皆様こんにちは。島村楽器別室 野原のギター部屋管理人の野原です。
島村楽器の社内在庫データを見ていると面白い商品に出会うことが多々あります。そんな個人的に面白いと思った商品をピックアップし、皆様にご紹介している「島村楽器で見つけた気になる1本」ですが、今回は見つけた瞬間に思わず二度見してしまったこちらのギター。
それでは早速ケースを開けてみましょう。
Gibson Custom Shop Standard Historic 1959 Les Paul Reissue VOS Washed Cherry

ヴィンテージリイシューに詳しい方であればモデル名を見てこう思われたはず。「スタンダードヒストリックということはUSEDかな?」と。むしろそう考えるのが普通なのですが、実はこの個体、新品になります。シリアルナンバーからスタンダードヒストリックが発売された2016年製であることが分かりますが、今から約6年前に製造されたリイシューが新品でストックされていたことに驚きました。

そもそもスタンダードヒストリックが良く分からない方のためにご説明差し上げたいと思います。
1993年から続くヒストリックコレクションが2014年に販売終了。翌2015年、エドウィン・ウィルソン氏をプロジェクトリーダーとし、これまで生産効率やコストの事情で成しえなかった部分にまで着手した拘りのヴィンテージリイシュー「True Historicシリーズ」が発売されました。生産本数は従来のヒストリックコレクションの約30%未満、その拘り抜いた内容から販売価格も高いものとなりました。
それに対し、2014年のヒストリックコレクションの仕様を踏襲しつつショートテノン(ナロージョイント)を採用し販売価格を抑えた「Custom Coreシリーズ」も発売されましたが、ロングテノン(ディープジョイント)のヒストリックコレクションを望む声は多く、結果、2014年のヒストリックコレクションと同スペックのヴィンテージリイシュー「Standard Historicシリーズ」が発売となりました。
それが今回皆様にご紹介しているギターとなります。


2019年にリリースされた60th Anniversary 1959 Les Paul ReissueでGibsonロゴはよりオリジナルに近い丸みを帯びたものになりました。本機は2016年製のリイシューですので、それ以前までのロゴになります。ヘッド中央に入れられた”Les Paul MODEL”のシルクスクリーンも現在のものとは異なり、LesとPaulの間隔が僅かに広いです。字形も変わっているのですが、相当意識して見比べないと分からないレベルだと思います。

同時期に発売されいたトゥルーヒストリックは1950年代のレスポール同様に数字から始まるシリアルナンバーでしたが、スタンダードヒストリックはRから始まるシリアルを採用しています。Rの次の数字が9であれば1959、8であれば1958モデルとなります。

指板はローズウッド。ポジションマーク、バインディングとのコントラストが綺麗です。現在採用されているディッシュインレイよりやや黄色味が薄い素材です。


ネックとボディバックにはアニリンダイを使用しています。アニリンは原油を原料に作られる合成染料で、アニリンを原料とする染料(ダイ)を総称してアニリン染料といいます。ギブソンではこれを調合して色を作り、フィラー(目止め)に添加して木材に塗布します。スプレーのみの着色では得られない奥行きのあるチェリーレッドが美しいです。

続いてボディトップ。レスポールはどこを切り取って眺めても素敵なギターですが、特にこの個体の好きな部分を写真に収めてみました。皆様は私がどの部分を気に入っているか、お分かりになりますでしょうか。

私がこの個体で特に気に入っているのが板目の表情です。レスポールの優美なアーチ形状と不均等で揺れのある年輪のコントラストが秀逸で、浮かび上がる杢も含め雰囲気があります。少し落ち着いたように見えるWashed Cherryカラーが良く似合っています。

前述の通りスタンダード・ヒストリックは2014年のヒストリックコレクションと同スペックのヴィンテージリイシューですので、パーツもヒストリックコレクションのものが使用されています。トグルSWプレートのフォントも現在のものとは異なっています。
ピックアップには定評のあるカスタムバッカーが搭載されています。


ヒストリックコレクションのパーツは発売当初から幾度となくアップデートされていますので、終了年である2014年のパーツは再現度の高いものになりますが、後に発売されたトゥルーヒストリック・パーツとは色味や形状が異なるのがお分かりになりますでしょうか。


ケースは1950年代に販売されていたブラウンケースのレプリカが付属します。40周年の1999年に復刻されましたこのブラウンケースも度々マイナーチェンジされており、このスタンダードヒストリックには少し厚みのあるものが付属します。ラッチも全て引掛パチン錠になっていますので、より安心して持ち運びができます。


今回は2016 Gibson Standard Historic 1959 Les Paul Reissueをご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。Vol.19 “Gibson Historic Collectionの選び方”でお話させて頂いた通り、より再現度の高いヒストリックを探すのであれば最新のものが良いと思いますが、1950年代のギブソンを彷彿とするサウンドのレスポールを探すのであれば、今回の2016年製も選択肢に含まれてきます。
Vol.5 “Gibson Historic Collection Les Paul Reissueの仕様遍歴と60th Anniversary 前編”にヒストリックコレクションの歴史をまとめさせて頂きましたが、個人的に2013~14年のアップデートで近年のリイシューのサウンドがほぼ完成したと考えています。その後もキャパシタが変更されたり、カスタムバッカーがアンポッテッド仕様に統一されたりしましたが、チューブレストラスロッドやロングスタッドボルトの採用、ハイドグルー接着など、楽器の鳴り方に大きく影響を及ぼす本体の仕様(構造)が固まったのが2013~14年となります。これからギブソンのヴィンテージリイシューを探される方は、少しだけ意識して探されてみてはいかがでしょうか。
ちなみに今回ご紹介しました2016 Gibson Standard Historic 1959 Les Paul Reissue、新品ですが製造されてからお時間が経っていますので、お買い求め易いお値段になっております。商品の詳細と合わせてギタセレ商品ページをチェックしてみてください。
最後になりますが、3月19日から島村楽器 新宿PePe店で勤務することになりました。記事の内容や商品についてご質問、ギター選びについてのご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。それではこの辺で。