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別室 野原のギター部屋 Vol.16 “1960-61年製のES-345TDSVと1964年製のES-335TD”

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皆様こんにちは。島村楽器別室 野原のギター部屋管理人の野原です。

先日私が勤務しております静岡パルコ店に入荷し、瞬く間にご成約となりました素敵なギターをご紹介致します。
このギターの名前は知らなくても、Enchantment Under The Sea Dance(魅惑の深海パーティ)で魅了された方は多いのではないでしょうか。

1960-61年製のGibson ES-345TDSV Factory Bigsbyです。

今回はこちらの貴重なES-345と1964年製のES-335を比較しながら、それぞれの特徴を見ていきたいと思います。いつも以上に趣味全開の内容ですが、どうぞ皆様、最後までお付き合いください。

1960-61 Gibson ES-345TDSV Factory Bigsby


ボディのファクトリー・オーダー・ナンバーは1960年製造を示し、シリアルナンバーは1961年初期のES-345。モデル名のTDSVはThinline, Dual Pickup, Stereo Vari-toneを表しています。ES-345は1958年に発売されたシンライン・モデルES-335の上位機種として、1959年発売されました。

1961年に出荷されたチェリー・レッドのES-345は223本と少なく、同年同カラーのES-335(420本)の約半分です。
ハードケースと一部のパーツがリプレイスされていますが、塗装のコンディションも含め非常に良い個体です。

1964 Gibson ES-335TDC Factory Bigsby


久しぶりに自宅から引っ張り出してきた1964年製のES-335。モデル名のTDCはThinline, Dual Pickup, Cherry(finish)を表しています。1964年に製造されたチェリーレッドのES-335は892本で、1960-1961年製のES-345に比べると探しやすいギターと言えます。
コンディションはパーツの交換、修理歴の無いオール・オリジナルのコンディションで、チェリー・レッドのフェイドも少ない個体です。

Cherry Red


2本を並べてみました。同じチェリー・レッドでもだいぶ色味が異なって見えます。左のチェリー・レッドは1961年初頭頃まで採用された"ウォーター・メロン"と呼ばれる淡いカラーで、1961年の途中から右のES-335の様な濃い色味のチェリー・レッドに変更されました。

Headstock



ES-345(画像上)とES-335(画像下)のヘッドストックは同じ作りをしています。今回ご紹介しているES-345は交換されているため確認できませんが、オリジナルのトラスロッドカバーは"STEREO"と縦に刻印されています。

一方ES-335のトラスロッドカバーには"CUSTOM"と刻印されたものが取り付けられていますが、ファクトリー・ビグスビー仕様のオーダー品だったためと考えられます。同じファクトリー・ビグスビー仕様でもプレーンのトラスロッドカバーで出荷されるものが大半ですので、少し珍しい個体です。

Pickguard


2本のピックガードを見比べると、ES-345の方が縦に長いことに気付きます。これはES-175のピックガードを流用した通称ロング・​ピックガードと呼ばれるもので、1960年途中までのES-335, ES-345, ES-355で採用されていました。その後は下のES-335のような専用サイズが作られ、それぞれのモデルに取り付けられるようになります。

Vari-tone Control & Stereo Output Jack


ES-345と言えば、Vari-toneコントロール(バリトーン・スイッチ)ですね。ES-355にも搭載されていましたが、ES-355はVari-toneコントロールを省いたモノラル・アウトプット仕様なども作られていましたので、やはりES-345のイメージが強いです。

バリトーン・スイッチは1~6まで音色が切り替えられ、スイッチに付けられた多数のコンデンサーとリアピックアップ付近に収められたチョークコイルによって、多彩なサウンドを得ることができます。またフロント・ピックアップとリア・ピックアップは独立した回路になっており、ステレオプラグのY字ケーブルを使用しそれぞれを鳴らします。
※フロントピックアップで1台、リアピックアップで1台、計2台のアンプで鳴らすといった感じです

ES-345が発売された1959年当時と言えばエフェクト・べダルなども無くアンプに直接繋ぐ時代。多彩なサウンドを生み出すVari-toneコントロールは高級機種に相応しい仕様です。

Bigsby B-7


2本とも工場出荷時からBigsby社のB-7ヴィブラートユニットがマウントされている個体になります。当時のES-335とES-345はストップ・テールピースが標準の仕様で、ビグスビーはオプションでした。
※最上位機種のES-355のみビグスビーが標準装備

ヴィブラートシャフトの各弦の下に穴が開いているのが確認できます。これは弦(ボールエンド)を掛けるピンをシャフトに固定するためのものなのですが、古い時代のビグスビーにはあって近年のものには無い仕様です。

一見同じに見えるビグスビーですが、年代によって様々な特徴がありますので少し見てみましょう。ES-345のビグスビーはアームバーを留めているボルトの頭がプラスになっています。これは1958-1960年の途中まで見られた仕様で、以降は下のES-335に搭載されているものになります。




ボディにマウントするビスにも年代による違いが見て取れます。ES-345にはマイナス・ビス、ES-335にはプラス・ビスが使用されています。

今回ご紹介しているES-345は間違いなく出荷時からビグスビーが取り付けられている個体ですが、ビグスビーB-7ユニット自体は交換されている可能性があるとお話をお伺いしました。

今取り付けられているB-7は、アームバーを留めているボルト(1958-1960年途中)、ボディマウントスクリュー(-1959/1960出荷含)、ユニット本体のシェイプ(1960-)から1960年頃に製造されたものであると推察することができ、ES-345本体の製造時期(1960年)とも合致します。仮にB-7ユニットが交換されたものだとしても、本体のオリジナリティを最大限に尊重した交換だと思います。

ちなみに古い年代のビグスビーはボディトップ側もボディエンド側も全て同じビスを使用していますが、現行品はボディトップ用に大きいサイズのビスが用意されています。

Pearl Inlays and "CUSTOM MADE" Plaque



今回の2本はファクトリー・ビグスビー仕様の個体になります。カスタマーからのオーダーが入るとビグスビーを搭載して出荷していたのですが、製造過程で既に取り付けられているテールピースのスタッドアンカーを隠す必要がありました。

ES-345はアンカーの上から円形にカットした白蝶貝を埋めて目隠しをしています。これは1960年頃まで用いられた方法で、以降はES-335に取り付けられているCUSTOM MADEと刻印された2Plyのプレート(小さなブラス製の釘で固定)に変わります。

ABR-1 Bridge



両個体とも年代に準じたABR-1ブリッジが取り付けられています。ES-345はブラス・サドルのノン・ワイヤー、ES-335はナイロン・サドルでサドルの脱落を防ぐワイヤーが取り付けられています。

Body Binding


ES-345はボディトップ側のバインディングが白黒白のマルチ・プライ、ボディバックが白のシングル・プライになっています。僅かな厚さですが、黒いラインが1本入るだけで表情が引き締まります。今回の個体のようなウォーター・メロン・チェリーと積層バインディングの相性は抜群です。
一方のES-335は、ボディトップ、バックともにシングル・プライのバインディングが巻かれています。

Position markers


ES-345のポジションマーカーには全ての年代を通じてDouble Parallelogram Inlayが採用されています。

1964年製のES-335にはSmall Block Inlayが確認できますが、これは1962年からの仕様であり、それ以前はDot Inlayが採用されていました。

Pickups



ES-345は年代に準じてフロントとリアにPAF(Patent Applied For)、ES-335はフロントにPAF、リアにPatent Number pickup(#PAF)が搭載されています。後期のPAFと初期の#PAFはベースプレート背面の水貼りデカールが異なるだけで、同じものになります。
さて、1960-1961年製のES-345と1964年製のES-335を比較してまいりましたが、いかがでしたでしょうか。

「ES-345は音が痩せるので良くないと言われたのですが、実際はどうなのでしょうか」とお客様にご質問頂くことがあります。確かにES-345はES-335に比べて複雑な回路となるため、その分電気信号のロスはあります。ですが、そのVari-toneコントロールを通過したサウンドこそがES-345の旨味でもありますので、まずは手に取って鳴らして頂きたいモデルです。

楽器店のスタッフの表現としてどうかと思いますが、今回のES-345も電気信号のロスとかどうでも良くなるくらい『格好いい音』がする粋なエレキギターでした。

最後までご覧頂き、ありがとうございます。記事の内容やギター選びのご相談などございましたら、お気軽にお問い合わせください。それでは今回はこの辺で。

ギター部屋の管理人


学生の頃よりバンド活動、レコーディングなど様々な場所での演奏とヴィンテージギターショップ巡りに明け暮れる。後にギタークラフトを学び島村楽器に入社。入社後は米国Fender社への買い付けなどを担当。現在は静岡パルコ店に勤務。甘いもの好き。

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