別室 野原のギター部屋 Vol.6 “Gibson Historic Collection Les Paul Reissueの仕様遍歴と60th Anniversary 後編”
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Gibson Custom Shop 60th Anniversary 1959 Les Paul Standard
Left: 2019 Gibson 1958 Les Paul Reissue, Right: 2019 Gibson 60th Anniversary 1959 Les Paul Reissue
ヘッドのGibsonロゴ形状
ヘッドのGibsonロゴの形状を見直し、より丸みのあるシェイプを採用しました。Gの上部やnの下部などを見ると分かり易いと思います。直線的に加工された近年のロゴも奇麗ですが、1950年代のデザインのギターには当時同様の丸みのあるGibsonロゴが良く合います。
ちなみに、こちらは比較的最近に仕入れた1958 Les Paul ReissueのGibsonロゴ。ケースを開けた瞬間に気付きましたが、上記のロゴともシェイプが異なって見えます。1950年代のGibsonロゴ(スクリプトロゴを除く)にはシェイプの異なる2種類が存在しますが、わざわざ2種類用意したのでしょうか...気になる方はこっそりお教え致しますので、気軽にお尋ねください。
ヘッドのLes Paul MODELシルクスクリーン
Les Paul MODELと表記されたシルクスクリーンのフォントサイズや色味、位置が変わりました。並べて比べてみないと分かりづらいのですが、LesとPaulの間隔が狭くなり、1文字目のLの頭や、eの終わりからsの頭にかけてのライン、最後のlの形状もオリジナルに近くなりました。
指板インレイ(ポジションマーク)の素材
指板に入れられたセルロイド製のディッシュインレイが、昨年に比べやや黄色味の強いものに変更されました。これは既存のインレイに着色したものでは無く、素材自体を色味の濃いものに変更しています。
アンポッテッドのCustom Buckerを搭載
登場以来高い人気を誇るアルニコⅢマグネットのCustom Buckerですが、オリジナルP.A.F.同様のアンポッテッド仕様に統一されました。ポッティング(蝋付け)はピックアップ内部やピックアップカバーとの空間を蝋で満たし、ハウリングを起こしにくくする処置ですが、多少なりともサウンドに影響を与えます。より表現力の高いワイドレンジなサウンドを求めるユーザーには嬉しい仕様変更ではないでしょうか。
ボリュームポットをヴィンテージテーパーポットに変更
CTS社のAカーブから、当時のポットを計測し作られたヴィンテージテーパーポットに変更。他の電装系パーツの影響も含めての印象になりますが、ボリュームを8前後に落とした際にも音が明瞭になったように聞こえます。1950~1960年代のGibsonは繊細なボリュームコントロールによる音作りや表現がしやすいイメージですが、今回のヴィンテージテーパーポットにも同じような感覚を覚えました。
キャパシタ(コンデンサ)の変更
従来のヒストリックコレクションで採用されていたBummblebeeレプリカコンデンサから、Luxe社製Paper In Oil Bummblebeeキャパシタへ変更されました。環境上の問題から使用できないものを除き、可能な限り当時の製法で再現されたLuxe社製のBummblebeeの採用は、現時点でベストな選択だったのではないでしょうか。
Review
今回はGibson Historic Collectionの遍歴と60th Anniversary 1959 Les Paul Standardを見てきましたが、いかがでしたでしょうか。店頭に最新のヒストリックをディスプレイしながら思うのですが、本当に雰囲気が良くなりました。前回の記事でも書きましたが、以前はよりオリジナルに近付けるために1950年代のパーツや質の高いレプリカパーツに交換する必要性を感じていましたが、今はほとんど感じません。塗装の色味も然りです。
主観にはなりますが、音についても触れたいと思います。1958-1960年製のレスポールのみならず、1950-1960年代のギブソンのエレキギターには私の中で共通したイメージがあります。音の立ち上がりが良く、ピッキングに対してセンシティブで、音の解像度が高く、レンジが広いため、弾き手の僅かなタッチの違いがそのままアンプから出るようなイメージです。
誕生間もないヒストリックコレクションのレスポールも楽器として良く鳴りますが、このイメージに近いのは最近のモデルのように思います。特に60th Anniversary 1959 Les Paulやその仕様に準ずる2019年以降のヒストリックはアンポッテッドのCustom BuckerとLuxe社製のキャパシタを採用した影響からか、解像度が高く音抜けが良いので、1950年代のレスポールのサウンドが好きな方は勿論のこと、多くのギターファンに手に取って頂きたいモデルです。
と、ここで終わると楽器店のセールス記事みたいなので、最後にこのブログらしい内容を。
好みもありますが、個人的にヒストリックコレクションのレスポールを買うのであれば、True Historic(2015年)以降のモデルから気に入った個体を買います。特にどこかの周波数帯域が大きく鳴るものではなく、低音から高音、ローフレットからハイフレット、1弦から6弦までバランス良く鳴る個体です。それと音の解像度や粒立ちも確認します。
そこから可能であれば1957-64年頃のギブソンのピックアップ(P.A.F.、Patent Number Pickup / #P.A.F.)と古いキャパシタに交換したいです。正直ストックの状態で不満は無いのですが、低いレベルでオーバードライブを起こしやすいオリジナルP.A.F.にしか無いキャラクターが好きなので。もちろんP.A.F.にしても1958-60年製のレスポールと同じ音になるわけではありませんが、音の印象が変わるのは確かです。
今では古いGibsonのピックアップも簡単には手に入らないので、ルシアー駒木が米国のギターショーに買い付けに行く際にお願いするのもありかなと思っています。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。記事の内容や商品についてご質問、ギター選びについてのご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。今回の記事に登場しましたGibson 60th Anniversary 1959 Les Paul ReissueとGibson 1958 Les Paul Reissueの詳細につきましては、ギタセレ商品ページをご覧頂ければと思います。それではこの辺で。
ギター部屋の管理人
学生の頃よりバンド活動、レコーディングなど様々な場所での演奏とヴィンテージギターショップ巡りに明け暮れる。後にギタークラフトを学び島村楽器に入社。入社後は米国Gibson社、Fender社への買い付けなどを担当。現在は静岡パルコ店に勤務。甘いもの好き。