How to Order Private Stock ~世界に1本だけの理想を形にする方法~|バイヤー平林が綴る PRS という美学Vol.15【Paul Reed Smith】

  • ブックマーク
How to Order Private Stock ~世界に1本だけの理想を形にする方法~|バイヤー平林が綴る PRS という美学Vol.15【Paul Reed Smith】

記事中に掲載されている価格・税表記および仕様等は予告なく変更することがあります。

皆様こんにちは。島村楽器静岡パルコ店、店⻑兼バイヤーの平林です。
Vol.15では「PRS Private Stock」のオーダー方法についてご紹介します。

PRSが誇る最高峰シリーズであるPrivate Stockは、単なるカスタムギターではなく、オーナーの想いを形にする“物語のある一本”です。
世界に一つしか存在しない理想のギターをどのようにオーダーできるのか、その流れとポイントを具体的に解説します。

PRS Private Stock とは?

Private Stockは1995年の“Guitars of the Month”プログラムに端を発して、Paul Reed Smith氏のもとで少数の敏腕ルシアーのチームにより、ミュージシャン向けにカスタム・ギターを製作するプログラムとして1996年にスタートしました。

最高級の材料を用い、1本ずつのオーダーにより製作される楽器であり、PRSで最高レベルのカスタマイズが可能です。
BTO(ビルト・トゥ・オーダー)インストゥルメントでも、すべてのPrivate Stockは「その1本だけの」ワンオフメンタリティで扱われ、丹念に製作されます。

家宝レベルのクオリティの楽器をお届けするプログラム、それがPrivate Stockです。

Paul Reed Smith氏が率いるPRS Guitars。
その中でも最高峰のシリーズを手がけるのがPrivate Stockチームです。

ディレクターのポール・マイルズ氏を中心に、わずか19名(2024年時点)という少数精鋭で構成されています。
約400名のPRSスタッフの中から、特に高度なギター製作技術を持つ職人だけが選ばれ、この特別なチームに加わることができます。

Private Stockチームから生み出されるギターは、PRSのデザインとクラフトマンシップの頂点を極めています。
既成概念にとらわれず、常に限界に挑み続けることで、演奏のためのツールとして新たな可能性を切り拓くだけでなく、芸術作品としても比類なき美しさを備えています。

一本一本には職人たちの熟練した技術と情熱が注がれ、細部に至るまで精緻に仕上げられます。
選び抜かれた最高品質の木材やパーツを用い、丹念な手作業によって組み上げられることで、あらゆる面で完成度が高く、まさにモダンギター製作の最高峰と称される存在です。

このような哲学と精神性のもとで生み出されるPrivate Stockは、プレイヤーやコレクターから絶大な支持を集めるのみならず、ギター業界全体にも大きな影響を与え続けています。

Paul Miles氏(以下、マイルズ氏)は、Private Stock部門のトップであるディレクターを務めるベテランのギター職人です。
1991年にPRSに入社し、30年以上にわたりPRSでのギター製作に携わっています。

彼はディレクターとしてPrivate Stockのギターが最高の品質と美しさを備えるように、木材の選定からデザイン、製作、最終チェックに至るまで、細部にわたって監督しています。
実際にPRSファクトリーを訪問すると、マイルズ氏とマテリアルの選定やスペックに関して詳細を打ち合わせながらオーダーします。

マイルズ氏の木工やギター製作に関する高い専門知識、木材選びや仕上げの技術に対する鋭い感覚は、Private Stockギターの高い品質を支えていて、現在もモダンギターとしてPrivate Stockが進化し続けているのは、マイルズ氏の力が非常に大きいと感じています。

マイルズ氏のディレクション下で製作されたギターは芸術的でありながらも楽器として優れているため、ミュージシャンやギター愛好家から高い支持を集めています。
また、世界中の楽器ショーでPRS Guitarsのプロモーション活動も行い、ミュージシャンやカスタマーとの関係を築く重要な役割を担っています。

目次に戻る

オーダー時に気を付けたいポイント

通常モデルとの違い

通常のUSAモデルやSEシリーズでも十分に完成度の高いPRSですが、Private Stockでは素材選びからデザインまで、ひとつひとつの要素を自らのこだわりで決定できます。

  • ボディトップ材や指板材など、ストーリーを持ったトーンウッドの選択
  • 多様なバリエーションのパーツ類やネックグリップといった、プレイヤーの感覚に寄り添う仕様
  • インレイやカラーリングなど、楽器としての機能を超えた美学的要素

これらを自由に組み合わせることで、既成概念にとらわれない「唯一無二」の一本が生まれます。

目次に戻る

新規オーダー or 店頭品購入?

どちらが良いかは「何を優先するか」によって答えが変わります。

<店頭品の場合>
実際に来店が可能な場合は、現品を手に取り、ルックスやサウンド、ネックの感触まで確かめた上で決められるという大きなメリットがあります。
遠方の方でも、詳細な画像や動画を通じて具体的なイメージを掴むことが可能です。
完成品としての“確実性”と“即時性”を重視する方には最適な選択といえます。

<新規オーダー品の場合>
既存のラインナップには存在しない「自分だけの一本」を形にできる醍醐味があります。
木材選定や仕様決定の過程そのものが創造的体験となり、プレイヤーとしての価値観を映し出すことができます。

ただし、完成まで実物を確認できないため、イメージとの誤差が生じる可能性もゼロではありません。
納期の長さや仕様決定の難しさなど、ある程度のリスクを受け入れる覚悟も必要です。

つまり、

  • “確実な個体を手にしたい”なら店頭品
  • “理想そのものをゼロから創りたい”なら新規オーダー

ということになります。
どちらを選ぶにしても、最も大切なのは「自分にとっての必然性」と「そのギターを手にしたときの未来を思い描けるかどうか」だと考えています。

目次に戻る

価格と納期

価格は仕様やオプションによって幅があり、概ね¥1,800,000〜¥3,000,000前後となります。
シンプルなスペックで、かつワシントン条約による制限がないマテリアルを使用したモデルの方が、比較的早い納期となる傾向があります。

ただし、バックオーダーの状況や生産体制、さらに輸出入に関わる手続きの影響もあるため、「できるだけ早く欲しい」というご要望にお応えすることは難しい場合がほとんどです。

完成までの時間も含めてそのプロセスを楽しんでいただければ幸いですが、Private Stockのオーダーには長い納期を待つだけの覚悟と忍耐も求められます。

目次に戻る

仕様の考え方

ギターを弾く私たちに「理想の一本」を探す旅は終わりがありません。
なかでもPRSの最上位ラインであるPrivate Stockは、その探求心に応える最高峰の存在です。

単なる高級ギターではなく、「自分の感性を形にするギター」として捉えると、その魅力がより鮮明に見えてきます。

カスタムオーダーを考える際に意識したいのは、単なる“豪華仕様”を目指すのではなく、自分にとっての必然性や理由を持たせることです。

例えば、

  • COREモデルのCUSTOM 24にもう少しハイが欲しい、と感じてきた経験を反映させる
  • 自分の音楽スタイルに適したネックシェイプ、スケールやフレット数を選ぶ
  • 視覚的なモチベーションとして「このギターを弾きたい」と思わせるカラーを取り入れる

など、必然性や理由を持たせることによって、Private Stockは単なる嗜好品ではなく、「演奏者の歩みと共に育つギター」へと昇華していきます。

焦らず、自分のプレイスタイルや音楽的嗜好、そしてこれから目指したい方向性をじっくり見つめ直すことで、本当に“自分のための一本”が見えてきます。

Private Stockをオーダーする醍醐味のひとつは、PRSの職人チームとの対話です。
彼らは世界中のプレイヤーとギターを作り続けてきた経験から、材の個性や仕様の組み合わせが生むサウンドの方向性を熟知しています。

オーダーに際して「どう表現したいか」「どう感じたいか」という曖昧なイメージすらも、彼らとの会話を通じて具体的な形へ落とし込むことが可能です。

皆様からのオーダーを代行する場合、前述の必然性や理由をPRSチームと共有しながら、単なる仕様の伝達ではなく、「理想のルックス、サウンド、感覚をどう具現化するか」という対話を重ねていきます。

木材の響き方、ピックアップの出力特性、塗装の厚みや質感、それぞれの選択が最終的なサウンドと弾き心地にどう影響するのかを、職人たちは実際の経験値に基づいて提案してくれます。

そのプロセスはまるでひとつの作品を共に創り上げる共同制作のようであり、完成したギターにはオーダーした本人の想いと、PRSのクラフトマンシップが見事に融合した“ストーリー”が宿ります。

こうして生まれるPrivate Stockは、単なるスペックシートの集合体ではなく、演奏者の思想と職人の技術が交わる場所として、唯一無二の存在へと昇華していくのです。

※タイミングが合えば、お客様からのPrivate Stockオーダーに関して、PRSファクトリーでのウッドセレクトを含めたオーダーを代行しています。
例年はNAMM Showが開催される1月下旬〜2月初旬に、ファクトリーを訪問しておりますので、どうぞご相談くださいませ。

目次に戻る

オーダーの流れ

オーダーシートの作成

最新のPrivate Stockオーダーシートに沿って仕様を選択していきます。
近年は過去に比べて自由度がやや制限されており、その背景には各モデル本来の特徴やPRSの設計思想をより明確に打ち出すという意図があります。

過去には選択可能だったオプションが現在は使用できなかったり、逆に「今回のみ特別に対応可能」となるケースもあり、それらは常にPRS本社の方針や製作体制により変動します。

下記がPrivate Stockオーダーシートの主な構成項目です。
各項目について、希望の有無を含めてすべて指定する必要があります。
簡単ではありますが、各項目の概要を説明していきます。

Model

  • Leftyも選択可能
  • Scale Length、Number of Fretsはモデルによって固定(ex 24F仕様のMcCarty 594は不可等)
  • Semi-hollow、F-holeの有無

(1) Body Section

  • Top Wood:ボディトップ材
  • Back / Middle Wood:ボディバック材、ボディミドル材(ホロウボディ以外でバックキャップ材を使用する場合)
  • Back Wood (hollowbody):ボディバック材(ホロウボディの場合)
  • Back Cap (solid body):バックキャップ材(ホロウボディ以外)
  • Body Binding Matl:ボディ・バインディングのマテリアル
  • Bound F-Hole:ボディのF-Hole有無(ホロウボディシリーズ以外はシングルf-holeのみ選択可能)
  • Body Purfling:ボディトップ外周のパーフリング
  • Body Notes:特記事項

(2) Neck Section

  • FB & V Inlay Pkg:指板&ヘッドストックのインレイパッケージ
  • Inlay Matl (Centers):インレイ素材(中心)
  • Inlay Matl (Outline):インレイ素材(外周)
  • Neck Wood:ネック材
  • Fretboard Wood:指板材
  • Neck Carve:ネックカーブ(モデルによって制限あり)
  • Radius:指板ラディアス(ネックカーブによって固定)
  • Fretwire:フレットワイヤー
  • Veneer Material:ヘッドヴェニア材
  • Truss Cover Matl:トラスロッドカバー材
  • FB & V Binding Matl:指板&ヘッドストックのバインディング材
  • FB & V Purfling:指板&ヘッドストックのパーフリング
  • TRC Purfling:トラスロッドカバーのパーフリング
  • Heel Inlay:ネックヒールのインレイ
  • Side Dots:指板サイドドット材
  • Neck & Inlay Notes:特記事項

(3) Hardware & Electronics

  • Nut Material:ナット材
  • Hardware:ハードウェアカラー
  • Tuners:ペグの種類
  • Tuner Buttons:ペグボタン種類、素材
  • Bridge:ブリッジの種類
  • Treble Pickup:トレブル・ピックアップ(モデルによってNCルータープログラムの制限あり)
  • Middle Pickup:ミドル・ピックアップ(モデルによってNCルータープログラムの制限あり)
  • Bass Pickup:ベース・ピックアップ(モデルによってNCルータープログラムの制限あり)
  • Electronics:エレクトロニクス(モデルによってNCルータープログラムの制限あり)
  • Pickup Rings:ピックアップ・リングのカラー、素材
  • Knobs:ノブの種類、カラー、素材
  • String Gauge:弦のゲージ
  • Pickguard:ピックガード素材(Vela等)
  • Back Plate Material:バックプレート素材
  • Hardware & Electronics Notes:特記事項

(4) Color & Finish

  • Top Color:ボディトップ・カラー
  • Top Color Style:ボディトップカラーのスタイル(Dragon’s Breath, Burst, Glow, Fade等)
  • Back / Middle Color:ボディバック、ミッドカラー
  • Body Binding Color:ボディバインディング・カラー
  • Neck Color:ネックカラー
  • Fretboard Color:指板カラー
  • Veneer Color:ヘッドヴェニア・カラー
  • Neck Finish Type:ネックフィニッシュタイプ(グロス、サテン)
  • Body Finish Type:ボディフィニッシュタイプ(グロス、サテン)
  • Color & Finish Notes:特記事項

(5) Case

  • Exterior / Interior:ケースエクステリア、インナーカラー(ブラックペイズリー、ブラウンペイズリー)

希望無しの項目を含めて、上記をセレクトしますが、ここからは主要なセクションと人気のオプションを説明していきます。

目次に戻る

ベースモデルのセレクト

まず始めに、ベースとなるモデルを選択します。
モデル指定のスケール長やフレット数を後から変更することは原則としてできません。

NCルーターの制御プログラムがあらかじめ決められており、それにない仕様は基本的に選べないためです。

下記、参考リンクをご案内しますので、仕様決めの一助としてご覧いただければ幸いです。

ベースモデル一覧(2025年10月時点)

  • Custom 22-12 String
  • Custom 22-6/12 String Double-neck
  • Custom 24
  • Custom 24-08
  • Custom 24 Piezo
  • Custom 24-08 Piezo
  • Custom 24 “Floyd”
  • Custom 24 “Retro”
  • Custom 24-Baritone
  • Custom 24-7 String
  • McCarty
  • McCarty 594
  • McCarty 594 Thinline
  • McCarty Singlecut 594
  • Studio
  • Studio Piezo
  • Special Semi-Hollow
  • Special Semi-Hollow Piezo
  • Modern Eagle V
  • Modern Eagle V Piezo
  • Vela
  • Hollowbody I Piezo
  • Hollowbody II Piezo
  • Hollowbody I-12 String
  • Hollowbody II-12 String
  • McCarty 594 Hollowbody I
  • McCarty 594 Hollowbody II
  • Singlecut Archtop I
  • Singlecut Archtop II
  • Paul’s Guitar
  • DGT
  • Santana Retro
  • Santana II
  • Tremonti
  • Holcomb

Custom 24

SANTANA RETRO

HOLLOWBODY I

Paul’s Guitar

Special Semi-Hollow

目次に戻る

カラー・フィニッシュのセレクト

Private Stock の魅力のひとつは、美麗なカラーリングにあります。
ただし、同じカラーネームであっても、木材それぞれの木地の色味や杢目の出方が異なるため、仕上がりの印象が変わることがあります。

理想とするカラーイメージが明確にある場合は、木地の色味を含めたウッドセレクトを行うことや、杢目の傾向を含めて、参考個体の画像やカラーサンプルなどをご提示いただけると、より再現に近づきます。

ただし、最終的な仕上げはペインターの感性や塗料にも左右されるため、残念ながら全く同じ色調を保証することはできません。

特にブルー系など発色が繊細なカラーは、光の当たり方や木地の色味によって大きく印象が変わるため、仕上がりの個体差が生じやすい点にご注意ください。

このような点をご理解のうえで、唯一無二の風合いを楽しむのも、Private Stockの醍醐味のひとつといえます。

下記は、PRSで採用されている代表的なカラースタイルの特徴です。

Dragon’s Breath(または Rebirth)

トップ中央から外周に向かって炎が広がるようなグラデーションが特徴。
木目の立体感を強調し、ドラマチックで力強い印象を与えます。

Glow

センターが明るく輝いて見えるカラーで、外側へ向かってなだらかにトーンが深まる柔らかなグラデーション。
上品で立体的な仕上がりになり、杢目の美しさを自然に引き立てます。

Burst

外周から中央にかけてグラデーションしていく伝統的なサンバーストスタイル。
温かみを感じさせる定番のカラー手法です。

Fade

上下、左右、クロスフェイドなど、色相そのものが変化するグラデーション。
ブルーからグリーン、パープルからレッドなど、色の移り変わりを楽しめるアーティスティックな仕上げです。

塗装(フィニッシュ)は下記の3種からセレクト可能です。

  • High Gloss Nitro(光沢のあるラッカー塗装)
  • Satin Nitro(艶消しのラッカー塗装)
  • Vintage Nitro(最も硬質でクラッキングが入りやすいラッカー塗装)

塗装の質感、ルックス、サウンドのお好みに合わせてお選びください。

目次に戻る

マテリアルのセレクト

使用する木材の種類が変わるとサウンドが変化します。
木材の種類ごとに異なる音響特性(響き方・減衰の仕方・倍音の出方)があり、それらを理解したうえで選定・組み合わせることが理想のトーンを実現する鍵となります。

ボディ材(トップ&バック)、ネック材、フィンガーボード材のバランスと相性によって、ギター全体のキャラクターは大きく変わります。

木材の選択は見た目だけでなく、プレイヤーの理想のサウンドに直結する要素です。
Private Stockでは求める音の方向性に合わせて、最適なマテリアルの組み合わせをセレクトしていきます。

ボディトップ材

ギターのサウンドとルックスの両面で重要な要素となるのが、ボディトップ材です。

Private Stock専用の木材保管庫「THE VAULT」のストック状況によりますが、下記の中からセレクトします。
記載にないマテリアルは都度オファーをかけ、タイミングが合った場合にのみオーダー可能です。

選択可能なボディトップ・マテリアル

  • Buck-Eye Burl (Satin finish only
  • Cedar
  • Cocobolo
  • Curly Maple
  • East Indian RW
  • Koa – If Available
  • Macassar Ebony
  • Maple Burl
  • Pale Moon Ebony
  • Quilted Maple
  • Quilted Maple – 1 Piece
  • Roasted Curly Maple

PRSで最も多く使用されるのはメイプル材です。
美しい杢目と明るい音響特性により、多くのモデルで採用されています。

特にブルー系カラーをオーダーする際は、木地(きじ)の色味が仕上がりの印象を大きく左右します。

  • 白い木地:発色が良く、鮮やかでクリアなブルーに仕上がる
  • 黄色みを帯びた木地:ややグリーンがかったトーンになる傾向
  • 濃い(黒っぽい)木地:深みのある沈んだ印象のブルーになる

このように、イメージするカラーを実現するためには、木材そのものの色味選びが重要です。
サウンド面だけでなく、仕上がりのトーンや雰囲気に合わせて最適なトップ材を選定します。

代表的なボディトップ材

Curly Maple

Quilted Maple

ストックがあれば、ワンピースウッド材も使用可能です。
ワンピースウッド材について詳しくは下記リンクも参照ください。

スポルテッド・メイプルの杢に合わせてコッパー(銅箔)を貼った独自スタイルなども存在します。

また、PRSは多様な木材を使用することへの探究心にあふれており、新たなギターサウンドを生み出すための挑戦を続けています。

サップが特徴的なコアウッドです。

Macassar Ebony with Swamp Ash BindingのDGTモデルです。

メイプルの華やかさも魅力的ですが、こちらはエキゾチック・ウッドによる豊かな表情と自然の温もりを纏い、そのマテリアルが本来持つ倍音構成と共鳴特性を余すことなく引き出すことに成功しています。

PRSファクトリーでの、ポールマイルズ氏とのウッドセレクト

ファクトリーオーダーの際は、選定したマテリアルをポール・マイルズ氏と入念にチェックします。

イメージする1本に合わせて、ブックマッチ材を左右どちらに開くか確認します。

さらに、テンプレートを使用しながら、上下、表裏、ピックアップやパーツの位置を見ながら微調整していきます。
PRSチームのアドバイスを採用するか、自分自身のアイディアにするかを毎回悩みますが、いずれにしてもベストと感じる選択を取ります。

ボディバック材

ボディバック材は、ギター全体の重量バランスやサスティーン(音の伸び)に大きく影響する非常に重要なファクターです。
トップ材がサウンドの「輪郭」や「立ち上がり」を担う一方で、バック材は音の芯や厚み、サスティーンを決定づけます。

また、最終的な完成時の重量にも直結するため、演奏時のフィーリングや取り回しの良さを考慮して選定することが重要です。
バック材の選定は単なる重量調整にとどまらず、サウンドキャラクター・演奏感・最終的な完成度を左右する大切な工程のひとつです。

選択可能なボディバック・マテリアル

  • African Mahogany
  • Black Limba
  • Korina(If Avalable)
  • Obeche
  • South American Mahogany(If Avalable)
  • Swamp Ash

こちらは、ボディにバックキャップとしてバール・メイプル材を採用した個体です。
バックキャップを採用する場合は以下のような組み合わせとなります。

  • トップ:キルト・メイプル
  • センター:アッシュ
  • バックキャップ:バール・メイプル

それぞれのマテリアルに合わせてステインするカラーを指定可能です。

Hollowbody II の場合は、ボディトップ、センター、ボディバックという組み合わせです。
(Hollowbody I の場合はボディトップ、ボディバックの組み合わせでホロウ構造)

アフリカン・マホガニー

PRSで多く使用されるアフリカン・マホガニーは、サウンド・重量・加工性のいずれにおいても非常にバランスの取れたトーンウッドです。
温かみのある中低域と滑らかなレスポンスを持ち、トップ材との組み合わせによって幅広いキャラクターを引き出すことができます。

PRSでは、美しいリボン杢が現れた個体をストックしていることが多く、外観面でも高級感のある仕上がりが期待できます。
また、木材ごとにサイズや厚みの情報が管理されているため、選定の際にはモデル構造やデザインに適したマテリアルを慎重にセレクトすることが重要です。

サウスアメリカン・マホガニー

木材に記載されている「SA」は、South American Mahoganyを意味します。
これは、ホンジュラス・マホガニーに代表される南米産のマホガニー材で、希少性が高く高級トーンウッドとして知られています。

サウスアメリカン・マホガニーは、アフリカン・マホガニーに比べて比重が高く、やや重くなる傾向があります。
その分、密度のある中低域と豊かなサスティーンを持ち、力強いトーンを求めるプレイヤーには魅力的な選択肢となります。

ただし、ギター全体の重量バランスにも影響するため、オーダー時にはサウンドキャラクターや演奏感とのバランスを考慮する必要があります。

こちらは、貴重なフィギュアド・サウスアメリカン・マホガニーです。

ブラック・リンバ

ブラック・リンバは、独特のインクラインが印象的なトーンウッドで、その外観の美しさと音響特性によって高い人気を誇ります。

一般的なマホガニーやコリーナに比べるとやや重量がある傾向にありますが、その分中低域の厚みとサスティーンの豊かさが際立ちます。
また、アタック時の反応が滑らかで倍音の広がりも豊かです。

クリーンからハイゲインまで、どのレンジでも密度の高いトーンを生み出します。

ネック材

ネック材は、ギターのプレイフィール、サウンドキャラクター、そしてサスティーンに直結する極めて重要な要素です。

弦振動を支える中枢部分であり、使用する木材の種類や密度、重量によって楽器全体のレスポンスや音の立ち上がりが大きく変化します。
また、ネックの剛性はプレイアビリティやサスティーンの長さ、音の安定性にも影響します。

理想とするトーンや弾き心地に合わせて、ネック材を慎重に選定することが大切です。

選択可能なネック・マテリアル

  • Ash
  • Bird’s Eye Maple (if Available)
  • Black Limba
  • Brazilian Rosewood
  • Cocobolo
  • Curly Maple
  • East Indian Rosewood
  • Korina
  • Macassar Ebony
  • Mahogany
  • Mahogany – Figured
  • Pale Moon Ebony

カーリーメイプル

カーリーメイプルのステインド仕様です。ブルースティールのフェイドカラーが採用されています。

ローステッドメイプル

こちらは、ローステッドメイプルのステインド仕様です。オレンジトルマリンのフェイドカラーが採用されています。

ブラジリアン・ローズウッド

Private Stockを象徴するブラジリアン・ローズウッド・ネックです。

最も高い人気を誇るオプションですが、ワシントン条約の規制があり、年々価格が高騰していることと入手が困難になっています。

コアウッド

こちらは、非常に珍しいコアウッドのネックです。過去に30本程度しか製作されていないため、限られたタイミングでのみオーダーが可能です。

目次に戻る

指板、インレイなど装飾のセレクト

指板材は、演奏時のタッチ感、サウンドキャラクター、さらにはルックスや視認性に大きく関わる要素です。

タッチした際の感触やピッキングへの反応、音の抜けや倍音の出方にも影響します。
また、インレイデザインや素材が指板仕様とセットになった「パッケージオプション」も存在します。

そのため、指板材を選ぶ際にはサウンド・見た目・インレイデザインとの相性を考慮することが重要です。

指板材

指板材は下記のマテリアルが使用可能です。

選択可能な指板マテリアル&インレイパッケージ

  • *Package – Bats in Flight (Flamed Maple & Ebony)
  • *Package – Bay Bridge Heron (Maple, Quilt, & Ebony)
  • *Package – Birds of a Feather (Flamed Maple & Ebony)
  • *Package – Reverse Birds of a Feather (Default Materials)
  • Bird’s Eye Maple
  • Brazilian Rosewood
  • Cocobolo
  • Curly Maple
  • East Indian Rosewood
  • Ebony
  • Exotic Ebony
  • Honduran Rosewood

指板インレイは下記が使用可能です。

指板インレイ・オプション

  • *Package – Bats in Flight (Default Materials)
  • *Package – Bay Bridge with Heron (Default Material)
  • *Package – Birds of a Feather (Default Material)
  • *Package – Gradated Birds (Blue to Green)
  • *Package – Koi Fish (Default Materials)
  • *Package – Modern Tree of Life (Default Materials)
  • *Package – Modern Tree of Life (Default Materials) w/ Outlined Birds
  • *Package – Original Tree of Life (Default Materials)
  • *Package – Reverse Birds of a Feather (Default Materials)
  • 20th Birds w/ Outlines With Old School Eagle
  • 20th Birds w/o Outlines With Old School Eagle
  • 30th Birds w/ Outlines (w/ Vine) With Old School Eagle

Brazilian Rosewood/Shimamura 60th Anniversary Tree Of Life

こちらは、ブラジリアン・ローズウッド材を指板に使用したモデルです。

インレイオプションで高い人気を誇るTOL(Tree Of Life)インレイですが、こちらは、弊社創業60周年を記念してデザイン頂いた特別仕様です。

特別なインレイ・パターンをオーダーする場合、10本以上のPrivate Stockオーダーを必要とするケースが多いです。

ヘッドストックのヴェニアウッドにも、ブラジリアン・ローズウッド材を使用しています。

チューナー(ペグ)は、弦振動を伝えることや、チューニング精度や安定性に直結する重要なパーツです。

CUSTOM 24の場合は、精密なチューニングと滑らかな操作性を両立するTweaked Phase III Locking Tunerのみが選択可能です。

一方でMcCarty 594などのモデルでは、上記に加えて、よりクラシックな外観と操作感を持つVintage LockingおよびNon-Lockingタイプから選択できます。

こちらのインレイ・アウトラインには、蓄光素材を使用した「ルミインレイ」を採用しています。暗所でも視認性を確保し、実用性とデザイン性を両立しています。

Quilted Maple/30th Anniversary VINE INLAYS

キルトメイプルの指板は、希望カラーへステインすることが可能です。

VINEインレイを組み合わせたこちらの1本は、ブルーグリーンから深く濃いブルーへグラデーションしていくBlue Steel Glowカラーに合わせて、フィンガーボード、ネックもステインしています。

フィンガーボードをステインする場合は、エッジ部に塗料が滲むことを防ぐため、バインディングをセレクトする必要があります。
こちらは、Onyx Stoneのパーフリングと指板のナチュラルバインディングを組み合わせた新たな試みが採⽤されています。

Koa Wood/Brushstroke INLAYS

コアウッドにカーリーメイプルバインディングを採用したこちらの1本は、Private Stockカレンダーの表紙を飾っています。

ヘッドストックには、Brushstroke Eagleを、フィンガーボードにはBrushstroke Birdsを採用しています。

マテリアルには Black Cherry Synthetic Opalを使用しています。

Synthetic Opal(シンセティック・オパール)は、レジンを基材とした人工オパールで、美しい輝きと高い耐久性を兼ね備えています。天然オパールに比べて色の均一性が高く、デザイン意図に沿った安定した発色が得られるのが特徴です。

African Blackwood/Celtic Knot Inlays

こちらは、Celtic Knot Inlaysです。Guitar Of The Month、Collection Series、John McLaughlin Limited等の、特別なモデルにのみ使用されます。(オーダー不可)

インレイ・マテリアル

バードインレイは、センターマテリアルとアウトラインマテリアルを別々に選択します。
メイプル材をステインしたバードインレイは人気の仕様です。

多様なマテリアルからセレクト可能ですので、お好みに合わせてお選びいただけます。

パーフリング

外周に沿って入れられるパーフリング(装飾縁取り)は、スペシャリティを演出する人気オプションです。
下記のシェル素材、ルミインレイからセレクトが可能です。

選択可能なパーフリング・マテリアル

  • Abalone
  • Gold MOP
  • Luminlay
  • Mother of Pearl
  • Paua

コアウッド等、杢目を活かしたマテリアルとのマッチングは非常に良いです。

こちらはフィンガーボードにパーフリングを組み合わせています。

フィンガーボードとヘッドストック・ヴェニアヘッドのパーフリングはセットです。

ヘッドストックのヴェニアウッドも、ボディやフィンガーボードに合わせてセレクトします。

パーツ・オプション

ペグ・ボタン

人気の高いカーリーメイプルを丁寧にステイン仕上げしたペグ・ボタン。
杢目の持つ立体的な波紋模様が光の角度によって豊かに変化し、上品な存在感を放ちます。

メイプル材へのステイン行程は、PRS本社のPrivate Stockチームが一つひとつハンドフィニッシュで担当します。木材の導管を活かした丁寧な染色により、木材の質感を損なうことなく豊かな陰影を引き出しています。

アップチャージは掛かりますが、楽器に華を添える仕上げです。

こちらは、コアウッド・ペグボタンの1本です。オファーが通れば、メイプル材以外でもオーダーすることも可能です。

トラスロッド・カバー

メイプル材のトラスロッドカバー、バックプレート、ピックアップ・マウントリング、コントロールノブも、同様にステインされています。

インレイオプションによっては、トラスロッド・カバーの装飾がセットで入ります。

コントロール・ノブ、ピックアップ・マウントリング

美麗を極めたコントロールノブ。

コアウッドを使用したピックアップ・リング、コントロール・ノブです。

ステインド・メイプルのピックアップ・リングです。
樹脂や金属製リングに比べ、木製リングは軽量かつ共鳴特性に優れ、ボディ材との自然な振動伝達を促すことで、音の立ち上がりや倍音の伸びにも好影響を与えます。

バック・プレート

ステインド・メイプルのバック・プレートです。
ナチュラルウッド特有の杢目が光の角度によって奥行きを生み出し、背面のディテールに至るまで高級感を演出します。

ブラック・リンバのボディバックとのコントラストが映えます。

AQUAMARINE SMOKED BURSTカラーのネックとバックプレート。

ネックヒール・インレイ

ネックヒール・インレイでは、12フレットのバード・インレイ「Coopers Hawk」をネックヒールに配置することが可能です。
ワンポイント・アクセントとして、プレイ中に視界に入るとテンションが上がります。

目次に戻る

ピックアップ・ブリッジのセレクト

ピックアップ

PRSオリジナルピックアップをはじめ、モデルによっては社外メーカーもマウント可能です。
ただし、JM635はSilver Sky専用ピックアップのため、他モデルではマウント不可です。

下記、Custom 24でセレクト可能な基本のピックアップです。

選択可能なピックアップ

  • \m/ covered
  • \m/ uncovered
  • 57/08 covered
  • 58/15 LT covered
  • 59/09 uncovered
  • 85/15 uncovered
  • Default to Model
  • Dragon II
  • HFS
  • None
  • Tremonti

また、Santanaにマウントした様なオールド・ボビン・タイプのゼブラカラーも存在し、生産体制によりオーダー可能な場合があります。

TCIピックアップを使用するモデルでは、NCルーターの制御プログラム上の制限により変更不可ですが、PRSがモデルごとに最適化したサウンドを体感できます。

P-90タイプをマウントする場合、Seymour Duncan製のPRS仕様をはじめ、社外ピックアップの選択も可能です。

こちらはTORCHED仕様のピックアップカバー。
モダンなカラーとの相性が非常に良く、独特の存在感を持っています。

ブリッジ

モデルによって制限がありますが、CUSTOM 24のブリッジは下記からセレクトが可能です。

選択可能なブリッジ

  • PRS Stoptail w/ Brass Inserts
  • PRS Adjustable Stoptail
  • PRS Patented Tremolo, Gen III
  • PRS Plate Style – Machined

第3世代を意味するGEN IIIトレモロだけでなく、ストップテイル(アジャスタブルタイプ)ブリッジ、プレートタイプのフィックスド・ブリッジも選択可能です。

ブリッジタイプが変わると、ネックの仕込み角が変わりますので、ブリッジ毎にテンション感やプレイフィールが異なります。

PRSのStoptail w/ Brass Inserts(ブラスインサート付きストップテイル)は、50年代LP等と同様にアルミニウム製の軽量なブリッジを採用しており、スタッド部分へ真鍮(Brass)インサートを埋め込む仕様です。

真鍮は音響伝導性に優れるため、弦振動をボディにより効率的に伝達し、結果として中低域の厚みと倍音のリッチさを向上させる効果があります。
アルミ素材の軽やかさと、ブラスの温かみあるトーンを両立できるのが特徴です。

細かなオクターブチューニングが可能となる、アジャスタブル・ストップテイル・ブリッジ(画像はピエゾPU付き)です。

プレートタイプのフィックスド・ブリッジは、高い安定性と明確なアタック感が魅力です。

プレートスタイル・ブリッジは、複雑な音響干渉を抑え、明瞭なアタックとサスティンを両立するために設計されており、安定したピッチとPRSのモダンなトーンキャラクターを得るのにお勧めです。

目次に戻る

アクセサリーのセレクト

ハードケース

Private Stockのハードケースは下記の2種からセレクト可能です。

Brown Paisley(インナーカラー:Burgundy)

Black Paisley(インナーカラー:Black)

このケースを開けるたびに、特別な高揚感と所有する喜びを感じていただけます。

ホロウボディモデルは専用のシェイプ型ケースに収められます。
(以前使用されていたトーレックスタイプのブラウンウェスタンケースは選択不可)

Certificate(証明書)

こちらはオーダーした楽器が手元に届いてからの話ですが、セレクトしたスペックやオプション内容が記載されたCertificate(証明書)が付属します。
この証明書が原本ですので、紛失しないようご注意ください。
万一に備えて、コピーを取って保管されることをおすすめします。

目次に戻る

まとめ

PRS Private Stockのカスタムオーダーは、「自分のギター観を一枚のキャンバスに描く」ような体験です。

仕様書に記された数字や材の名前の裏側には、プレイヤー自身のストーリーが宿ります。
もし“自分だけの理想”を明確にしたいと感じているなら、Private Stockという選択肢はその第一歩になり得るのではないしょうか。

ここまで、長文にお付き合いいただき、誠にありがとうございます。
本記事が皆様のギターライフが豊かになる一助になれば幸いです。

なお、カスタムオーダーにご興味があるお客様は下記ボタンのフォームよりお問い合わせください。
お申し込みを確認次第、静岡パルコ店より内容お伺いのご連絡を差し上げます。

購入前提である必要はございませんので、「自分の理想の仕様が実現できるのか?」「Private Stockって格好良いな」とお思いになられましたら、お気軽にお申し込みくださいませ。
皆様のお問い合わせを心よりお待ちしております。

平林 大一プロフィール

埼玉県出身。現在は静岡県に移り住んで15年が経過。
趣味は釣りとワインで、自然の中でリラックスする時間や美味しいワインを楽しむのが大好き。

2024年現在、PRS USAファクトリーでのオーダーやGIBSONナッシュビルでのバイヤー業務、国内外のギター・ベース、アンプやペダルのオーダーに携わっている。

所有楽器はPRS Private StockやAMPをはじめ、Fender 1963 Stratocaster、Gibson CS LP、Ken Smith BSR5、Vintage Ibanez & Maxonなど多岐に渡る。

  • ブックマーク