チャンネル装備したMarshallのハイゲインアンプなのです。クリーン~歪みと2段階の歪みをスイッチで切り替えられるため人気を博しました。
さらにTriple Super Leadの頭文字を取ったTSL。3チャンネルでクリーン~クランチ~劇歪みを切り替えられる万能アンプ。全国のスタジオで、今でもよく見かけます。それくらい定番です。
こういったメタルサウンドまでカバーできるほどのハイゲインを備えてます。
DSLはTSLに比べて荒々しい歪み方をしていたように記憶しています。2チャンネルと3チャンネルの違いだけではなく、音のこだわりで皆さん選んでいましたね。
JCM2000には50wバージョンもラインナップされていたので、全部で4機種あった事になります。
- TSL100(3チャンネル・100w)
- TSL50(3チャンネル・50w)
- DSL100(2チャンネル・100w)
- DSL50(2チャンネル・50w)
Marshall現行シリーズ・ラインナップ
90年代~2000年代にかけてハイゲインにおいても他者を圧倒したMarshall。2010年代に入って現在のラインナップになりました。現在のシリーズは以下の通り。バルブ・アンプだけでなくソリッドのヘッドもラインナップする幅の広さで、ファンの心を離しません。
現行のMarshallラインナップに関しては、Part2でサウンドも含めて紹介して行きますので、今回は端折らせて頂きます。
次のページではMarshallがなぜMarshallとして王者と呼ばれるのかについて追求してみます。