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特集記事

【Grosh Guitars】ドン・グロッシュ氏の職人魂 Vol.5 “波形から見る楽器としての完成度”

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“知る人ぞ知る”アメリカのギターブランド「Grosh Guitars(グロッシュ・ギターズ)」についてご紹介する本連載。
第5回目では第4回目に引き続き、当社が誇る楽器のスペシャリスト“ルシアー駒木”に登場いただき、Grosh Guitarsの凄さを波形計測という形で実験・検証していきたいと思います。
特集記事「ドン・グロッシュ氏の職人魂」 の記事一覧はこちら
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皆様こんにちは!ルシアー駒木です。

前回の特集記事はご覧いただけましたでしょうか?
【Grosh Guitars】ドン・グロッシュ氏の職人魂 Vol.4 “楽器の作り手から見た凄さとは?”
Don氏が楽器を製作する上でこだわりを持っている事が何のために行なわれているのか、工房の環境や機材から見える凄さなどを技術者目線でご紹介させていただきました。

今回の特集では前回ご紹介したDon氏のこだわりが実際の楽器の音にどのような効果をもたらしているのか、私ならではの視点でより深彫りしてみていきたいと思います。

楽器の音色の話をするとどうしても「音の輪郭がうんぬん...」「ミッドがどうしたこうした...」「ヌケの良い高音域が...」のような抽象的な表現になってしまう事が多くなってしまいますよね。

そこで私は楽器の鳴りから生じる「波形」をもとに、一般的なストラトキャスタータイプのギターとGrosh Guitarsを比較する事で客観的に音の違いが可視化できるのではないかと考えました。
なかなか興味深い検証結果が得られましたので、早速紹介していきたいと思います。

計測方法について

まず前提として、今回の検証は楽器の「良し悪し」を提示するものではなく、あくまで「比較」となります。
より精度の高い結果を導き出すため、比較機として用意する楽器のランクもなるべくGrosh Guitarsと揃えました。

今回使用したのは、世にあふれるストラトキャスタータイプの中でも王道と言って差し支えない、本家・某社の物。
私がアメリカのギターショウで買い付けてきた物で、国内の販売価格は比較対象のGrosh Guitarsよりも10万円ほど上です。

また検証したい項目としては前回ご紹介した、木材の重量管理から徹底したトーンコントロールの結果として「弦鳴り」「ボディ・ネック鳴り」のバランスの良さ、そして「モデルごとの倍音構成をどのように狙っているか」がポイントです。

そのポイントが比較しやすいように「楽器の生音の5弦開放のA音を、マイクで収録し、PCの波形解析ソフトへ取り込む」という計測方法で行なっていきます。

もちろん弾き方などで変わってくる要素もありますので何十回と集音し、平均を取って計測しました。

以下では計測した波形の画像が出てきますが、赤線がA音を鳴らした際のアタック音、緑線がアタック音から3秒経過した音の波形です。

検証開始

①某社の楽器


注目していただきたいのが、青枠で囲んだ部分です。
こちらは330Hz付近と440Hz付近になります。

鳴らしている基音は110HzのA音なので、3倍音と4倍音になる訳ですが4倍音よりも3倍音の方が大きく出ている事が分かります。
つまり、440HzのA音よりも330HzのE音の方が大きく響いているという事です。

この個体は基音(110HzA音)と2倍音(220HzA音)がしっかり鳴っているのでピッチは不安定には聞こえませんが、響きとして基音であるA音とは異なるE音が鳴っているという点がポイントとなります。
某社の楽器の中には220HzのA音が弱い個体も見られ、その場合にE音が大きく響いてしまうとピッチが不安定に聴こえたり、チューナーの針が左右に揺れたりする事があります。

「3倍音が鳴る」というのはストラトキャスタータイプの特徴で、それがいわゆるストラトキャスタータイプ「らしい」音に繋がります。
私が買い付けを行なう際はそれを踏まえつつ、2倍音もしっかり鳴る個体かどうかを吟味して選定を行なっています。

②NOS Retro


それではお待ちかね、Grosh Guitarsを見ていきましょう。
最初はこの某社の楽器にリスペクトを込めて製作しているNOS Retroから。

まずは青枠で囲んだ箇所の比較から。
3倍音(330HzのE音)よりも、4倍音(440HzのA音)の方が出ている事が見て取れるかと思います。
この時点で某社よりもピッチが正確に聴こえる事は間違いありません。

また波形全体を見ていただくと、青枠で囲った箇所より上の全周波数帯において某社より鳴っている事が分かります。
そこにアコースティックギターにその思考のルーツを持つ、Don氏の意図がくみ取れます。
全ての周波数帯で某社より鳴っている訳ですから、それは広がりのある奥行きのある響きになってしかるべきです。

しかも緑線の3秒経過した音の波形でもその差は圧倒的。明らかに長く多くの音が響いている事になります。
つまりNOS Retroは「某社の代表的な『らしい』音から大きく逸脱する事なく、Grosh流にブラッシュアップされた音」であると言えますね。

③Retro Classic


2本目はビンテージスタイルを踏襲しながら、オリジナルのボディシェイプや現代的な仕様を盛り込んだRetro Classic。

青枠部分は先ほどのNOS Retro同様、4倍音がしっかり大きく出力され、ピッチ感はバッチリです。

このモデルの特徴として見えるポイントは黄色枠の部分、5倍音と6倍音が出ていながら、その上のオレンジ枠付近がNOS Retroより抑えられている事。
オレンジ枠付近の上の帯域の出力を抑える事で、より明瞭さが生み出され、スッキリとモダンなサウンドに。
それでいて響きが単調にならないように、5倍音(550HzC♯音)と6倍音(660HzE音)を出す事で深みと広がりはキープ。

もはや流石という他ありません。
某社の音をブラッシュアップしたNOS Retroよりも少しスッキリとモダンでありながら、偶数倍音以外の響きも聴かせるという素晴らしい設計です。

④Bent Top


最後に少し毛色の異なる、Bent Topを見ていきます。

3倍音よりも4倍音が強調されているのはこれまでの2本と同様。

ですが今回は緑線、3秒経過後の波形もこれまで以上に4倍音がしっかりキープされています。
音を伸ばしていくと、まるでサスティナーの様に音が裏返っていきながら伸びていく感じですね。

Retro Classicとの違いが大きく感じられるのは紫枠で囲んだ部分。
倍音の構成がまずアタック音としてはかなり複雑な波形になっています。それでいながら3秒経過後は600Hz~1.2KHzあたりまでの波形が整いながら残り、その上はカットされています。

つまり、音を鳴らした瞬間はしっかり基音・2倍音・4倍音で音程感を出しつつも、高い周波数で広がりがファッと出てくる。
そしてサスティーンを伸ばしていくと、4倍音がしっかり残りながら600Hz~1.2KHzあたりの倍音が整いつつ、1.2KHzから上は無くなる事で、スッキリとしたサウンドに変化しながら伸びていくのです。これは凄い。

 

 

皆さんも、チューニングの最中にAをチューニングしているはずなのに一瞬だけEやCが表示されたり、針がふらついたりした経験はあるかと思います。
Grosh Guitarsをチューニングするとその不安定さが無く驚かれる方が多いのですが、それは基音や2倍音に加えて4倍音もしっかり鳴っている事に起因します。

そして音質のコントロールに重要な3倍音も充分に鳴るように設計しながらも、4倍音より鳴り過ぎないようバランスが取られている。
Don氏はこれらを実現するために様々なこだわりを持って製作をしている訳ですが、やろうと思ってできるというのは流石としか言いようがありませんね。

ヘッド設計から見えるこだわり

これまで解説してきた、Don氏がこだわりを持って製作している事の一端は、皆様がGrosh Guitarsを見ただけで分かる部分にも表れています。
こちらをご覧ください。

この「ナットからヘッドトップにかけての美しい曲線」は、手作業でしか成し得ない、美しい仕上がりです。
皆様この美しさに目を奪われますが、Don氏は「美しさ」の為にこの仕上げにしている訳ではありません。

某社のギターと見比べてみましょう。ナットから先の指板の長さにご注目ください。

某社

Grosh Guitars

おわかりでしょうか?
そうです。本来、ヘッドとネックの境目というのは「ナットも取り付けられ、ヘッドを支える為に最も安定させたい箇所」であるにも関わらず「木が薄くなってしまう為にヘッドが暴れる原因となる箇所」となってしまう事が多いのですが、Grosh Guitarsはしっかり木材を残す事ができておりヘッドの響きも安定させる事を実現しています。

さらに、この効果をより高める為もう一つこだわりの箇所がこちら。

皆様、何か気が付きましたでしょうか?
そう、ヘッドの厚みが違うのです。もちろん厚い方がGrosh Guitars。

ヘッドを不要に振動させたくない、弦を止め支える部分として安定させたい意図が伺えます。
ヘッドが揺れてしまうと当然、弦振動の視点であるナットも土台もろとも揺れてしまう訳です。
分かりやすく言うと、長縄跳びの長縄を持っている回し手の足元が揺れている事になりますから縄は不安定になってしまいますよね。

・ネックとヘッドの継ぎ目に木を残す
・ヘッドに厚みを持たせる

この2つのポイントで、一体何が起きるのか、
今度は加速度センサーを使って、実際にヘッドがどのように揺れているのかを計測してみましょう。

まずは某社。

そしてNOS Retro。

どこが、と細かく書く必要がないくらいに明らかに「Groshの方が揺れが少ない」という事が分かりますし、特に画面のちょうど半分から右の方、細かな振動に関してはグッと抑えられているのが見えます。

そして恐ろしい事に、Groshの方は3秒後の波形に変化がありません。
いかにGroshのヘッドが安定しているのかが分かります。

ヘッドが安定して弦を支え、4倍音がしっかり出ている点、サスティーンを伸ばすほどに波形が安定していく、というGroshのサウンドがよく分かる動画があります。
浅草橋ギター&リペア店のMarshallアンプを使用し、Kelly SIMONZ(ケリーサイモン)氏が軽く鳴らして下さった時の動画です。

波形で見える特徴が、しっかりとサウンドに反映されていると思います。

Grosh Guitars在庫一覧


検証で使用した3本以外にも様々なGrosh Guitarsを取り扱っております。
ぜひ検証結果を参考に自身のプレイスタイルに合ったモデルを選んでいただければと思います。
Grosh Guitarsギタセレ掲載商品一覧はこちら

また、Grosh Guitarsはカスタムオーダーも可能です。
Grosh Guitarsオーダーギャラリーはこちら
「NOS Retroでこんな仕様ができないかな?」などご要望ございましたら、お気軽にお近くの島村楽器までお問い合わせくださいませ。

さいごに

今回は第4回目に引き続き、当社が誇る楽器のスペシャリスト“ルシアー駒木”に登場いただき、Grosh Guitarsの凄さを波形計測という形で実験・検証を行ないました。

Don氏のこだわりが製作された楽器、かつモデルごとにトーンが正確にコントロールされている事が数値的に明らかになり、改めて楽器としての完成度の高さを伺えた結果となりました。
ぜひ皆様も島村楽器の店頭でGrosh Guitarsの凄さ、体感していただけたらと思います。

それではまた次回の特集でお会いしましょう。
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