【エレキギター】Grosh Guitars(Don Grosh)20周年記念モデル ~ルシアー駒木から見たGrosh Guitars~
記事中に表示価格・販売価格が掲載されている場合、その価格は記事更新時点のものとなります。
●他メーカーと比べると、Don Groshの音の特徴はどういった感じですか?
Don Groshのギターの作り方は、木と対話するようなイメージなんです。
「この材を使って出来上がったこの個体はこういう子(ギター)だから、こういう風にセッティングしてあげよう」みたいな。
それがDon Groshらしさだと思います。
他のブランドと決定的に違うのがそこだと思うんですよね。
●他のハイエンド・ギターブランドとは系統が違うと?
そうですね、たとえば島村楽器オリジナルの、HISTORY。
HISTORYはまた違うアプローチで、“高いクオリティで均一的なもの”を作ろうとしてます。
「HISTORYならこのレベルのクオリティを必ず提供できます。島村楽器が会社としてお約束できます」っていうアプローチなわけです。
あとはよくDon Groshと引き合いに出されるのがSuhr、Sadowsky、Tom Andersonあたり。
みんなFenderやGibsonから何かしら学んでいるわけですよね?
歴史や作り方、先人たちの知恵をもらって、さらにそのFenderを超えようっていう意識が見える。
Fenderに負けないように、Fenderに勝つぞー、みたいな。
でもDon Groshのギターって、もうFenderを愛しちゃってる感じがする(笑)
Fenderを超えようというよりは、FenderはFenderですばらしいと。
それを完全に認めたうえで、そのFender愛を認識しつつ、「今の自分の技術で作るとこうなります」ってことなんでしょうね。
だからVintegeなテイストも持ちながら、2点支持のトレモロブリッジを使ったりもする。
かといってどんどん先進的な技術を盛り込んで作ることはしない。
そういうところもDon Groshらしさなんですよね。
だからSuhr、Sadowsky、Tom Andersonとはギターに対するアプローチが違うんだと思います。
良い悪いじゃなくてね。
●ヴィンテージでもモダンでもある、みたいな?
そうですね。
Suhrを弾いて「ヴィンテージな音がするギターだね~」とは思わないですよね。
逆にFender Custom Shopのレリックなんかを弾いて「モダンな音だね~」とは思わない。
Don Groshに関してはヴィンテージ好きな人が弾いたらヴィンテージらしさを感じられるし、モダンなギターが好きな人が弾いたらモダンな音だと感じる。
それってDon Groshだけだと思うんですよ。
Don GroshさんがValley Artsから学んで、今の自分が作れる良いギターを、Fenderを愛している自分を認めた上で作っているから出来ることですよね。
Sadowskyとかはホントに作りの良いギターの典型で、ネックポケットとネックとの隙間がないような、クオリティの高いギターなんです。
だからこそストラトの音が出ないわけです。ルーズさがない。
それを良い悪いで判断するのはナンセンスだと思います。
弾き手が音の好みで買えばいい。
●Don Grosh弾き手に合わせてくれるギターなんですね。
とっても弾き手のことを考えて作られてますよね。
特にネックです。圧倒的に作りが良い。
ボディってある程度精度の高い機械で作れちゃうんですけど、でもネックは違う。
ネックは製図できちんとサイズを決めても、結局握ってしっくりくる感じがないと駄目なんですよ。
僕が作ったギターを元CHICAGOのBill Champlinが弾いてくれていて、感想をメールしてくれたんです。
一番褒めちぎってあったのがネックで、「ネックだけかい!」ってなったんですけど(笑)
うまい人ほどどんなネックでも弾きこなしちゃいつつも、だからこそホントに合うネックだとグッと来るんでしょうね。
Don Groshはセンスでしかなし得ないところをしっかり作っているというか、そういった所がスゴイですよね。
●やはり手工品でないと出来ない境地ですね。
はい。
じゃあ実際に僕ら作り手が見ると「こりゃ手が込んでるな~」ってところを紹介しましょう。
まずこのヘッド。
一般的なギターは、ヘッド先端からこの6弦ペグあたりまでが平面なんです。
で、ナットの3mm手前から指板になる。
その間を緩やかなアールでつなぐのが一般的で、機械で削って、最後に手で仕上げれば出来ちゃうわけです。
でもDon Groshは、この定規の先端くらいまで平面になってますよね。
そこから一気に指板面まで持ち上がってる。
これはすなわち、「手で削っています」ってことなんですよ。
次にボディのこのコンターを見てください。
これが「Valley Arts出身」を強く感じるんですよね~(感嘆)
全体が曲面になってます。
工場で量産するようなギターは平面で削るのが一般的ですよね。
でもDon Groshは曲面で削って、
最後にこのの部分をまた曲面でつなげる、と。
これはふつう一工程でやるんですが、三工程かけてる。
さらにネックとボディの継ぎ目。
ここが平らになってますよね。
他の高価なギターでもここはなかなか平らにならないんですよ。
これ結構ムズカシイんです。
これは手が込んでますよね。
フレットの仕上げも丁寧です。
このネックのカーブもそう。
この曲面ぐあいは機械じゃ無理。
手じゃないと絶対出来ないんです。
最後にピックガードのこの角も仕事が細かいですよね~
でもこういった細かい仕事を売りにしていないところもDon Groshなんですよね。