皆様こんにちは。島村楽器別室 野原のギター部屋管理人の野原です。
皆様が一番最初に憧れたギブソンのエレキギターは、どのモデルでしたでしょうか。私はサンバーストのレスポール・スタンダードで、恐らくこの先もずっと憧れ続けるのだろうなと思っています。
そんな私ですが、それと同じぐらい大好きなモデルがあります。
「プロフィール写真で構えてるES-335?」
もちろんセミアコも好きですが、実はフライングV好きでもあります。今回は一目惚れして仕入れてしまった素敵なフライングVを皆様にご紹介したいと思います。
Gibson Custom Shop 1967 Flying V w/Vibrola Sparkling Burgundy

アメリカ合衆国初の有人宇宙飛行計画「マーキュリー計画」がスタートした1958年にフライングV(Gibson 1958 Korina Flying V Reissue 画像)はデビューしましたが、あまりに時代の先を行く未来的なデザインだったため人気が得られず、翌1959年に生産が終了します。当時はその奇抜なルックスから、通りに面した楽器店のショーウィンドウに飾られたりもしていたようです。
その後アルバート・キング、ロニー・マック、キンクスのデイヴ・デイヴィス(敬称略)などの使用もあり、フライングVは1966年9月にギブソンの広告(promotional sheet)に姿を現し、再び生産されることとなります。
1966 Gibson promotional sheet
Re-introduced because of popular demand, the sensational Gibson “Flying V” features everything today’s guitarist needs to get the full, big sound he demands. Plus the excitement of great eye appeal in the revolutionary body style. A quality Gibson instrument with all the deluxe Gibson features in rich Cherry or Sunburst finish.
再生産に際して一新された当時(1967年)の仕様、サウンドを忠実に再現したモデルが、今回ご紹介するGibson Custom Shop 1967 Flying V w/Vibrolaとなります。

1958~1959年に製造されたフライングVにはSkylark(ラップスティール・ギター)などにも使用されていたレイズドロゴと、ベル型のトラスロッドカバーがヘッドに取り付けられていましたが、1967年モデルはメーカーロゴが印字されたフライングV専用デザインのトラスロッド・カバーが採用されています。トラスロッド・カバーはピックガードと同じ材で製作されており、白/黒/白/黒の4プライ構造となっています。が、確か1960年代のフライングVは白/黒/白の3プライだったような。
外して裏返したり、注意深く観察しない限り大きく違和感を覚えるようなものではありませんが、一応オリジナルと現行品の特徴という事で触れさせて頂きました。
オリジナルの多くのビスは画像の様なパン・ヘッド・スクリューを使用していますが、黒いフラット・ヘッド・スクリューを使用しているものもございます。

ペグは1960年頃より採用されている2コブペグが再現されています。オリジナルのギアボックスは年代に準じて2列刻印ですが、リイシューは1964年途中まで使用されていた1列刻印仕様となっています。

指板はインディアン・ローズウッド。インレイはオリジナルに準じてパーロイドのドットです。
1960年代のフライングVは35本を5バッチ(バッチ生産=1つの品種の、ある程度の量を、まとめて生産する方式)、計175本生産されたという説が一般的ですが、このバッチ毎にスペックが異なります。ヒールの形状もその一つで、この1967 Flying V w/Vibrolaの形状はオリジナルのバッチ#2~#3初期辺りに近いように見えます。
ネックグリップはオーセンティック’67 ミディアム・ C-シェイプを採用。
レス・ポールなどに比べてヒールの面積は大きいですが、ボディ厚よりも薄いためハイフレットの演奏も問題なく行えます。ネックとボディのジョイントには、オリジナルに準じてハイドグルー(膠)が使用されています。
ピックガードの断面を意識して撮影した画像です。4プライ構造になっているのがお分かりになりますでしょうか。
ピックアップは定評のあるカスタムバッカー(アルニコⅢマグネット)を採用。1958~1959年のフライングVはマウント・リング(エスカッション)を介してピックアップが取り付けられていましたが、1960年代はピックガードに取り付けられています。ピックガードのデザインも大きいものへと変更されています。
1967 Flying Vの大きな特徴の一つ、ヴァイブローラ・テイルピース。ルックスの良さも然ることながら、スタッド・テイルピースにはない特有の高音域の鳴り方が魅力的です。
ヴァイブローラ・テイルピースを横から見てみましょう。湾曲させた薄い鉄板をしならせることで、音程に変化を与える構造になっています。これだけ薄いと軽く柔らかいアーミングを想像される方がいらっしゃるかもしれませんが、一般的なシンクロナイズド・トレモロとさほど変わりません。
ボールエンドが溝に納まるシンプルな構造。ヴァイブローラ・ユニットは手前に見えます3本の木ネジで固定されています。

アームはシンクロナイズド・トレモロと同様に360度回転します。ビグスビーもそうですが、個人的に写真を撮る際のアームの位置はこれぐらいの角度が好きです。
アーム先端に取り付けられたキャップは握り易い形状にデザインされています。古くはマンドリンから始まった老舗ブランドのセンスを感じます。
コントロール・ノブは年代に準じてメタル・インサートのトップ・ハット型が採用されています。1967年はソンブレロ型が出始める年で、後にフライングVを含む全てのギブソン・エレクトリック・ギターのノブがソンブレロ型になっていきます。トグルSWのチップも年代通り白色です。
1958~1959年のフライングVのピックガードにはVolとTone、セレクターSWのみが取り付けられていましたが、1967年に登場したこちらのモデルは、ピックアップを含む全ての電気系パーツが取り付けられています。
1966年頃からSGもラージ・ピックガード仕様に変わり、ピックガードにピックアップをマウントしていますので、当時のギブソン社がより強く生産効率の向上を意識していたことが伺えます。
1967年に発売されたフライングVには、スパークリング・バーガンディ、サンバースト、チェリー、ウォルナットの4色が用意されました。私だけかもしれませんが、スパークリング・バーガンディはES系のカスタム・フィニッシュとしても知られるカラーですので、少しレアな雰囲気を感じます。
今回はGibson Custom Shop 1967 Flying V w/Vibrolaをピックアップしてみましたが、いかがでしたでしょうか。
フライングVというとハードロックやメタルといったジャンルを連想される方も多いのではないかと思いますが、レス・ポール・モデルよりも腰高で軽快に鳴るそのサウンドは大変使い勝手が良く、個人的には様々なジャンルにフィットするギターだと思っています。
一般的に言われている通り、初めて座って弾いた時に弾き辛さを感じると思いますが、コツを掴んで一度慣れてしまうと普通に弾けます。シェイプがシェイプなので手に取る前から苦手意識をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、立って弾いた時のシルエットの良さ、軽さ(この個体は3.06kgでした)、サウンドは抜群ですので、ぜひ一度店頭でお試し頂ければと思います。
今回の記事に登場しました1967 Flying V w/Vibrolaの詳細につきましては、この下にご用意させて頂きました商品ページをご覧ください。それでは今回はこの辺で。