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別室 野原のギター部屋 Vol.19 “Gibson Historic Collectionの選び方”

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皆様いかがお過ごしでしょうか。島村楽器別室 野原のギター部屋管理人の野原です。

数ある個体の中からベストな1本を探す悩ましくも楽しい時間、皆様はどのような基準や拘りを持ってギターをお選びになりますでしょうか。

今回はヒストリックコレクションのレスポールに焦点を当て、その選び方について綴りたいと思います。飽くまで私なりの選び方になりますので、気楽に読んで頂けると幸いです。

ギター選びは見た目からです。敢えて書くまでもないかもしれませんが、眺めていて惚れ惚れするようなギターを弾くというのは何とも気分の良いものです。過去には「この楽曲には〇〇のギターが必要だ」と分かれば直ぐに手配して使用することもありましたが、見た目が好きなギターに越したことはありません。

「ヒストリックコレクションのレスポールは欲しいけれど、いまひとつ自分の好みが分からない」という方は、好きなギタリストが手にしているレスポールに似た雰囲気の個体を探してみてはいかがでしょうか。

私は深みのあるCherry SunburstからIced Tea Burst辺りの1958~59が特に好きなのですが、これも夢中になって聞いていたバーストプレイヤー達の影響からです。杢とカラーが織りなす唯一無二の表情たちに今でも魅了され続けています。

余談ですが、サンバースト以外のレスポールでは1954レスポールや1957レスポールカスタム(3ピックアップ)も好きなのですが、1954レスポールに関してはバック材のマホガニーの色味や木目にも拘りたくなります。フィギュアドメイプル程の派手さはありませんが、雰囲気のある板目のマホガニーなどはついつい見入ってしまいます。

好きな見た目のレスポールが見付かったら、次に音をチェックしてみましょう。

バーストのみならず、1950~1960年代のギブソンのエレキギターには共通したイメージを持っています。

・音の立ち上がりが良い
・各弦の解像度が高い
・高域が鳴る

抽象的な表現になってしまいますが、最近のギターを10割の力でピッキングした時の音が8割の力で更にHi-Fiに出るイメージです。もちろん当時のピックアップの影響もありますが、生鳴りの時点で音の立ち上がりの良さや解像度(≒分離)の高さなどは実感できると思います。

1950年代のレスポールはボディトップに主にイースタン・メイプルとハードロックメイプル、ボディバック及びネックにホンジュラスマホガニー、指板にブラジリアン・ローズウッドを使用しています。個体差はありますが、総じて当時の材は剛性(物が曲がりにくい、たわみにくい≒硬い)が高く、弦振動エネルギーの低い高域成分が損なわれにくいと言われています。

つまり楽器としての表現力の高さが1950~1960年代のギブソンの特徴の一つであり、プレイヤーがわざわざヴィンテージを手にする理由の一つでもあります。

既にお気付きだと思いますが、私がヒストリックコレクションを選ぶ際はこれまでに挙げた1950~1960年代のギブソンのイメージや特徴を基準に個体を見ます。具体的なチェックの仕方は以下の通りです。

エレキギターの生鳴りに関しては重要視されない方もいらっしゃいますが、まずはアンプに繋がない状態で弾きます。
1本だけで判断することは難しいですので、複数本を比較しながら確認をします。
※必ずネックが調整されている状態で確認をします

コードを鳴らした時に各弦が分離しているか
コードを鳴らした時に各弦の音が聞き取れるかを確認します。それぞれの音に芯があるか、一番弱い1弦の音もしっかりと聞こえるかなど。

音の立ち上がりが良いか
ピックで弾いた瞬間に明瞭なアタック音が鳴るかを確認します。コードで確認するよりも、単音で確認する方が判断しやすいかもしれません。

ここまでで、音に芯が無くぼやけた個体は最終的に選ばれないことが多いです。後にアンプにも繋いで確認をしますが、生音で弾いた印象のままであることがほとんどだと思います。

1~6弦、ローフレットからハイフレットまでバランス良く鳴るか
1~6弦、ローフレットからハイフレットまでが「聴感上」バランス良く鳴っているかを確認し選びます。指板上の全てのポジションが同じ鳴り方をするギターは存在しませんので、飽くまで聴感上(弾き手の感覚)です。「低音激鳴りの1本」が、実は高音の鳴りが弱いために相対的に低音が鳴っている様に聞こえている場合もありますので、極端な鳴り方の個体は避けます。

アンプからのサウンドをチェックする
アンプ(使い慣れた機種が好ましいです)に繋いだら生音で確認した内容を再度確認し、その後フレーズやコードなど自由に弾きます。

サウンド面からレスポールを選ぶ際に私が特に注視するのがマホガニーです。重要なネック材にも使用され、ボディにおいても大きな割合で使用されているため、サウンドへの影響も大きいと考えています。

ナット交換時に接着面のマホガニーを刃物で整えると分かるのですが、古いギブソンのマホガニーは近年のものよりも硬く、導管が細く詰まっています。個体差の範囲にはなりますが、できるだけ木目の詰まった硬いマホガニーを意識して選ぶようにしています。

では実際にどのように判断し、選んでいるのか。

①サウンドで判断する
感覚的かつ経験を伴う判断になりますが、音でマホガニーの硬さを想像します。
あまり無いですが、密度が低く柔らかいマホガニーのレスポールスタンダードを弾くと、トップ材のメイプルによる明るい出音(アタック)は聞こえますが、音に芯が無く、特に中域から下の響きが薄く(弱く)なります。

一方、密度が高く硬いマホガニーの個体を弾くと、メイプルによる明るい出音とマホガニーによる艶のあるタイトな中音域が鳴り、音の伸びや響きも豊かです。弱くピッキングしても華奢なサウンドにはならない印象です。

②ネックのしなり具合を見る
弦を緩めた時のネックの状態と、チューニングし終えた時のネックの状態を比較します。

ネックは弦を緩めると逆反り方向に動き、弦を巻き上げるとテンションがかかり順反り方向に動きますが、なるべく動きの少ないものを選びます。しなる幅が大きいからといって「絶対に密度が低いネック材だ」と決めつけることはできませんが、硬く詰まったネックは動く幅も狭いものが多い印象です。

楽器店で試奏をする際、弦を緩めた状態のネックを見せてもらうか、自分でチューニングをさせてもらうと良いと思います。
ここまでを一通りチェックし終えたら、あとは感覚的にグッとくる個体を選ぶだけ。「ネックの握り心地が良い」「表情が一番好み」「あの音源に近いイメージの音がする」「Eを鳴らした時の鳴りが気持ち良い」など、グッとくるポイントは何でも良いです。

唯一の正解は弾き手の感覚ですので、自信を持って選んで頂ければと思います。

最終的に気に入った1本が見付かったら、トラスロッドの効き具合などを確認しますが、これは信頼できる楽器店スタッフに確認をしてもらうのが良いと思います。

以上が私なりのヒストリックコレクションのレスポールの選び方になります。

皆様からのご質問

せっかくなので、ヒストリックコレクションをご案内する際に皆様からご質問頂く内容をご紹介し、回答してみたいと思います。

Q1.ヒストリックコレクションとUSA(レギュラーライン)のレスポールって何が違うの?
同じレスポールの形をしていますが、別物のギターだと思った方が選びやすいと思います。

それぞれが別の工場で作られていることや、材料、工程、パーツ、製作時間などコストの掛かり方が異なる事は何となく想像できると思いますが、そもそもUSAのレスポール(Les Paul Standard ’50sなど)とヒストリックコレクション(1959 Les Paul Reissueなど)はコンセプトが異なります。

USAは現代のGibsonのレスポールを、ヒストリックコレクションは1950年代のGibsonのレスポールを作ることをコンセプトにしていますので、ギター自体の構造や製法、使用されるパーツなどが異なるため、サウンドも含めて別物のギターになります。

Q2.ヒストリックコレクションとUSA、どちらを選べば良いですか?
著名なミュージシャンが録音やライブで使用するレスポールは、1950年代のレスポールかそれを復刻したヒストリックコレクションであることが大半だと思います。私たちはこの音をレスポールの音として認識しているので、ヒストリックコレクションを鳴らした時に「よりレスポールらしい音」と認識される方が多いと思います。

が、どちらを選ぶかは好みでOKです。

タッチやニュアンスが出過ぎるヒスコレの音よりも、綺麗にまとまるUSAの音の方が好きな方はUSAを選んだ方が良いと思います。私も学生の頃に購入したお気に入りのUSA(Les Paul Standard)を今でも大切にしています。

Q3.軽いレスポールが良いって聞いたけど、どうなの?
昔は硬くて目が詰まっているのに軽量なマホガニーもありましたが、最近では探すのが難しい印象です。同じ重さの材でも硬さや目の詰まり方などで音の印象は変わりますので、一概に軽ければ良いとは言えなさそうです。全般的には重量が軽くなるにしたがって音がトレブルに寄るイメージです。

Q4.1959 レスポールと1958 レスポールって何が違うの?
ネックシェイプ
1959のAuthentic '59 Medium C-Shapに対し、1958はやや厚みのあるChunky C-Shapeを採用
フレット
1958には幅の狭いNarrow-Tall、1959はMedium-Jumboを採用
ボディトップのメイプル材
1959はFigured Maple、1958はPlain Mapleを使用
ボディバックのマホガニー材
1959は角材の状態で9ポンド以下のマホガニーを使用(優先的に規定範囲内の重量のマホガニーを使用)

フレットの違いでサウンドに僅かな違いはあると思いますが、材の見た目や重さを除けば同じ構造を持ったレスポールということになります。ピックアップも同じCustombuckerを搭載していますので「販売価格の高い1959の方が良い音がする」ということではありません。

Q5.1994年製や1999年製のヒストリックコレクションが良いという意見を聞きますが、実際にはどうでしょうか
構造を含め再現度は近年の方が高いので、最近の物の方がよりヴィンテージに近いイメージの鳴り方をしているように感じます。私は1990年代のリイシューよりも60th Anniversary以降のリイシュー、特にMurphy Labの音の方が好きです。

確かに90年代のヒストリックやUSAで「これは良いマホガニーだな」と思うような個体に出会うことは多いですが、1950年代のギブソンの音に近い鳴り方のギターを選ぶのであれば、作りや塗装がオリジナルに近い近年物を選びます。

今回は私なりにヒストリックコレクションの選び方について綴ってみましたが、いかがでしたでしょうか。

ギタリストの数だけ考え方や道理があると思いますが、前述の通りギター選びの唯一の正解は弾き手の感覚や好みにあります。この記事をご覧になった皆様の「ヒスコレ選び」がより楽しいものになりましたら幸いです。

こちらの記事についてや製品についてなどご質問がございましたら、お気軽にお問い合わせください。「いまさら聞けない」なんて思っているようなご質問も大歓迎です。

最後に島村楽器各店にございますGibson Custom Shop製品一覧のリンクをご用意させて頂きましたので、素敵な個体探しにお役立てください。それでは今回はこの辺で。

ギター部屋の管理人


学生の頃よりバンド活動、レコーディングなど様々な場所での演奏とヴィンテージギターショップ巡りに明け暮れる。後にギタークラフトを学び島村楽器に入社。入社後は米国Fender社への買い付けなどを担当。現在は静岡パルコ店に勤務。甘いもの好き。

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