物凄い陥没事故 その1|ルシアー駒木のギターよもやま話 その34

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物凄い陥没事故 その1|ルシアー駒木のギターよもやま話 その34

記事中に掲載されている価格・税表記および仕様等は予告なく変更することがあります。

皆様こんにちは!

髪を切ってもいつも誰にも気がついてもらえない、


ルシアー駒木です。

さて、意外(笑)と内容の幅が広いルシ駒ブログですが、今回は久しぶりに大手術となった楽器をご紹介したいと思います。
そういうの待ってました、って人もいますよね!

届いたのはこちらの楽器

おお!

カッコイイ

寄ってみましょう!

指板下のプレートに「Y・NARUSE」の刻印!

この楽器、元々は言わずと知れた名プレイヤー鳴瀬喜博氏の所有品との事。


裏面にはサイン入り!!!

消えないようにフィルムで保護されています。
これは貴重な1本ですね。

年月を経た楽器なので全体に細かなクラックが入っており、それは問題なく、むしろカッコよいのですが、、、

、、、おやっ?

その中に混じって、、大きな割れ目があります。

改めて表面を見ると、表にも、、、

かなりの割れ方です。

そしてボディエンドを見てビックリ!!!
ΣΣ(゚д゚lll) グムム

これ割れすぎでしょう!!!

しかも陥没してる!!!!

これは大変な事態です

一体この楽器に何が起きたのでしょう。「割れ」という症状そのものは様々な楽器・様々な状況で届きます。しかし、陥没まで複合しここまで酷い状態の個体はなかなかありません。
他モデルと比較し、割れれば陥没する可能性の高い内部構造ではあるのですが、
とはいえ、かなり強烈な一撃でなければここまではいきません。これはオーナー様のショックも相当なもののはず。。。

オーナー様は「ルシ駒に」と仰って下さったそうですし(有り難う御座います)、 受付を担当した店頭のスタッフも私のよく知る人物で店長。

しかも鳴瀬氏の手から現オーナー様の手に渡ってきた希少な1本。

これはルシ駒、期待を裏切るわけにはいきません。

陥没箇所は勿論ですが、その他の割れ部分も含め木材がささくれており、そのままでは手でグッと押してみても密着しません。隙間が酷い。。。段差もあります。。。

そこで、まずはささくれた木繊維を、久々登場!の手術用メスで丁寧に整えていきます。

指で押して、密着度合いを確認しながら、丁寧に進めていきます。

徐々に整ってきました(笑顔)
しかしこの陥没箇所は本当にスゴイですね

先日、とある店舗に出張した際、お取引先の方とお話をしました。私のブログの話になったのですが、「ルシ駒さん、少しはリペア方法秘密にしてもいいんじゃないですか(笑)?意外と皆さんこっそり見て参考にしてますよ~」と仰っておりました。

という事なので、ここだけ内緒の(笑)テクニックを駆使し、陥没を引っ張り出します!

どうですか!完璧でしょ!

陥没木材が出てきました。

しかし一難去ってまた一難、ボディトップとバックの大きな縦割れを見ると、かなり割れ目が開いてしまっており、クランプで押さえてもこれは無理そうです。

こんな時もルシ駒は慌てません。

使うのはこちら。

自転車のタイヤチューブ
近所の自転車屋さんでもらったものです。

これを適度な長さで縛って、止めてみます。

確認してみると、、、

うーん、、少しは狭くなりましたが、これではまだダメです
チューブを縛り直して、更に力を強くしてみます。

これでどうかな・・・

・・・おっ

いい感じ!

よしよし、これならよさそうです

クランプも合わせて、仮止めをしてみましょう。

隙間はと、、、

隙間なし!バッチリ

それでは仮止めを外して、接着していきましょう。

適したボンドをチョイスし、丁寧に隙間に流し込んでから

道具まで接着されてしまわないよう(笑)油紙を巻きつけて、まずはゴムチューブ固定。

そしてクランプで止めていきます。

因みに、今回は特別な楽器。
塗装の段階である程度の解体は必要になりますが、極力オリジナルの状況を残したいので、現段階では最小限でしか楽器をバラさず進めています。

割れ目を確認すると、、
端の方の割れ部にまでボンドが行き渡り、染み出しているのが確認出来ますね!

うまくいきました

まだまだ先は長い修理ですが、

まずは大きな山を越えることが出来ました。

今回はひとまずここまでにしておきますね。次回後半作業もお楽しみに!!

ルシアー駒木でした

ルシアー駒木プロフィール

テクニカルチーフとして島村楽器のギターリペア工房に勤務。

アーティスト用・雑誌掲載用などオーダーメイドでの楽器製作を行なってきたキャリアを活かし、お客様の楽器の修理・改造業務を主としながら、海外への買い付け業務や楽器開発協力、世界各国の工場で技術指導も行う。
その実力はアメリカやスウェーデンをはじめとした海外のアーティストから、スペインの伝統的なギター製作現場まで高い信頼を得るほど。

修理・改造業務の他、エレクトリックギターやベース、アコースティックギターの入門書やメンテナンスDVDへの解説出演、ラジオ「SAME’SBAR」への出演など、広い活動の場を持つ。

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