皆様こんにちは。島村楽器静岡パルコ店、店⻑兼バイヤーの平林です。
Vol.6では先日入荷した珍しいPRS Guitars Experience Limited Editionをご紹介いたします。
PF-09 Experience 2009 Limited Edition/ SC245 Satin Nitro Finish
まずは、素晴らしいギターの全貌をご覧くださいませ。

続いて、ボディバック全体もご覧ください。

Paul’s Finish 2009がモデル名の由来である「PF-09」は、2009年のExperience PRSで発表されたリミテッド・エディションです。

このイベント用に約80本しか製造されておらず、ベースモデルとなるモデルはMcCarty、SC245、Custom 22の3種類です。
Experience PRSとは

こちらのギターの詳細をお話しする前に、まずは「Experience PRS」についてご説明します。
Experience PRSは、Paul Reed Smith (PRS) Guitarsが主催するファン向けの特別イベントです。
現在はオンラインでの開催ですが、以前はメリーランド州スティーブンズビルのPRS本社に世界中のギタリストやディーラー、顧客が集結していました。

多くの有名ミュージシャンがこのイベントでライブを行い、PRSギターを使ったダイナミックなパフォーマンスを披露します。
さらにミュージシャンやPRSのエンジニアが主催するワークショップやデモがあり、PRSの最新技術や演奏テクニックを学べる貴重な機会となっていました。

PRSギターがどのように作られているかを見学できるファクトリーツアーもイベントのハイライトの一つです。
木材の選定からフィニッシュまで、高品質な製造プロセスを間近で見られます。

極め付けはExperience PRS限定のギターが発表されることです。
特別な仕様やフィニッシュが施された、会場でしか手に入らない希少価値の高い品々が並びます。
今回ご紹介するPF-09は、2009年のExperience PRSで発表された特別仕様の限定モデルです。
PF-09の魅力に迫る

Paul’s Finishと名付けられたニトロセルロース・サテン・ラッカー仕上げが特徴で、半光沢の美しい外観が魅力です。

2009年のPre-ownedですが、前オーナー様が入手後ほとんどプレイせず大切に保管されていたため、クリーン・コンディションをキープしています。
本個体の雰囲気とマッチしたハードウェアのくすみもあえて残すため、クリーニングも最小限に留めています。

塗装は非常にシルキーな質感であることが画像からお分かりいただけると思います。

2007年に発表されたSC245は、シングルカットシェイプに24.5“スケールを採用しています。
トラッドなギターにルーツを持つポールリードスミス氏らしいモダンな要素とトラッド感が見事に融合したモデルでしたが、数年間の生産と短命です。
ノンアジャスタブル・ストップテイルブリッジに、今で言う594エレクトロニクス(コイルタップ非搭載)仕様という、PRSの過去と現在を繋ぐスペックです。

迫力のあるワイドなフレイムメイプルとフレックのバランスも申し分ありません。

ナチュラル・バインディングからは美しい杢をご覧いただけます。
ボディトップの杢目を活かしたナチュラル・バインディングは、セル・バインディングと比較して剥がれるリスクや、製造時の力仕事が軽減されますが、塗料が滲まないように仕上げるのにスキルが必要です。

ワンピースのクォーターソーン・マホガニー材をボディバックに使用しています。

ネック材にも同様にクォーターソーン・マホガニーが使用され、セットネックでジョイントされます。

ヘッドの先端部から木目を確認すると、強度に優れクリアな音質が特徴的なトゥルー・クォーターソーン・マホガニー(本柾目)であることが分かります。
ボディトップ材はもちろん、ボディバック材やネック材まで、ファクトリーを訪れる目の肥えたPRSファンの期待に応えられる厳選されたマテリアルが使用されています。

ペグはいわゆるクルーソンタイプで、ヘッド部の自然な共振が得られる軽量なボタンが装着されています。
ノンロックタイプでオープンバックになる以前の仕様です。

フィンガーボードには上質なダークカラーのローズウッドが使用され、PRSの象徴であるバードインレイが施されています。
Private Stockのアウトライン・インレイを彷彿とさせる「j birds」ですが、当時は賛否両論があり、その後センターマテリアルありのインレイがデフォルトになります。
どちらかと言えば「否」よりの意見が多かったと記憶していますが、技術的な観点で言えば、アウトライン・インレイの方が高度な製作スキルを要するため、PRS社としてはバードインレイのアップデートという認識だったと予想しています。
アコースティックギターの世界トップ・ブランドでも、ヘキサゴンインレイのアウトライン・ボーダーは有料オプションです。

レギュラーモデルはSC245ピックアップがマウントされますが、こちらはヴィンテージトーンを再現する57/08ピックアップが搭載されています。
1957年にハムバッカーのパテントが取得されたことにちなみネーミングされており、1950年代に製造されたPAFピックアップのトーンを再現するために、貴重なオリジナルのワインドマシーンを使用して巻かれています。
直流抵抗値はBass PUで8.5k、Treble PU 9.4k。
Alnico2マグネットを使用したハムバッカーで、センターポジションでギターの手元のボリュームを少し絞ったサウンドが秀逸です。

ランプシェイドのアンバーカラー・ノブがトラッドな雰囲気を一層高めます。
コントロール付近の板目の雰囲気が個人的には好みです。
ランプシェイド・ノブは2005年に採用され始めましたが、指のかかりが良く操作性が高いPRSオリジナルパーツです。
現行のアンバー・ノブと比較して、透明度が高く、濃いブラウンカラーです。

テイルピースは軽量なアルミニウム製です。
1950年代初期のGolden Eraと呼ばれるエレキギターにも使用されたアルミ製のテイルピースですが、軽量でありながら強度が高く、弦振動をダイレクトにボディに伝えることができるため、PRSではアルミ製のストップテイルピースが使用されます。
タッチレスポンスの速さとブライトなトーンが特徴で、サスティンやダイナミクスのバランスが取れたサウンドが魅力です。
オクターブチューニングの精度よりも、弦の振動がダイレクトに伝わり、プレイする楽しさを引き出してくれる点も大きな魅力です。
また、ブリッジミュートがしやすいことも特徴で、シンプルなパーツながら奥深い魅力が詰まっています。

PRSギターのスタッドアンカーは、ブラス(真鍮)のブロックを削り出して製作されます。
スタッドアンカーは、テイルピースから伝わる弦振動をボディに伝える重要なパーツです。
ブラスはPRSサウンドに欠かせない素材ですが、ブラスは音の伝達性が高く、豊かなサスティンとバランスの取れたトーンが得られます。

厚みのあるシングルカット・シックネスのボディと、肉厚なワイドファット・シェイプのネックをセットジョイント方式で採用することで、低音域から高音域まで広いレンジをカバーし、太さと解像度の高いトーンを生み出します。
PF-09はPRSを象徴するCUSTOM 24とは異なる個性を持っており、PRSらしい高いプレイアビリティと優美な外観に、トラディショナルな要素を絶妙に融合させたデザインは、ポールリードスミス氏のルーツを色濃く反映されたものです。

ケースはオリジナルのブラックトーレックス・ハードケースが付属します。

ギターにフィットするオリジナルケースは、保管や運搬時に衝撃や振動から保護してくれるため、ネックやヘッドストック、ブリッジ周辺をサポートすることで、ダメージを防ぎます。

CASE CANDYで最も重要なイーグルタグも完備しています。
こちらがオリジナルスペックの証明にも繋がりますので、PRSオーナーの皆様は大切に保管いただければ幸いです。
以上が、こちらのギターのご紹介です。
長文にお付き合いいただき、誠にありがとうございます。
本記事が皆様のギターライフが豊かになる一助になれば幸いです。
販売に関して
2024年11月16日(土)・17日(日)に渋谷ストリートホールにて開催される、PRS GUITARS & AMERICAN VINTAGE GUITAR SHOW 2024 島村楽器ブースにて販売いたします。
ご相談がございましたら、島村楽器静岡パルコ店 平林までお問い合わせくださいませ。
長文にお付き合いいただき、誠にありがとうございます。
本記事が皆様のギターライフが豊かになる一助になれば幸いです。

平林 大一プロフィール
埼玉県出身。現在は静岡県に移り住んで15年が経過。
趣味は釣りとワインで、自然の中でリラックスする時間や美味しいワインを楽しむのが大好き。
2024年現在、PRS USAファクトリーでのオーダーやGIBSONナッシュビルでのバイヤー業務、国内外のギター・ベース、アンプやペダルのオーダーに携わっている。
所有楽器はPRS Private StockやAMPをはじめ、Fender 1963 Stratocaster、Gibson CS LP、Ken Smith BSR5、Vintage Ibanez & Maxonなど多岐に渡る。