悲しい事故を乗り越える事は出来るのか|ルシアー駒木のギターよもやま話 その135

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悲しい事故を乗り越える事は出来るのか|ルシアー駒木のギターよもやま話 その135

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皆さまこんにちは。
それにしても暑い日が続きますねえ。
皆さん、アイスの食べすぎには気を付けて下さいね~

氷菓子は絶対頭がキーンとなる

ルシアー駒木です。

名古屋出張は楽しく終わるはずだった。。。のに

ルシ駒、あのパンデミックを境に出張はめっきり減りました。

とはいえ、今でもそこそこ出張は多いほうの部類に入ると思うのですが、その出張先の中でも割と名古屋って行く機会が多いんです。

櫃まぶしに味噌カツ、きし麵にあんかけスパ、台湾ラーメンに
・・・いやいや、
決して食べ物が目的って訳じゃ無いです

まじめに仕事。

名古屋には愛弟子といってもいい店頭リペアマンもいますし、西のリペア拠点名古屋ギター&リペア店もあります。

研修地としていく事もありますし、入社試験会場が工房で私は試験官として、なんて出張もあります。

つまり、定期的に出張があるって事です。
いつも楽しい名古屋出張

でも今回の出張は違ったんです。。。

愛するJIMMYWALLACEが

出張の目的を終えた帰宅前、スタッフ皆さんにご挨拶でもと立ち寄った名古屋パルコ店

スタッフの加藤さんが声をかけてきました。
「ルシ駒さん、ちょっといいですか?」
心無し、浮かない顔をしているようです。

「ちょっとこのギター見て欲しいんですよ。」

「勿論いいですけど、どうしたんですか??
「まあとりあえず見てもらって、、、」

「おお、このケースはJIMMYじゃないですか、、どれどれ」

「ああ、この個体ですね~これカッコいいですよね~」

「で、これがどうかしたんですか??
これヘッドもいい顔してるんだよな~」

「・・・って、あああ!!!」

折れてる!!!

「そうなんですよ涙、運送事故で。。。」

「運送事故!厳しいなあ~」

「それで困っちゃって。とりあえず何もする前に駒木さんに見てもらおうと思って。」

「悲しいですけど、でもこのままって訳にはいかないですもんね」

「わかりました!
これは私がお預かりしましょう!」
加藤さん「お願いします!」

そして浅草橋

改めて見てみると、
まずはこのバックリ割れてるのが目立ちますが、

その深い割れに留まらず

良く見ると割れは幾つも入っており、結構複雑です涙

直し方自体は過去のブログをご覧頂ければと思いますが、

ネック折れには様々な手法がありますが、今回のポイントは

  • ネック折れを丈夫に修復するほどに音質が変わってしまう問題
  • 見た目に綺麗に直したい

の2つです。
JIMMYらしさを感じる特有の倍音比率を如何に変えずに直せるか、は
修理箇所を丈夫にしなければならない物理的な強度と相反する事ですが、これこそルシ駒の腕の見せ所です。

そして実はルシ駒、修理箇所を「修理したかどうかわからないようにする」のは個人的にはあまり好きではありません。

これは技術的に出来るか出来ないかという話ではなく、「ネックが折れて、直した」というのもその楽器の歴史の一部だと思うので、修理痕が勲章のように残っていてもカッコいいよなあ、、、と思っているので、敢えて痕があってのいいのでは?という感じですね。

ただ、それは持ち主さんがいて、の話。
今回のは運送事故ですから、修理履歴が見えないようにする方がよさそうです。

さてさて、ルシ駒、どんな仕上がりにできるか!?

後編に続きます!!

ルシアー駒木でした!

ルシアー駒木プロフィール

テクニカルチーフとして島村楽器のギターリペア工房に勤務。

アーティスト用・雑誌掲載用などオーダーメイドでの楽器製作を行なってきたキャリアを活かし、お客様の楽器の修理・改造業務を主としながら、海外への買い付け業務や楽器開発協力、世界各国の工場で技術指導も行う。
その実力はアメリカやスウェーデンをはじめとした海外のアーティストから、スペインの伝統的なギター製作現場まで高い信頼を得るほど。

修理・改造業務の他、エレクトリックギターやベース、アコースティックギターの入門書やメンテナンスDVDへの解説出演、ラジオ「SAME’SBAR」への出演など、広い活動の場を持つ。

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