別室 野原のギター部屋 Vol.47 “現地カスタムショップで保管されていたレスポールのボディ”

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別室 野原のギター部屋 Vol.47 “現地カスタムショップで保管されていたレスポールのボディ”

記事中に掲載されている価格・税表記および仕様等は予告なく変更することがあります。

皆様こんにちは。島村楽器別室 野原のギター部屋管理人の野原です。

2023年10月初旬、以前の記事でご報告差し上げた通りテネシー州ナッシュヴィルにあるギブソン社を訪れました。Gibson Brands Partner Experience in Nashville, TNと呼ばれる日本国内のギブソン正規ディーラーが参加するツアーで、現地視察、現地スタッフの方々とのミーティング、完成品の買い付け、木材の選定やオーダーが主な内容になります。
※詳しいツアーの様子はVol.34Vol.35 “Gibson Brands Partner Experience in Nashville 2023 現地レポート”をご覧ください

ツアーではギブソン社の全ての施設を訪れるのですが、カスタムショップに入ってすぐのウッド・セレクション・ルームでとても魅力的なものを見付けました。

画像の一番左に写る1959レスポール・リイシューのボディです。まだピックアップ・キャビティがあけられていない状態ですが、フレックや杢の表情がとても印象的です。

M2MやPSLでオーダーする際に使用する材は画像右のような板状のものから選定するため、既に木工加工の進んだこのボディは海外ディーラー用、またはサンプルや特別な何かかと思っていましたが、ツアーの最後に日本ディーラーに提供してくださることとなりました。

提供されるのボディは画像の4つ。あみだくじで購入できるディーラーと選択順を決めることになったのですが、見事に一番を引き当て、第一希望の個体を手にすることができました。

公式サイトに掲載される1959レスポール・スタンダード・リイシューのサンプル画像であればフレックの少ない均整の取れた杢のファクトリー・バーストあたりが選ばれそうですが、私の中でこの個体はその逆のイメージ。目の前で感じたインスピレーションをもとに、その場でカラーや仕様をスタッフの方にお伝えし正式にオーダーしました。

皆様はこのボディを見てどのような完成後の姿をイメージされますでしょうか。

そしてオーダーから約11ヵ月の今日、遂に完成した1959レスポール・スタンダード・リイシューがナッシュヴィルから届きました。

現地選定ボディを使用したこだわりのM2Mオーダーモデル、早速一緒に見ていきましょう。

M2M 1959 Les Paul Standard Reissue Murphy Lab Heavy Aged Dirty Lemon

私が選んだカラーはダーティ・レモン・カラー。オリジナルであれば長年使用されてきたであろう姿を、強く焼けたカラーとマーフィー・ラボのヘヴィ・エイジドで表現しました。ボディ全体を覆う杢とフレックが織りなす表情がより魅力的に映ります。

基本的なスペックは最新の1959レスポール・スタンダード・リイシューに準じますので、今回は文章よりも画像(視覚)でお楽しみ頂けたらと思います。

最近はVOSやウルトラ・ライト・エイジド、ライト・エイジドの入荷が多かったため、ヘヴィ・エイジドのレスポールは久しぶりに見た様な気がします。ヘッドストック・エッジ部の傷の入り方、量ともに理想的です。

掠れた”Les Paul MODEL”のシルクスクリーンもこの個体に合った良い残り具合です。トップコートの焼けによる”Gibson”ロゴの色味もとても自然に見えます。傷だらけのヘッドストックの中で老舗の品格を感じる部分でもあります。

マホガニー部のカラーはボディ・トップの焼け具合に合わせて、褪色したチェリー・カラーに仕上げられています。少し残るアニリンダイの赤とマホガニー材によるデリケートなカラーが素敵です。

チューナー(ペグ)は年代に準じたシングル・ライン。1959年頃のクルーソンはボタンがシュリンクし壊れてしまうため物凄く扱いに気を遣いますが(壊れる前に交換し、オリジナルは保管しておくのが一般的ですが)、リイシューは気軽に使用できるのが良いです。

シリアル・ナンバー付近に光が反射してウェザーチェックが見えると思いますが、表も裏も満遍なく入っています。

指板には色味の濃いローズウッド(Dark Indian Rosewood)を指定しました。肉眼で実物を見ると画像よりも多少明るく茶色いですが、近年のものの中では十分に濃い色味だと思います。ちなみに指板オイルは塗布していない状態です。指板オイルの使用量や頻度には様々な考え方がありますが、私は必要最低限、最小量に留めています。

マーフィー・ラボの指板サイドはロールド・バインディング仕様となっています。ヴィンテージのような滑らかな握り心地です。

マホガニー、バインディング、ボディ・トップのコントラストが美しく、サイド・ポジション・マーカーのベッコウ柄も良いアクセントになっています。

ネック裏の様子。1弦側は木部が露出しています。2〜3フレット辺りにピークがあるところなどを見ると、使用を想定した丁寧なエイジングである事が分かります。部分的なトップコートの消失によるバインディング・カラーのグラデーションが良い雰囲気です。

掌が当たるネック・ジョイント付近、1弦側のボディの角の塗装が擦れて無くなり、マホガニーが露出している様子が再現されています。

ボディ・バック全体の様子。まず存在感のあるベルトのバックルによる傷に目が行きますが、コントロール・キャビティのエッジ部など細かい部分にも丁寧なエイジングが施されています。

エッジ部にも木部の露出した傷が再現されていますが、ボディ側面も含め様々な質感の傷がつけられています。ギブソン初のエイジド・モデルは1999年に発売されますが、マーフィー・ラボの登場で飛躍的に再現度が上がりました。

カッタウェイ部の画像。現地でボディを手にした時には気付きませんでしたが、マホガニーとバインディングの間に見えるメイプル材にも綺麗な杢が出ています。個人的にかなりお気に入りのポイントです。

パーツ類はトゥルー・ヒストリック仕様のもの。ヘヴィ・エイジドはウルトラ・ライトとライト・エイジドに比べて一段強いエイジングが施されたパーツが使用されています。

ピックアップにはアルニコ3マグネットを使用したカスタムバッカーを搭載。弾き手のダイナミクスを忠実にアウトプットするオリジナルPAF(PATENT APPLIED FOR)を再現したピックアップです。近年のピックアップ・カバーは形状も良い感じですね。

ABR-1ブリッジとストップ・バー・テールピースなどの金属パーツにも一段強いエイジングを施したヘヴィ・エイジド用のものが取り付けられています。

トゥルー・ヒストリックでは本体のみならずパーツ類も一新され、よりリアルな形状、質感のものになりました。このコントロール・ノブも以前より操作感がリアルになりました。

コンデンサ(キャパシタ)はLuxe 0.022μF Bumblebeeレプリカが搭載されています。

ピックアップ・セレクター・スイッチ越しに見るアーチの形状も美しいです。

バインディングのエッジ部のトップコートが摩耗で無くなり、部分的に地の白色が見えています。メイプルとバインディングの間の塗装の割れなど、遠目では気付かないような細かいところにも緻密なエイジングが施されています。

ここからは様々な角度から撮影しました美しいボディ・トップの表情をご堪能ください。

今回は現地選定ボディを使用したM2Mオーダーモデルをご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。

現地カスタムショップでこのボディと対面した時、様々な場所で演奏され続けてきた貫禄あるレスポールをイメージしましたが、期待以上の姿で再会することができました。

エイジド・モデルは経年変化が楽しめないように思われがちですが、これから演奏を重ねる事でネック・グリップのアニリンダイはフェイドし、新たな傷が増え、トップコートが焼けて益々リアルで魅力的な一本になると思います。既に見た目に引けを取らないサウンドですが、こちらも将来が楽しみです。

今回の記事に登場しましたM2M 1959 Les Paul Standard Reissueの詳細につきましては、この下にご用意させて頂きました商品ページをご覧ください。それでは今回はこの辺で

ギター部屋の管理人

野原 陽介プロフィール

学生の頃よりバンド活動、レコーディングなど様々な場所での演奏とヴィンテージギターショップ巡りに明け暮れる。
のちにギタークラフトを学び、島村楽器に入社。
入社後は米国Gibson社、Fender社への買い付けなどを担当。
甘いもの好き。

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