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別室 野原のギター部屋 Vol.2 “1964年製のES-335と2015年製のES-335 その1”

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別室 野原のギター部屋Vol.2は、2016年11月25日に掲載した"1964年製のES-335と2015年製のES-335 その1"をお送りします。

ミーナ町田店別室 野原のギター部屋Vol.2は、Gibson Memphis Factory製のES-335と自宅から引っ張り出してきた1964年製のES-335を様々な角度から比較してみたいと思います。


最近のGibson Memphisは当時のモデルを再現するにあたり積極的に各部の見直しと改良を繰り返し行っており、各方面より高い評価を得ています。私もヴィンテージテイストのES-335をお探しの方には必ずオススメしているのですが、いったいどれ程のものなのでしょうか。

まずは比較する双方の主な仕様から。

1964 ES-335TDC Kalamazoo Factory(写真奥)

ピックアップ: P.A.F. and Patent Number pickup
キャパシタ: Sprague Black Beauty 0.022μF 400V

Eric Claptonが長年に渡り使用していたことで有名な1964年製のES-335。ヴィンテージギターと呼ばれている中古品です。こちらは当時オプションだったBigsbyを搭載した状態で出荷された個体となります。それに伴い生産過程で取り付けられたテールピースのスタッドアンカーは"CUSTOM MADE"と彫られたプレートで覆われています。

ヘッド角17度、レギュラーピッチのナット幅、ニッケルコーティングの金属パーツ、ナイロンサドルなど典型的な1964年初期(~中期)の仕様です。センターブロックはリアピックアップの幅で穴が開けられています。と、ここまでは良く見る1964年製なのですが、何故かこの個体はフロントピックアップにP.A.F. (1956年後期〜1963年頃)が搭載されています(1964年は前後共にPatent Number pickupが搭載されているのが一般的です)。初期のPatent Number pickupとP.A.F.(後期)はベースプレート背面に貼られた水貼りのデカールが異なるだけでピックアップ自体は凡そ同じと言われていますが、ちょっと得した気分になってしまうのがギターマニア。

2015 Gibson 1963 ES-335 Memphis Factory(写真手前)

ピックアップ: MHS humbuckers(ニュー・メンフィス・ヒストリック ピックアップ)
キャパシタ: Sprague Black Beauty 0.022μF 200V(レプリカ)
Vlume/Toneポット: CTS 550kΩ +/−5%

モデル名の通り1963年頃のES-335を再現したモデル。1958年の発売以来続いてきた丸みの帯びたホーン形状(通称ミッキーマウス・イヤー)からやや尖ったホーン形状へと変更された直後のボディシェイプが再現されています。やや尖ったこのシェイプは1964年以降のイメージが強いですが、1963年の後半には登場していたのかも知れません。センターブロックはリアピックアップの配線用の穴がドリルで開けられている所謂ソリッドセンターブロックが採用されており1963〜1964年初期の特徴を忠実に再現しています。その他ヘッド角、ナット幅、金属パーツのめっき、ナイロンサドルなどは前出の1964年と同じ仕様となります。新たに開発されたPatent Number pickupのレプリカピックアップ(MHS humbucker)や厳選された抵抗値を持つボリューム/トーンポットを搭載するなど、Memphis Factoryの気合と拘りが感じられる一本です。

音の比較

エレキギターの生鳴りに関しては重要視されない方もいらっしゃいますが、その鳴りも弦振動に作用しピックアップを発電させ最終的にアンプからの音となって現れますので、まずはアンプに繋がない状態で弾き比べてみます。1964年製は低音域~高音域までが軽快に鳴ります。一音一音が煌びやかに鳴っているイメージでしょうか(Bigsbyが搭載されていますので多少高音域側が特徴的な鳴り方をします)。箱鳴りも豊かでギター全体で鳴っているのが分かります。
一方のMemphis製は音量こそさほど変わらないものの、1964年製に比べると少し艶っぽく聞こえます。音全体を聞いた時に耳が中音域(ハイミッド)を捉え易いと言いますか。これについては主に木材と塗膜の硬さが影響を及ぼしているのではないかと思います。(現在のラッカーは昔のラッカーとは性質が異なり柔らかいものが使われています)

次にアンプに通した音を比較してみます。使用したアンプはFenderのアンプで、いずれもEQをフラットにして比較しました。ここでも生音で感じられた両者の特徴がそのまま表れるのですが、更に1964年製のES-335は強くピッキングすると若干音が割れます。言葉で表現するのが難しいのですが、音の芯はクリーンで輪郭だけバリっと割れるような感じです。これは低いレベルでオーバードライブを起こしやすいという当時のピックアップ(P.A.F.)の特徴で、それだけダイナミックレンジが広くピッキングに追随しているということなのだと思います。一方のMemphis製は高音域側に少しコンプをかけたような音に聞こえますが、以前搭載されていた'57 Classicよりも音抜けの良いサウンドになったように思います。

こうして文章にすると両者の音色には結構な違いがあるように思われるかもしれませんが、飽く迄同じ条件で交互に弾き比べて「強いて言えば」という範囲です。
その範囲内の違いを指して一部のヴィンテージギターフリークが言うように「どんなに良い現行品をモディファイしてもヴィンテージとは違う音」であることは確かですが、1964年製を弾く感覚でこのMemphis製を弾いてもストレスはありません。
キャラクターの異なるES-335 を弾いているといった感覚だけで、両者とも充分に私がイメージするES-335の音がします。
最近は品質の高いP.A.F.のレプリカが幾つも発売されていますので、反応の良い鳴り方をしているMemphis製のES-335に搭載し更にヴィンテージ風のサウンドに仕上げるのも面白いと思います。

続いて各部の細かい仕様と特徴について綴りたいところですが、それはまた次回Vol.3で。

ギター部屋の管理人


学生の頃よりバンド活動、レコーディングなど様々な場所での演奏とヴィンテージギターショップ巡りに明け暮れる。後にギタークラフトを学び島村楽器に入社。入社後は米国Gibson社、Fender社への買い付けなどを担当。現在は静岡パルコ店に勤務。甘いもの好き。


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