PRS SE シリーズの魅力に迫る / SE FACTORY VISIT レポート|バイヤー平林が綴る PRS という美学Vol.19【 Paul Reed Smith 】

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PRS SE シリーズの魅力に迫る / SE FACTORY VISIT レポート|バイヤー平林が綴る PRS という美学Vol.19【 Paul Reed Smith 】

記事中に掲載されている価格・税表記および仕様等は予告なく変更することがあります。

いつも島村楽器をご利用いただき、誠にありがとうございます。バイヤーの平林です。

第19回目となる今回は PRS SE シリーズの魅力に迫ります。
あわせて、ディーラーとしては世界初となる PRS SE Factory Visit に参加し、SE ファクトリーの視察および島村楽器オリジナル仕様モデルのオーダーを行ってまいりましたので、その様子もレポートいたします。

まずは SE シリーズがなぜ「同価格帯で最高」と評されるのか、その背景にあるものづくりの哲学と、現地ファクトリーで見てきたディテールからご紹介してまいります。

SE シリーズの歴史

SE シリーズの誕生

SE シリーズは Santana が世界的大ヒットアルバム “Supernatural” を発売し、ワールドツアーを行った際、カルロス・サンタナのファンからの要望をきっかけに、1999年より企画がスタート。その後、2年の歳月を経て、2001年より販売が開始されました。

当初のモデルにはヘッドストックに PRS ロゴは入っておらず「SANTANA」と「SE」のみが表記されていました。この点からも、当時の PRS にとって SE シリーズが新たな試みであったことがうかがえます。

製造は WMI Korea Factory (韓国) で行われており、メインサプライヤーが PRS の思想やサウンドを深く理解し、同社のファンでもあったことが、高いクオリティの製品づくりを支える要因となっていました。

PRS SE シリーズでは製造元をヘッド裏に明記しています。これは製造を担うパートナーに対しても、PRS ブランドの一員としての「情熱」と「責任感」を共有してもらうことを意図したものであり、OEM 生産品において製造拠点を明示した、世界的にも先駆的な取り組みといえます。

開発初期段階においては、特にピックアップ、ネックシェイプの設計、チューニングに重点が置かれました。演奏性とサウンドキャラクターの根幹に関わる要素を優先的にブラッシュアップすることで、価格帯を超えた完成度を追求しています。

ボディトップにはメイプル・ヴェニアを採用しています。これは、PRS らしい美しい杢目とルックスを実現するための仕様ですが、単なる外観重視の構造ではありません。

ヴェニアの下には十分な厚みを持ったプレーンメイプルが用いられており、トップ材としての機能をしっかりと果たしています。そのため視覚的な高級感だけでなく、音響的にもメイプルトップならではのアタック感や明瞭なレスポンスを確保した設計となっています。

メイプル・ヴェニアという言葉だけが独り歩きし「見た目だけで、音は二の次」といった誤解を招きがちですが、SE シリーズはしっかりサウンド面も犠牲にしない構造設計がなされています。

ファクトリーの製造移管

PT Cort ファクトリーへの製造移管は、コスト構造の変化に対応するかたちで進められました。

2000年代半ば以降、韓国での生産コストが年々厳しくなっていったことを背景に、PRS は生産体制の見直しを検討し、2017年に SE シリーズの製造拠点を Cort へ本格的に移管しました。※SE Acoustics & Hollowbody シリーズは Cor-Tek 大連工場(中国)の工場へ。

Cort は業界最大手の F 社、モダンギターで知られる I 社、HR/HM 分野で著名な J 社など、数多くの世界的ブランドの OEM 生産を担う実績豊富なファクトリーです。
PRS ではこうした実績だけでなく、生産技術・品質管理体制・労働環境などを含めた総合的な調査・評価を行ったうえで、パートナーとして Cort を選定しています。

移管当初は他ブランドと共存する既存の生産ラインで SE シリーズを製造していましたが、その後生産量の拡大と品質要件の高度化に伴い、PRS SE 専用ファクトリーを新設。さらに2022年には設備投資を進め、規模としては USA ファクトリーと同等クラスにまで拡張されています。

この専用ファクトリーには、USA ファクトリーで蓄積された製造ノウハウや品質基準が惜しみなく導入されており、工程設計・治具・検査基準に至るまで、PRS 本社と連動したフィードバックサイクルのもとで、日々アップデートが図られています。

その結果、SE シリーズはコストパフォーマンスに優れつつも、PRS らしい一貫したクオリティとフィーリングを維持・進化させるプラットフォームとして機能しています。

2001年に販売を開始した SE シリーズは “Student Edition” を意味していると広く認識されていますが、PRS 社内では諸説あるそうです。

実際、現在では SE という名称に Student Edition としての意味合いは持たせておらず、シリーズ名としての記号的な役割のみを担っています。

SE シリーズの重要パーソン PRS COO Jack Higginbotham 氏

先日、COO の JACK 氏とこの点について意見交換を行った際には「Special Edition という解釈もありですね」というコメントもありました。
今後、SE シリーズの位置づけや名称の意味合いがどのように変化していくのか、引き続き注目していきたいところです。

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SEシリーズの魅力

重要視している2つの要素

PRS が SE シリーズで最も重視しているのは、次の2点です。

  • 同価格帯で最高のギターであること
  • 価格以上のクオリティを提供すること

この2点を実現するためにクオリティ(品質)、イノベーション(技術・パーツ開発)、パートナーシップ(工場やサプライヤーとの関係)といった面を日々ブラッシュアップし続け「細部まで PRS らしさを貫いたギター」を生み出しています。

The Devil in the Details ― 細部へのこだわり

PRS の開発現場で頻繁に語られるのが “The Devil in the Details (悪魔は細部に宿る)” というフレーズです。

これは「小さなミスや細部の見落としが重大な問題を引き起こす」「細部こそが全体のクオリティを左右する」という意味を持ち、他ブランドで見逃されがちなディテールにまで踏み込んで作り込む、という PRS の姿勢を象徴しています。

クラス最高峰の品質

CE 24 Standard Satin をはじめ、SE シリーズは税別8万円台クラスから、一本一本丁寧な工程を経て製作されています。「初めての一本として選んでいただいたギターであっても、20年後も現役で使い続けられる楽器でありたい」というポリシーのもと、コストレンジに関わらず一切の妥協を排したものづくりが行われています。

提携ファクトリーとのリレーションシップ

SE Solid-body、SE Silver Sky、SE Zach Myers、SE Custom 22 Semi-Hollow は、専任パートナー PT CORT (Cor-Tek Surabaya) インドネシア工場にて生産されています。

SE Acoustic & Hollow-body は、Cor-Tek 大連工場(中国)の工場で行われており、各々、USA で培われたデザインコンセプトと、現地工場の精度の高い木工・組立技術が組み合わせることで、クラス最高峰の完成度を持ったSEシリーズが生み出されています。

モダンナイズされた PT Cort ファクトリー

SE シリーズを生産する PT Cort ファクトリーは、近代的な設備と環境を備えたモダンな工場です。

  • 高性能な集塵システムにより、常にクリーンな作業環境を維持
  • 専用にモディファイされた CNC マシンを導入し、一度に複数の高精度な加工を実現
  • 塗装ブースも徹底してクリーンに管理し、チリひとつない美しいフィニッシュを追求

特に CNC マシンは PRS SE 専用仕様にカスタマイズされており、USA ファクトリーの設計・データを高い再現性でアウトプットできるよう最適化されています。

補足ですが、一般的にインドネシアの企業名に付いている 「PT」 は Perseroan Terbatas (ペルセロアン・テルバタス)の略で、日本でいう 「株式会社」 にあたる区分です。つまり PT Cort = 「 Cort 株式会社」(インドネシア法人)というような意味合いで使われています。

仕上げ工程と品質管理

サンディング工程は、基本的な考え方・手順ともに USA ファクトリーと同じ哲学に基づいて行われています。
木材の乾燥工程から最終的なクオリティチェックに至るまで、PRS 本社が100%密接に関わり、仕様・許容値・検査基準を細かく共有しながら生産をコントロールしています。

ファクトリーの相互訪問

2024年2月には PT Cort の Jacob 氏および Isaac 氏が PRS 本社を訪問しています。両名ともギタリストであり、SE シリーズのクオリティとプレイアビリティ向上に対して強い情熱を持っています。

その際、USA ファクトリーでは以下の点にフォーカスしてコミュニケーションがなされました。

・ネックの握り心地およびプレイアビリティのさらなる向上
・インドネシアで入手可能な工具・材料を用いながら、USA 製 PRS に近いフィーリングを実現すること

単なる OEM パートナーという関係性ではなく「同じものづくり思想を共有するチーム」として、日々ディスカッションとフィードバックを重ねています。

とりわけ重視しているのが、ネックフィーリングです。プレイアビリティを決定づけるネックの握り心地や反応性にこだわり、プロユースにも耐える演奏性を追求しています。

さらに2024年4月には、PRS チームがインドネシアの PT Cort ファクトリーを訪問しています。
およそ片道30時間を要する長距離移動で、現地のモジョケルト( Mojokerto )にある工場を視察。スラバヤの市街地からは車で約90分の場所に位置しています。

現地では、生産ラインおよび新設設備の確認や品質管理プロセスのレビューが行われました。

ネックプロファイルやセットアップに関する技術的ディスカッションなどを行い、USA ファクトリーのノウハウをさらに細部まで共有すると同時に、現場からのフィードバックを次期モデル開発にも活かす双方向の取り組みが行われています。

これらの活動により、SE シリーズは「価格帯を超えたクオリティ」を維持しながらも、継続的にアップデートされるプラットフォームとして進化し続けています。

PRS JAPAN TECH TEAM による全品検品&セットアップ

日本向け出荷に関しても、Cort ファクトリーから USA と同一基準で検品された個体のみが送り出されています。

さらに日本に到着した PRS 製品は、モデルを問わず PRS の Tech Team にて入荷時と出荷前の2回検品・調整を行い、万全の状態で PRS オフィシャル ディーラーへ出荷され、展示・販売されます。

SE シリーズはインポートブランドとしては珍しく、国内での「全数検品」が基本方針となっており、これにより安定した高クオリティの提供が実現されています。PRS の高い製品クオリティとプレイヤビリティを維持するため、とても重要なセクションです。

新品購入時のタグですが、INSPECTED BY という項目に、国内検品時の PRS テックチーム担当者のサインが入ります。

また、細かいことですが、SE シリーズは、国内基準は下記の通り、やや低い弦高にセッティングした上で出荷されています。

・1弦12F 1.6mm(Silversky 1.7mm)
・6弦12F 1.8mm(Silversky 1.8mm)

PRS では、ローポジションでどれだけ良い音が鳴るかを非常に重視しており、開発・検品の段階でも必ずチェックを行っています。ぜひ店頭でも、開放弦からローポジションにかけての鳴り・サステイン・レスポンスを意識して試奏してみてください。

※SE チームは毎週3本の SE モデルをピックアップし、実機を細かく検証しながら、気になる箇所の改善や仕様のブラッシュアップを継続的に行っています。

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価格以上のクオリティ

ルックス、サウンド、弾き心地のすべてにおいて「価格の2倍、3倍の価値を感じていただけること」を目標に設計・製造が行われています。

木材と乾燥プロセス

木材の選定と乾燥は、USA 製 PRS と同じ哲学に基づいています。なかでも、フレットボード材は特に重要と考えられています。

  • フレットボード乾燥は、100℃以上の高温で10時間以上かけて乾燥させる独自プロセスを採用。
  • フレットエッジが後から飛び出さないようにする。
  • 過剰な水分による振動の阻害を防ぐ。
  • 適切な含水率を保ち、安定した鳴りと耐久性を確保する。
  • 木材サプライヤーは、ポプラ・バールはクロアチア産を採用するなど、サプライヤーは USA と共通です。グレーディングや供給体制も USA と連動しています。

PRS では「柔らかく、水分を多く含んだ素材は振動を抑制するため好ましくない」という考えを持っており、これはボディ材・ネック材にも一貫して適用されています。

各パーツへのこだわり

PRS のパーツは完全な自社デザイン、もしくは既存規格をPRS専用にモディファイしたもののみを使用しています。

1. チューナーペグ

PRS では主に2種類のペグを使い分けています。

  • シャーラータイプ
  • クルーソン・ヴィンテージタイプ

いずれも内部構造は汎用品とは異なり、弦振動(バイブレーション)を損なわないこと を前提にデザインされています。

  • 多くの他社製ペグが内部にプラスチックワッシャーを使用するのに対し、PRS ではプラスチックパーツを用いず、振動減衰を最小限に抑えた構造
  • ガタ(遊び)が少なく、すぐに正確なピッチへ追い込める高精度なチューニング性能

これにより、安定したチューニングと豊かなサステインを両立しています。当たり前のようでいて、実際に上記の要素を満たしているギターは少ないのが現状です。

2. ナット

SE シリーズのナットは、USA モデルと同系統の思想で設計された、ブロンズパウダー(青銅粉末)を含んだ専用素材 を採用しています。

重要なのは素材だけではなく、

  • ナットの嵌め込み精度
  • 弦が接触する各ポイントの加工精度

も含めた「ナット全体の設計と仕上げ」です。

PRS は独自のナットに関する特許を取得しており、各弦ごとのピッチのズレを補正できるプロファイルに成形しています。

  • 現在の USA モデルとは仕様を分けており、SE では約5年前のブロンズパウダー入りレシピをベースに、SE 専用のキャラクターを持たせています。
  • 「音は振動の波」という考え方から、柔らかく振動を吸収しやすい素材はナット材として好ましくない、と PRS は考えています。
3. ネックと乾燥プロセス

ネックには、PRS 独自の乾燥プロセスが適用されています。

  • 反りやねじれへの強さを高める
  • 長期的な安定性を確保する
  • 振動伝達を最大限に活かす

木材中の水分を抜くことは、「空気中」と「水中」で音の伝わり方が大きく異なることにも通じる重要な要素であり、最適な含水率にコントロールすることで、豊かな鳴りと安定性を両立しています。

4. ピックアップ & ピックアップリング

ピックアップおよびピックアップリングは、いずれも PRS のオリジナルデザインです。

  • 使用する素材
  • コイルの巻き方、マグネットの選定
  • ピックアップリングの材質・形状

といった要素を総合的に設計し「PRS としてのレシピ」を構築しています。

料理にたとえるなら、素材選び(木材・金属・樹脂)とレシピ(設計・組み合わせ・組み立て手順) の両方がサウンドを決定づける、という考え方です。

  • 生産は PSE という工場で行われており、同工場は IBANEZ などのピックアップも手がけていますが、PRS 専用レシピ・仕様で製造。
  • PRS USA チームと PSE はダイレクトにコミュニケーションを取り、チューニングや改良を継続することで、常に最適なサウンドを追求しています。
5. POT、スイッチ、ワイヤー、ノブ
  • ポット(POT)、スイッチ、ワイヤーも PRS オリジナル仕様を採用。
  • コントロールノブは、PRS を象徴する ランプシェード・ノブ を採用し、操作性と視認性、デザイン性を両立させています。

これら電装系パーツも、単なる汎用部品ではなく、トルク感・カーブ・耐久性を含め「PRS のサウンドと操作感」に合わせてチューニングされています。

6. ブリッジ

ブリッジは完全なオリジナルデザインで、ごく限られた一部の製造元 にのみ生産を委託しています。

創業者 Paul Reed Smith 氏が1970年代にリペアマンとして数多くのギターを扱った経験から、汎用パーツ由来のトラブルを多く見てきたこともあり「最高のギターを作るためには、ブリッジを含めたすべてのパーツを自分たちで設計・選定すべき」という強いこだわりがあります。

その結果、

  • チューニングの安定性
  • サステインの工場
  • タッチへの追従性

といった要素を高いレベルで両立した、PRS ならではのブリッジが生み出されています。

7. バード・インレイ

PRS の象徴であるバードインレイも、当初から存在していたわけではありません。ブランドのアイデンティティを確立していく過程で、視覚的にも「PRS らしさ」を表現する重要な要素として進化してきた歴史があります。

Herman Li “CHLEO” モデル

Herman Li “CHLÉO” の開発においては、実際のライブパフォーマンスを想定し、Herman 本人がステージさながらにギターを蹴り上げるテストを敢行。その結果を踏まえ、ネックポケット周りの強度・剛性に関する改良を何度も繰り返しました。

主な特徴は以下の通りです。

  • トレモロユニット: Floyd Rose スタイルながら、PRS 仕様の特別な設計
  • ネック構造:カーボンファイバーロッドを内蔵し、高い剛性と安定性を確保
  • バックのアーチ構造: Herman Li シグネチャーモデルでは、ボディバックにもアーチを設けている点が大きな特徴
  • バックプレート:バックプレートもアーチ形状に合わせた設計で、SE シリーズでは唯一、バック側からネジ止めを行う構造を採用。これは SE チーム独自のアイデアにより実現したものです。

これらの仕様により、過酷なステージングにも耐える耐久性と、プレイアビリティ・サウンドの両立が図られています。

Hollowbodyシリーズ

生産は Cor-Tek 大連工場(中国)の工場で行われており、USA で培われたデザインコンセプトと、現地工場の精度の高い木工・組立技術が組み合わさることで、価格帯以上の完成度を持った Hollowbody SE シリーズが生み出されています。

Hollowbody シリーズにおいては、センターブロックとなるマホガニー材を削り出しで成形し、ボディホーン部のシェイプを USA モデルに近い、よりスリムで洗練されたラインに仕上げています。

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PRS SE Factory Visit レポート

上述の通り、多くの魅力が詰まった PRS SE シリーズですが、そのクオリティがどのような環境で生み出されているのかを確かめるべく、インドネシアの「PT CORT」を訪問いたしました。
同ファクトリーへの視察は、世界中のディーラーの中でも今回が初めてとなります。それでは、現地の様子を詳しくレポートいたします。

DAY1〜2:出国→入国→現地到着

久しぶりの成田空港です。少し肌寒いですが、いよいよ出発です。PRS Japan チームと合流し、参加ディーラーの皆様へのご挨拶も完了。

22:50 定刻から少し遅れてテイクオフ。これより14時間を掛けて、成田空港→クアラルンプール国際空港→スラバヤ空港というルートで現地に向かいます。

初めて搭乗したマレーシア航空でしたが、機内では思いのほかぐっすりと休むことができ、体力を温存したままマレーシアへ。まだ辺りが暗い早朝5時、経由地であるクアラルンプール国際空港に降り立ちました。

クアラルンプール国際空港は世界中からフライトが集まるハブ空港だけあって、非常に近代的でその広大さには圧倒されます。

スタバでの軽食でエネルギーを補給し、朝7時30分。次なる目的地、インドネシアのスラバヤ(ジュアンダ)国際空港へ向けてテイクオフしました。

予定より少し遅れましたが、午前10時にスラバヤへ到着しました。気になる入国審査も、事前申請を済ませていたおかげでパスポートをかざすだけ。非常にスムーズに通過できました。

空港の外に出ると、気温は35℃、湿度は70%超!日本の夏を彷彿とさせる、ねっとりとした暑さが身体を包みます。ここで、いよいよ PRS インドネシア・ファクトリーチームの皆さんと合流です。

空港からは、フロントに立派なメルセデスのロゴが輝くバスに揺られてホテルへ。本当にメルセデスのバスなのかは...あえて深く追求しないことにします(笑)

街中はバイクで移動する方々が非常に多く、東南アジアならではのエネルギッシュな光景が広がっています。

各所で見ることができる美しいドームのモスク。その独特な建築様式が、異国情緒をより一層強く感じさせてくれます。

バイクの波やモスクといった情緒ある風景の一方で、インドネシア第2の都市らしく、都会的な一面も持ち合わせています。

日本出発から約16時間、ようやくホテル着です。

宿泊先は、PRS チームがいつも利用している「シャングリ・ラ スラバヤ」。プールも併設されていて南国ムードも感じられます。

素晴らしい環境で、明日への活力を養います。

部屋からの眺めも素晴らしく、スラバヤの街並みが持つ独特の情緒を感じながら、ようやく一息つくことができました。

滞在先のすぐ隣にある巨大なショッピングモール「Ciputra World Surabaya Mall」へ徒歩で向かい、現地での初めての昼食です。

モール内の広大なフードコートにやってきました。

モール内で「吉野家」を発見。見慣れた看板に一瞬惹かれましたが、せっかくのインドネシア出張ですので、ここは現地の味を楽しむことにします。

フードコートを歩いていると「これぞ現地の食事!」という雰囲気満載のお店を発見しました。

ナシゴレンとフルーツジュース(念のため氷抜き)をセレクトしました。お会計は5人で合計275,000ルピア、日本円にして約2,400円という安さでした。

こちらは、参加ディーラーの方がオーダーしたナマズの揚げ物です。非常に美味しいそうです。

食事はこれほどまでに手頃な一方で、生活用品などの物価は日本とそれほど変わらない印象を受け、現地独特の経済バランスを肌で感じることができました。

ホテルに戻って一息ついたあと、夜は PRS COO の Jack 氏とディナーを共にしました。メニュー名は忘れてしまいましたが、黒いハンバーガーが印象的でした。

翌日に備えて就寝する前にビールを一杯頂きます。アルコール飲料は飲食店以外では入手するのが難しいのですが、ショッピングモールのスーパーで購入することができました。

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Day3:ファクトリー訪問

朝6時に起床し、朝食を済ませた後、いよいよファクトリーへと向かいます。

スラバヤと日本の時差は2時間あり、日本の方が2時間進んでいますが、時差ボケがないのが嬉しいです。

バスで80分ほど移動し、無事にファクトリーへ到着いたしました。

当日は天気が良く、気温と湿度も上がっています。一年中を通して高温多湿なこの環境が、現地の力強い楽器づくりを支えているのかもしれません。

ファクトリー内は15万平方メートルという広大な敷地を有しており、多数のブランドの製造拠点が点在しています。全10棟のファクトリーが稼働しており、内訳はエレキギター関連が8棟、アコースティックギター、アンプがそれぞれ1棟ずつとなっています。

敷地内では約3,000名の従業員が勤務しており、規模別では PRS が第2位の大きさを誇ります。

敷地内の移動は車やバイクが基本です。あちこちをバイクが駆け抜ける様子は、まるで一つの街のようです。

そして何より驚くのが、運ばれている木材の量です。トーンウッドの山に、ここから世界中の楽器が作られているのだとワクワクします。

今や世界最大級のファクトリーである PT Cort ですが、その歴史は1960年代、韓国でのピアノ製造からスタートしました。

1970年からギター作りを始め、名だたるブランドとの信頼関係を深めながら、世界中へとそのパートナーを広げていった歴史があります。

広大な敷地の中を通り、遂に PRS SE Factory へ到着しました。

ファクトリー内のモニターには、訪問を歓迎するウェルカムメッセージが表示されており、手厚い出迎えを受けました。

オフィスへ足を踏み入れると、そこには Cort 製のギターが並んでいます。

展示されているメモリアルなギターをよく見ると、なんと「500万本」の文字が。世界中のギタリストの手に渡った500万本もの楽器が、この場所から生まれたのかと思うと、そのスケールに圧倒されます。

PT Cort の関係者各位への挨拶を済ませたあと、PRS の Jack 氏によるアテンドのもと、ファクトリー内の視察を開始いたしました。

SE シリーズのスタッフによる USA 訪問と、それに続く USA スタッフによる Cort への相互訪問を通じて、USA が保有する高度な技術が Cort へ継承されています。

PRS の厳格な基準を達成するため、専用の工作機械も多数導入。プロダクトマネージャーの密接な協力体制のもと、製品クオリティは USA モデルに肉薄するレベルへと進化を遂げています。

400名の職人が勤務する USA 工場に対し、インドネシアの専用工場では350名の精鋭が月産7,000本という規模で、高品質な楽器を世界中のギタリストへ届けています。さらに現在は月産10,000本という高みを目指して進化を続けています。

1985年の創業以来、ポール・リード・スミス氏とジャック氏は、利益の追求以上に「より良いギターを製作すること」を最優先に掲げてきました。その揺るぎない哲学こそが、現在の強固なパートナーシップの背景にあります。

PRS SE シリーズは2001年に誕生しました。初期モデルはバード・インレイやヴェニア・ウッドのないシンプルな仕様でしたが、9年前より製造を PT Cort へ移管。初の PRS 専用大規模ファクトリーが建設されたことで、生産体制と精度が飛躍的に向上しました。

クオリティの進化が需要の拡大を牽引しており、現在の SE シリーズの成功を支えています。

製品の細部において上位モデルとの共通化が図られています。例えば、バードインレイの製作工程は USA モデルと完全に同一のプロセスを採用しており、スカーフジョイントの製法についても、SE シリーズと S2 シリーズで共通の工法が用いられています。

指板のインレイ作業を担うの精鋭職人で、その手法は USA と全く同じプロセスが貫かれており、メイプル指板にはアバロン、ローズウッド指板にはマザー・オブ・パールを非常にタイトな精度で埋め込んでいきます。

さらに接着工程は長年この工場を支えてきた熟練スタッフが担当し、ネックアングルの確認から最終的な輝きを生むバッフィングに至るまで、USA 工場と全く同じ基準と手作業によって仕上げられた後、最後は一本ずつ厳格な検品を経て世界中のプレイヤーの元へと届けられます。

木材を成型する CNC マシンはすべて PRS の設計に合わせて特別にチューンアップされた専用機です。PRS 特有の流麗なバイオリンカーブや、絶妙なネックシェイプ。これらを高い精度で再現するために、マシン自体が進化を遂げていました。

ギタリストの演奏性に直結するネックのサンディングや、緻密な技術を要するボディバインディングの取り付けは、職人の手作業で行います。

SE シリーズの指板にはローズウッド材のバインディングが取り付けられ、フレット工程が大幅にアップデートされています。PRS が誇る高い演奏性を支えるため、フレットの打ち込みはもちろん、フレットエッジの仕上げに至るまで、熟練の職人による「徹底した手作業」が貫かれています。

フレットの擦り合わせがこれまで以上に滑らかに仕上げられるようになり、チョーキング時の「引っ掛かり」が劇的に改善され、指先と一体化するようなスムーズなフィンガリングを実現しています。

人の指先の感覚でしか生み出せない、あの滑らかな質感や美しさを守るため、ここではあえて熟練の職人による手作業が徹底されています。

ルックスを左右するトップのヴェニアは USA から韓国へ送られた上質な木材をスライスし、PT Cort にて厳格なグレード分けが行われた後、一枚ずつ光にかざして入念にチェックする工程を経て採用されています。

塗装工程においては PRS らしく美しい塗装を施すことで、SE に最適なサウンドと USA モデルとの絶妙な差別化を両立させていますが、ハイライトは何と言ってもステイン職人であるダニ氏とそのチームによる芸術的な手作業にあり、秘蔵のトップシークレットとされる調合レシピに基づき、塗料を使い分けることで、美しいフィニッシュを実現しています。

塗料自体も現地で調達可能なものから USA と同一のものまでを緻密に使い分けています。PRS SE 塗装は、アンダーコート~トップコートまで下記の通りです。

1. Undercoat – a sealer coat
2. Middlecoat – Polyester 
3. Topcoat – Urethane for Gloss, Semi-gloss, and Satin. Acrylic for “open pore” satin 

スラバヤの過酷な外気とは対照的に、ファクトリー内では楽器製造の命とも言える環境管理が徹底されており、室温31.4度、湿度60%という最適なコンディションが常に維持されています。それでも暑いですが、スタッフの方々は慣れているそうです。

指板のクオリティを左右する独自の乾燥工程のために、敷地内には4つの専用窯を備え、PRS の厳格な基準に基づいた緻密な熱処理が行われています。

例えばローズウッド指板は、内部の樹脂を徹底的に抜き去るために130度という高温で9時間にわたり加熱され、一方のメイプル指板は85度で18時間という長い時間をかけてじっくりと乾燥が進められますが、このプロセスによって一度含水率を6%以下まで一気に下げ切ることで木材としての安定性を極限まで高め、その後に楽器として理想的な7〜8%の状態へと戻していくというアプローチをとっています。

こういった積み重ねが、日本のような四季の変化がある環境下でも狂いの少ない、PRS SE ならではの高い信頼性に繋がっています。

最後に、アンプセクションを見ていきます。PRS アンプのみで日産20台、月間400台という、一台一台の精度を高めるための限定された生産体制の中で、多くのプレイヤーに愛されている Sonzera、Archon をはじめとする名機たちが、職人たちの手によって製作され世界中へ送り出されています。

ギターサウンドの要となるアンプセクションにおいても、PRS アンプ独自の極めて厳格な品質管理体制が敷かれており、一台が出荷されるまでにPRS のみが合計3回もの徹底した動作・サウンドチェックが行われている事実に驚かされました。

視察のあとは PRS チーム、Cort チームの方々と焼肉ディナーでした。

めちゃくちゃ美味しかったです。

PRS SE シリーズの島村楽器オーダーモデルに関するカラーの確認も、ファクトリー内で行ってきました。

PRS SE シリーズの島村楽器オーダーモデルはすでに発売中ですので、ぜひ当社オンラインストアをご覧くださいませ。

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Day4:帰国

朝5時に起床し、7時の朝食を経て13時にホテルを出発したものの、帰路のフライトが2時間遅れ17時30分過ぎの離陸となりました。

空き時間を利用して、日本でいう焼きそばを頂きました。エスニックテイストでこちらも美味しかったです。

帰路のトランジットで立ち寄ったクアラルンプール国際空港のハードロックカフェでは、著名なミュージシャンたちの貴重なオートグラフ入りギターがずらりと並ぶ光景を眺めながら軽食を楽しみ、ファクトリー視察の興奮が冷めやらぬまま、音楽の歴史と情熱を最後まで肌で感じる贅沢なひとときを過ごすことができました。

さいごに

今回の視察を通じカスタマー、ディーラー、PT Cort、そして USA 本社が「一つのチーム」として機能していることを改めて深く実感し、単なるサプライヤーとバイヤーの関係を超えた真のビジネスパートナーとして、日々密接なコミュニケーションを図りながら「最高の一本」を追求する姿に強い感銘を受けました。

海を越えて日本のプレイヤーへ素晴らしい楽器を届けるために、現地で並々ならぬ情熱を持って製作に携わる多くの方々へ、心からの感謝を伝えたいと思います。

当社でも PRS SE シリーズを多数取り扱っております。下記リンクよりご覧いただけますのでぜひご覧いただき、皆様の好みに合った一本を見つけていただければと思います。

また、PRSによるオフィシャルムービーもぜひご覧くださいませ。

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平林 大一プロフィール

埼玉県出身。現在は静岡県に移り住んで15年が経過。
趣味は釣りとワインで、自然の中でリラックスする時間や美味しいワインを楽しむのが大好き。

2024年現在、PRS USAファクトリーでのオーダーやGIBSONナッシュビルでのバイヤー業務、国内外のギター・ベース、アンプやペダルのオーダーに携わっている。

所有楽器はPRS Private StockやAMPをはじめ、Fender 1963 Stratocaster、Gibson CS LP、Ken Smith BSR5、Vintage Ibanez & Maxonなど多岐に渡る。

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