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別室 野原のギター部屋 Vol.5 “Gibson Historic Collection Les Paul Reissueの仕様遍歴と60th Anniversary 前編”

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別室 野原のギター部屋 Vol.5 “Gibson Historic Collection Les Paul Reissueの仕様遍歴と60th Anniversary 前編”

記事中に掲載されている価格・税表記および仕様等は予告なく変更することがあります。

皆様いかがお過ごしでしょうか。今回は、数々の名演を紡いできた名機1959 Gibson Les Paul Standardの誕生から60周年となる2019年にリリースされた、60th Anniversary 1959 Les Paul Reissue及び、それに準ずる仕様を持つ1958 Les Paul reissueと、そこに至るまでのHistoric Collection(Vintage Reissue)の仕様遍歴について綴ってみたいと思います。

まずはHistoric Collection(ヒストリックコレクション)についてです。

皆様もご存じの通り、1958-1960年に製造されたオリジナルのレスポールスタンダードはその特有のサウンドやルックスにより世界中のギタリストを魅了し、生産本数約1,500本という希少性の高さから最も入手することが難しいヴィンテージギターの1本となりました。

この通称Burstと呼ばれる1958-1960年製のレスポールスタンダードを筆頭に、1950年代~1960年代の主要モデルをGibson Custom Shop(Nashville Factory)で忠実に再現したシリーズがHistoric Collectionで、1993年の発売以降も幾度となく仕様の見直しが行われ、Reissueモデルとして完成度を高めていきます。

Historic Collection~True Historic 主な仕様遍歴

1960年を最後にレスポールはSGシェイプへと姿を変え、1968年の再生産が開始されるまでその姿を消します。1968年に再生産されたレスポールはP-90を搭載したゴールドトップで、強いて言うのであれば1956年(~1957年)製のレスポールに近い仕様でした。翌年以降は更に仕様変更が繰り返され、多くのギタリストが探していた1958-1960年製のレスポールからは仕様が大きく離れていきます。

そんな中、アメリカの各ディーラーが1959 Gibson Les Paul Standardに近い仕様をオーダーしたのがVintage Reissueの始まりと言われています。Jimmy WallaceやLeo’s Vintage、Guitar Traderなどが有名ですね。その後GibsonからLes Paul Reissue(1984)が発売され、1991年にはEdwin Wilson氏とTom Murphy氏が開発に携わりました。こうしてGibsonは、1993年のNAMMで本格的なVintage ReissueであるHistoric Collection 1959 Les Paul Reissueを発表します。

1991年Summer NAMM

  • Korina Flying V Reissue、Korina Explorer Reissueのプロトタイプが出展される

1993年1月NAMM

  • Historic Collection 1959 Les Paul Reissue発表

1993年

  • Historic Collection発売開始

1999年 40th Anniversary

  • ボディトップカーヴィングのリファイン
  • ヘッドストック及びボディのシェイプを変更
  • ピックアップ、ブリッジ、テールピース、コントロールの位置を変更
  • バインディングの厚みを変更
  • ネックジョイント位置(カッタウェイ部)修正
  • サンバーストカラー、バックカラーのリファイン
  • 1959モデルにブラウンケースのレプリカが用意される
    (代理店にハガキを送り、後日送られてくる)

2001年

  • 指板サイドマーカーにトートイスシェル(べっ甲)タイプを採用
  • アルミニウムテールピースの採用
  • 従来より厚みの薄いシンバインディングの採用

2002年

  • フレット形状変更
  • ノンワイヤーのABR-1ブリッジを採用(2002後半~2003年にワイヤード)
  • ピックアップ:57 Classic(前期)Burstbucker(後期)
  • Historic Collection用シンジャックプレート、シンSWプレートを採用

2003年

  • ブラジリアンローズウッド指板を採用したモデルをリリース
    (前期675本のみの仕様。国内代理店保証書製品名の末尾にBZF表記)
  • ネックシェイプをリファイン
  • ピックアップ:Burst Bucker Type1&2
  • コンデンサーをサークルDからBummblebee(レプリカ)へ変更

2004年

  • Custom Authentic(Glossよりも艶のない塗装の仕上げ、くすませた金属パーツを搭載)を発売

2005年

  • ボディバックのアニリンダイフィニッシュが終了

2006年

  • VOS(Vintage Original Spec)フィニッシュが用意される

2009年 50th Anniversary

  • ピックガードのビスがプラスからマイナスに変更
  • トラスロッドカバーの位置を修正
  • ペグの取り付け位置修正
  • ヘッドシェイプを修正
  • リテイナーの無いABR-1ブリッジを採用
  • ネックシェイプ変更
  • デルリンナットを採用

2013年

  • ネックジョイントにハイドグルー(膠)を使用
  • チューブレストラスロッドの採用
  • ボディバックのカラーを変更(アニリンダイフィニッシュの再開)
  • 「フィラー→カラーリング」から「アニリンダイ(染料パウダー)+フィラー→トップコート」
  • テールピースのスタッドボルトを、ヴィンテージ(1959年頃)と同サイズのもの(ロングスタッドボルト)に変更
  • ペグボタンを半透明のものに変更
  • ピックアップにCustom Buckerの採用
    (アルニコ3マグネットのサイズやワイヤーのマテリアルを改修したピックアップ。フロント8.0kΩ リア8.5kΩに設定)
  • セルロースインレイ(ポジションマーク)を採用
  • バインディングの色味が乳白色になる
  • Collector’s Choiceを発売(Collectors Choice #1 Melvyn Franks 1959 Les Paul Standard)

2014年

  • 指板の接着にハイドグルー(膠)を採用
  • Historic Collectionの販売終了

2015年 True Historicシリーズの発売(~2018年)

  • Edwin Wilson氏をプロジェクトリーダーとし、これまで生産効率やコストの事情で成しえなかった部分にまで着手
  • 生産本数はヒスコレの約30%未満
    (年間生産本数1958モデル:300本 1959モデル:800本 1960モデル:200本)
  • Double Carved Top:CNCルーターでのトップ削り出しを粗削りとより繊細な削り出しの2回行い、職人の手作業で仕上げる
  • ボディシェイプと厚みの見直し(ネック側からエンド側に向けてボディ厚が薄くなるテーパードボディを採用)
  • ストラップボタン(ストラップピン)の位置の見直し
  • 指板のバインディング(指板エッジ)を滑らかに丸めるロールドバインディングを採用
  • より当時に近い形状と細さのフレットを採用
  • 1950年代のパーツを裁断、分析し、プラスチックパーツの改修を行う
  • ペグのプラスティック部分に、製造過程で発生する折られた跡を再現
  • ピックアップカバーを改修(形状、メッキの厚みなど)
  • トップ材のメイプルとバック材のマホガニーの接着にハイドグルー(膠)を採用
  • ヘッドべニア(突き板)の厚さを従来よりも薄いものへと変更
  • 塗装に従来より硬度が高いラッカーを使用
  • VOSフィニッシュよりも艶のあるヴィンテージグロスフィニッシュを採用

※Historic Select(~2016年):True Historicをベースに、現地ナッシュビルファクトリーでディーラーとギブソンスタッフが選定した材を採用したモデル。「HS」から始まるシリアルNo.を持つ
※Standard Historic:2014年に終了したHistoric Collection仕様のReissue。「R」から始まるシリアルNo.を持つ
※Custom Core(~2016年):50s Style Les Paul、Les Paul Customなど、ショートテノンネックを採用したシリーズ。「CS」から始まるシリアルNo.を持つ

2018年

  • True Historicが終了
  • True HistoricパーツやCustom Buckerを引き継いだHisotric Collectionが始動

2019年60th Anniversary 1959 Les Paul Standard発売

現在のVintage Reissueの礎となるTrue Historicまでの仕様遍歴をまとめてみましたが、いかがでしょうか。

発売当初のヒスコレは、スイッチプレートやジャックプレートなどがレギュラーライン(当時のLes Paul StandardやLes Paul Classic)と共通のものを使用していたり、テールピースがアルミではなかったりと現在ほどの再現度ではなかったため、The Beauty of the Burst(リットーミュージック)を眺めては1950年代のパーツやサードパーティ製のパーツを探し交換されていた方も多いのではないでしょうか。

もちろん私もその一人で、ペグや金属パーツ、プラスティックパーツを年代物や再現度の高いレプリカに替えたりしました。更なるリアリティを求める熱心なファンにモディファイされることも少なくなかったヒスコレも、月日とともに進化をし続け、いよいよ満を持して60th Anniversary 1959 Les Paul Standardが発売されることとなります。

60th Anniversaryの細かい仕様や特徴については、次回Vol.6 Gibson Historic Collection Les Paul Reissueの仕様遍歴と60th Anniversary その2でご紹介したいと思います。

ギター部屋の管理人

野原 陽介プロフィール

学生の頃よりバンド活動、レコーディングなど様々な場所での演奏とヴィンテージギターショップ巡りに明け暮れる。
のちにギタークラフトを学び、島村楽器に入社。
入社後は米国Gibson社、Fender社への買い付けなどを担当。
甘いもの好き。

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