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別室 野原のギター部屋 Vol.26 “管理人が見送り続けてしまった、あのギター”

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皆様こんにちは。島村楽器別室 野原のギター部屋管理人の野原です。

昔は比較的入手しやすかった少し通好みなヴィンテージギターも、気が付けば大変な販売価格に。ついつい「学生の頃は〇〇万円位で結構選べたよ」「あの時買っておけば良かった」なんて口にされる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回皆様にご紹介する「島村楽器で見つけた気になる1本」は、私が「買おうと思えばいつでも買えるしな」と見送り続けているうちに買うタイミングを失ってしまった大好きなモデルのリイシューです。

Gibson Custom Shop 1964 Trini Lopez Standard VOS Sixties Cherry


ミュージシャン兼俳優として活躍したトリニ ・ロペス氏のシグネチャーモデル、トリ二・ロペス・スタンダード。1964年後期から1970年まで生産されたオリジナルのトリ二・ロペス・スタンダードは、デイヴ・グロール 氏やノエル・ギャラガー氏をはじめとする多くの著名ミュージシャンの使用により、再び脚光を浴びることとなりました。

こちらのリイシューはモデル名に1964と記されている通り発売当初の仕様を忠実に再現したモデルなのですが、この「発売当初の仕様」というのがポイントとなります。このブログをご覧の方であればご存じの方も多いと思いますが、1965年にギブソンのナット幅は従来のものより約2mmほど狭いものに切り替わっていきます。いわゆるナローネックと呼ばれるものです。またヘッド角度が17度から14度へと変更されるのもこの年です。※1965年途中までは1964年仕様のものが混在していた

トリニ・ロペス・スタンダードは1964年後期に発売されましたので、レギュラーサイズのナット幅を持つものは流通量が少なく、1950年代から続く仕様を求める熱心な愛好家や、現代的なナット幅を好むプレイヤーたちの頭を悩ませてきました。

製造期間や本数を考えれば、ナローネックこそトリニ・ロペス・モデル「らしさ」と言えるかもしれませんが、弾きなれたナット幅を持つトリニ・ロペス・モデルが買えるというのは魅力的です。
ギブソン社とロペス氏がデザインを共同開発したこのモデルは、基本的にES-335のヴァリエーションモデルとして位置づけられています。一目見ただけで忘れられないオリジナリティ溢れるデザインがES-335のデザインと見事に融和しています。1965年に登場したノン・リバースのファイヤーバードと同じデザインのヘッドストックには、他のモデルと共通となるトラスロッドカバーを採用。ファイヤーバードとは一味違う見た目となっています。
チューナー・ペグはKluson 6 Per Plateを採用。主張し過ぎないシンプルなペグ・ボタンが大柄なヘッドストックに良く合います。
前述の通りトラスロッドカバーは他のモデルと共通の物が使用されています。1965年になると外周の白い部分の幅が狭く、面取りのされ方がシンプルなトラスロッドカバーに変更されます。

色の濃いローズ指板に映えるスプリット・ダイヤモンド・インレイ。1980年代後半、SG '90 DoubleやUS-1など一部のモデルにも採用されましたが、やはり「トリニ・ロペス・モデルのインレイ」として認識されている方がほとんどではないでしょうか。

程良い派手さと存在感。とても簡単でシンプルな図形ですが、デザインのセンスが秀逸です。

ホーンの形状はこの頃(1964年)から散見され始めた細いタイプを再現。使用しているギタリストの印象もありますが、ミッキーマウス・イヤーよりも少しロックな印象を与えます。

ピックガードもオリジナル同様、黒白黒白黒の5プライのショート・ピックガード。ギブソンのピックガードのレイヤーは均一ではなく、厚みにバラつきがあります。なぜ均一にしなかったのか今では知る由もありませんが、らしさを感じる部分でもあります。殆ど見えませんが、一番下に黒を入れる老舗のセンスが素敵です。


ピックガード・ブラケットもES-335などと同じものを使用しています。1920年代にはギブソン製品に使用されているので、このパーツ(のデザイン)は約100年間現役ということになります。

こちらもトリニ・ロペス・モデルを象徴するダイヤモンド・シェイプのfホール。L-5やSuper400、バードランドなどの高級アーチトップと同様に、内側にバインディングが施されています。書いてて気が付きましたが、ギブソンのシンライン・ホロウボディではトリニ・ロペス・モデルが初めてではないでしょうか。

トラピーズ・テイルピース(ブランコ・テイルピース)にはローズウッドのブロックが取り付けられており、セットされた3プライのプラスティックにはモデル・ネームが入れられています。”CUSTOM MADE”プレートと同様のジグザグの文字、トリニ・ロペス・モデルを象徴する菱形のモチーフがとてもお洒落です。

横から見てみましょう。ローズウッドに入れられたスリットがテイルピースに噛んでいるのがお分かりになりますでしょうか。トラピーズ・テイルピースの構造やデザインを利用した無駄のない取り付け方が素敵です。先人のセンスやアイディアに触れることができるのも、ヴィンテージやリイシューの醍醐味の一つだと思います。

なかなか見る機会の少ないエンド側。通常ギブソンのギターなどはテールピースのスタッドアンカーの下にアース線がきていますが、トラピーズ・テイルピースやビグスビーの場合、弦アースをストラップピンの上辺りで挟み込むのが一般的です。



リフレクター・ノブ、白いスイッチ・チップ、ナイロンサドルのブリッジはES-335と共通のものが使用されており、当時の物を忠実に再現しています。ABR-1ブリッジのシェイプですが、ここ数年の物はオリジナル同様に少し丸みを帯びています。

ピックアップはアンポッテッドのカスタムバッカー(アルニコⅢ)を搭載。「サイズのわりに磁力の強いアルニコⅤが好きだったので選んだが、コンスタントに入手できるものではなかったため、ときどきII、IIIを使用していた」というオリジナルP.A.F.の生みの親であるセスラバー氏の発言の通り、当時は様々なアルニコマグネットが使用されていました。中でもアルニコⅢは磁力が弱く、出力が控えめな分弾き手のタッチが出やすい傾向にあると言われており、今回のカスタムバッカーとセミホロウ構造であるトリニ・ロペス・モデルの相性の良さは、もは説明不要だと思います。

今回の記事の中で一番お気に入りの写真。撮影技術が無い私が撮影してもこの色気ですから。

今回はGibson Custom Shop 1964 Trini Lopez Standardをご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。どうしても「セミアコといえばES-335」のイメージが強いですので、トリニ・ロペス・モデルに対して「異端」なイメージを持たれる方も少なくないと思います。ES-335には無い特有の色気、艶やかさ。ぜひ一度皆様にご覧頂き、手に取って頂きたいモデルです。
商品の詳細につきましてはギタセレ商品ページをチェックしてみてください。それでは今回はこの辺で。

 

ギター部屋の管理人


学生の頃よりバンド活動、レコーディングなど様々な場所での演奏とヴィンテージギターショップ巡りに明け暮れる。後にギタークラフトを学び島村楽器に入社。入社後は米国Gibson社、Fender社への買い付けなどを担当。現在は新宿PePe店に勤務。甘いもの好き。


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