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別室 野原のギター部屋 Vol.27 “Murphy Lab 1964 ES-335と1964-1965年製のES-335TDC”

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皆様こんにちは。島村楽器別室 野原のギター部屋管理人の野原です。

ギブソン・ヒストリック・コレクションのエイジド製品を、新たな領域に引き上げるプロジェクトとして立ち上げられたMurphy Lab。その特別なラッカー・プロセスとエイジング作業によって仕上げられた製品たちは、世界中のファンに高く評価され、歓迎されました。

今回はUltra Light AgedのMurphy LAB 1964 ES-335 Reissueと、1964年に製造され1965年に出荷されたヴィンテージのES-335を比較してみたいと思います。

6年前に執筆しました別室 野原のギター部屋 Vol.2〜3では1964年製のES-335と2015年製の1963 ES-335 Reissue(Memphis Factory)を比較しておりますので、あわせてご覧になりますとリイシューの変貌もお楽しみ頂けるかと思います。

*Gibson Custom Shop Murphy LAB 1964 ES-335, 1964-1965 Gibson ES-335TDC

早速並べてみました。向かって左がMurphy LAB 1964 ES-335、右が1964-1965 Gibson ES-335TDCです。右のオリジナルは使い込んでいる個体なので流石に見分けはついてしまうかもしれませんが、Muphy Labはコンディションの良いオリジナルを見ているかのような見事な佇まいです。

Headstock



画像は上がオリジナル(ヴィンテージ)、下がMurphy Labになります。

2019年以降、リイシューのヘッドにはよりオリジナルに近い丸みを帯びたギブソン・ロゴが入れられています。この形状になってから雰囲気が格段に良くなりました。

ヘッドストック中央に入れられたクラウン・インレイもアウトラインとスリットの幅がアップデートされています。Vol.3で取り上げた2015年製と比べると分かりやすいと思います。

Machine Head



オリジナルはギア・ボックスに2列の刻印、対してMurphy Labは刻印が1列になっています。Klusonは1964年の途中に1列刻印から2列刻印になりましたので、時期は違えど双方とも年式に合った仕様となっています。

シャフトの長さもほぼ同じなので、ヘッドストックを正面から見た際のペグ・ボタンの位置も良い感じです。

Headstock thickness



以前拝見しました楽器店さんの記事に習って、今回は採寸をして比較してみます。

まずはヘッドストック上側の厚みから。オリジナルが約13.5mmでリイシューは約13.8mm。0.3mm程差がありますが、ほぼ同じ厚みと捉えても差し支え無いと思います。


続いてヘッドストック下側の厚みを測ってみましょう。オリジナルが約13.3mmなのに対して、リイシューは約15.0mm、その差約1.7mmと双方に違いが見て取れました。

ギブソンは昔から先端にいくにつれて薄くなるテーパード・ヘッドストックを採用していると言われていますが、必ずしもそうとは言えないのかもしれません。サンディングによる個体差の可能性もあるので、確実なことは言えませんが。

Fingerboard



指板にはスモール・ブロック・インレイが施されています。大きさを測りましたが、双方とも同じサイズでした。

こうして並べてみると、バインディングの厚みや色味の再現度の高さを改めて実感することができます。ロールドバインディングによるヴィンテージギターさながらの滑らかな握り心地も特徴の一つとなっています。

余談になりますが、オリジナルはリフレットされていますので、フレットの端がバインディングの上に乗っています。ご存知の方が大半だとは思いますが、バウンド・ネックのギブソンのリフレットを見極める際に参考にするポイントです。

Horn and Pickguard



1964年からやや丸みの少なくなったタイプのホーンになりますが、このオリジナルはかなり丸みを帯びています。1965年出荷なので1964年後期に製造されたものと考えるのが自然ですが、そうだとすると少し珍しい形状を持った個体と言えます。リイシューは1964年当時の一般的な形状を再現していますので、所有するもう一本の1964年製とも比較して確認をしてみましょう。

こちらをご覧頂きますと、やや丸みが少ないのがお分かりになるかと思います。

リイシューの方が細身に見えますが、これはボディの幅の違いによるものだと考えられます。ボディの幅とはどの部分かと言うと、正面から見た時の「ホーンの一番外側から反対側のホーンの外側まで」と、「ボディのくびれが一番絞られている部分」の横幅のことで、この幅がリイシューの方が短くなっています。つまり、ボディのくびれから上の部分が、全体的に横方向にやや小さいという事です。

ピックガードをご覧頂くとリイシューの方が小さく(幅が狭く)見えますが、これもそのためです。リイシューはピックガードの面取り部分を狭くすることによって、上手くデザインのバランスを取っています。

Pickups



オリジナルはPatent Number pickup(#PAF)、リイシューはアンポッテッドのCustom Buckerが搭載されています。

ポッティング(蝋付け)はピックアップ内部やピックアップカバーとの空間を蝋で満たし、ハウリングを起こしにくくする処置ですが、同時にピッキングなどに対するレスポンスなどが少し鈍くなります。

オリジナルを再現するリイシューのピックアップがPAF同様アンポッテッドになったことは多くのファンに歓迎され、従来のものよりさらに抜け良く繊細なニュアンスが出るCustom Buckerは高く評価されました。


ピックアップ(ピックアップ・マウントリング間)の距離も計測してみましょう。オリジナルは約58.0mm、リイシューは約61.0mmでした。ボディに空けられたピックアップ・キャビティはピックアップよりも幾分大きいため、取り付ける際に多少の誤差が生じます。リイシューよりもオリジナルの方がバラつきが大きいのですが、このオリジナルは若干ナローな個体だと思います。

オリジナルはリア・ピックアップのマウントリングとピックガードの間に隙間がある事が有名ですが、これはリア・ピックアップの取り付け位置が前後しても、ピックガードの取り付けに支障をきたさないためではないかと推測できます。

上のHorn and Pickguardの項目に掲載したオリジナルの画像(1枚目と3枚目)を見比べてみると、この隙間の開き具合の違いからピックアップ取り付け位置にバラつきがある事がお分かり頂けると思います。

Bridge and Tailpiece



オリジナルの方はブラスに替えてしまいましたが、年代に準じてナイロンサドルのABR-1ブリッジが採用されています。テイルピースもアルミニウム素材のものです。エイジングの具合が丁度良いです。

ES-335だけでなくギブソンのエレキギター全般に言える事ですが、1950年代や1960年代のブリッジは今よりも低い(ボディ・トップに近い)位置に取り付けられているため、サムホイールとボディトップの距離が近いです。また、ブリッジの位置が低いと言うことは弦も低い位置にあるため、結果的にピックアップ・マウントリングの上面とピックアップの上面が近い高さにセットされます。

Control knobs



1960年から採用され出したメタル・インサートのハットノブ。リイシューのハットノブに印刷された文字と、塗装に入ったウェザーチェックがとても良い雰囲気です。

余談ですが、オリジナルの印字はギター・ポリッシュ一拭きで簡単に消えてしまいますので、所有されている方はお気を付けください。

Controls, F-Hole



コントロールとFホールの位置が、オリジナルとリイシューでは少し異なります。テイルピースを基準にご覧頂くと分かりやすいのですが、リイシューはコントロール類とFホールが少し下に位置します。私は以前2004年製のヒストリック・コレクションを併用していましたが、やはり下に位置していました。

Body thickness



ボディの厚みを見てみましょう。オリジナルは約44.5mm、リイシューは約41.3mmでした。この数値だけ見るとリイシューの方が薄く、その再現度に疑問を持たれる方がいらっしゃるかもしれません。念のためもう一本の1964年製も計測してみましょう。

こちらの個体は43.5mmでした。所有するオリジナル以外にも1964年製のES-335は何本か弾きましたが、43mm前後の印象のものが多かったように記憶しています。多少の差はございますが、個人的にリイシューの厚みに関しては良く再現されていると考えています。

Color(Finish)


画像左側がオリジナル、右側がリイシューとなります。オリジナルは少し褪色しているため色味に差があるように見えますが、リイシューはコンディションの良いオリジナルにそっくりなカラーリングで仕上げられています。

現存するオリジナルの中には塗装が白く曇り、艶のない状態のものも見受けられますが、本来濡れたような綺麗な艶があります。Murphy Labの塗装はVOSよりも艶が出ており、とてもリアルな質感を持っています。これはMurphy Lab専用の新しいラッカーの性質に依るところだと思います。初めてMurphy Labを見た時、その塗装の質感に感心したのを覚えています。

試しにオリジナルのリフトンケースにMurphy Labを入れてみました。当時のケースに入れても違和感が無く、とても馴染んで見えます。どれほどMurphy Labの質が高いかがお分かり頂けると思います。今回はヴィンテージとMurphy LabのES-335を比較してみましたが、いかがでしたでしょうか。

6年前の比較記事でも触れましたが、熱心なヴィンテージギターフリークが言うように「どんなに良いリイシューをモディファイしてもヴィンテージとは違う音」であることは確かだと思いますが、Murphy Labは古いギブソンの音をイメージして弾いても夢中になれるリイシューだと思います。

オリジナルの音や見た目を目標とした場合、昔はリイシューを弾いてもその差が大きく感じられたためオリジナルを購入する事が多かったですが、今ならMurphy Labも選択肢に入ってきます。楽器としての響きは勿論のこと、音の立ち上がりの良さ、解像度など、往年のギブソンを彷彿とさせる魅力溢れるギターに仕上がっています。是非とも多くの方にご覧頂き、鳴らして頂きたいモデルです。

今回の記事に登場しましたMurphy LAB 1964 ES-335の詳細につきましては、この下にご用意させて頂きました商品ページをご覧ください。それでは今回はこの辺で。

ギター部屋の管理人


学生の頃よりバンド活動、レコーディングなど様々な場所での演奏とヴィンテージギターショップ巡りに明け暮れる。後にギタークラフトを学び島村楽器に入社。入社後は米国Fender社への買い付けなどを担当。現在は新宿PePe店に勤務。甘いもの好き。


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