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【今さら聞けない】ギターで使われる木材事典! Part1  ~これであなたも木材マスター~

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ギターに使われる木材はいろいろあります

世の中にある、ありとあらゆるギター。特別なモデルを除いて基本的には木材にパーツを組み込んで出来上がっています。

例えばレスポール。


メイプルトップ、マホガニーバック、マホガニーネックにローズウッド指板...

例えばストラト。


このモデルはアルダーボディにメイプルネック、ローズウッド指板。

このあたりは定番なので、ほとんどのギタリストが木材の名を言うことが出来、サウンドの傾向も分かりやすいと思います。

ではこのギターは?


ボディは木目からアッシュである事が伺えます。でもアッシュと言ってもいろんなアッシュがあるわけで。指板はどうでしょう?木目を見るとローズウッドだと思えますが...
スペック表を参照すると、

  • BODY:Northern Ash
  • F.BOARD: Macassar Ebony

とあります。なんとこの木目でエボニーなんです! エボニーは日本名「黒檀」と呼ばれるように、真っ黒な木材じゃなかったんでしたっけ? でも実はこれ、マッカーサー・エボニー(日本語で「縞黒檀」)というエボニー材。ぱっと見、なかなか分かりません。

そもそもメイプル、マホガニー、アルダー、アッシュ、ローズ、メイプル...といった材によって音はどう変わるのでしょうか? ギター・ベースを永く弾いている方には感覚で分かる話かもしれませんが、駆け出しのギタリスト・ベーシストの皆さんにはまだ何とも難しい話だと思いますし、永くやっていても「じゃあレッドウッドはどんな音?」というのも分かりづらいです。

というわけで、世の中に数多ある木材の種類から「ギター・ベースに使われる木材」をピックアップして、そのサウンド傾向まで学んじゃおう、というのがこの「ギターで使われる木材事典」です。

木材事典①

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さっそく行きましょう。全部で何回になるかはまだ未知数ですが、とりあえずスタートしちゃいます。五十音順に「あ」から始めていきます。最終回にはまとめようと思いますが、それまでじっくりお付き合い下さい♪
ちなみに、木材データの「強度」は6段階で表しています。一番やわらかいのが1で6に行くに従って強度を増します。

第一回目の今回は「あ行」の木材を取り上げます。
※一般的な木材を取り上げています。今回取り上げた以外でも「これは!」という物がありましたら、このシリーズの最後に追加で記載していきます♪

目次

アガチス ~Agathis~

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一見広葉樹の様に年輪が定かではない木目を持った針葉樹。木目だけを見るとマホガニーの仲間に思えますが、あえて例えるならアルダーに近い材。しかしアルダーよりも柔らかく、保存性は低い為にギター・ベースで使用される事は稀。しかしながらコスト面も抑えられるため、低価格のギターなどに使われることもあります。

比較的抜けてくる音質ではありますが、強度としては柔らかめなので、音のコシに欠ける部分は否めません。楽器として体を成すレベルではあるので、低価格でギター&ベースを製作、初心者の方々が楽器を購入しやすいという意味では、非常に優れた材とも言えます。ボディ材として使用されます。

ナンヨウスギ
アガチス
種類 常緑針葉樹
別名 アルマシガ/ダマルミニャク
産地 東南アジア
気乾比重 0.52
強度 2

~アガチスを使用したギター・ベース~

島村楽器オリジナルモデルとして、かつて製作されていたLumber LDG-10のバック&サイドはアガチス材でした。

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木材画像提供:府中家具工業協同組合様「木材図鑑」

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アッシュ(ホワイト・アッシュ) ~Ash/White Ash~

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主に辺材がこの様に白っぽいためホワイト・アッシュと呼ばれ、ギター・ベースで使用されます。(心材は色味が強いためブラウン・アッシュと呼ばれ、家具等で使用されます)

木目がしっかり出ることが多く、エキゾチックな雰囲気を漂わせます。また、アメリカ合衆国北部~カナダが産地であることから「ノーザンアッシュ」(Northern Ash)と呼ばれる事も。

重量は重く、非常に硬い材であるため、低域、高域がしっかり出てくる特性を持ちます。そのためベースや多弦ギターなど、低音を重視しながらも明瞭なサウンドを目指した楽器に使用されます。ボディ材として使用されます。

※ライト・アッシュ、ライトウェイト・アッシュに関しては次のスワンプ・アッシュの項で言及します。

モクセイ
トネリコ
種類 広葉樹
別名 ノーザンアッシュ/アメリカタモ/アメリカトネリコ
産地 北米北部~カナダ
気乾比重 0.69
強度 5

~ホワイト・アッシュを使用したギター・ベース~

木材画像提供:府中家具工業協同組合様「木材図鑑」

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アッシュ(スワンプ・アッシュ) ~Ash/Swamp Ash~

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先述のホワイト・アッシュと根本的な違いはないものの、産地と比重において相違なものです。ホワイト・アッシュに比べて少し黄色がかった色をしているために、パンプキン・アッシュとも呼ばれます(本来の樹種名はパンプキン・アッシュと言うのですが、ギター界ではスワンプ・アッシュの方が有名な名前になってます)。 ホワイト・アッシュ同様アメリカ産ですが、南東部で採れるのがスワンプ・アッシュ。
木目はホワイト・アッシュよりもおとなしく、50年代のFenderギターによく使用されたのが楽器流通の始まりです。

高域特性に優れている点はアッシュの特徴ですが、ホワイト・アッシュに比べて低域が弱く、逆に中域にピークがあります。サウンドのイメージはやはりストラトやテレキャスといったギターが代表格。(アッシュボディのもの) ボディ材として使用されます。

モクセイ
トネリコ
種類 広葉樹
別名 ライトアッシュ/アオダモ/ビロードトネリコ
産地 北米南東部
気乾比重 0.54
強度 4

~スワンプ・アッシュを使用したギター・ベース~

木材画像提供:(株)ディバイザー様

※ライト・アッシュ、ライトウェイト・アッシュ

ライト・アッシュというものは、単に「軽いアッシュ材」という通称名。ホワイトであってもスワンプであっても軽ければ「ライト・アッシュ」なのです。

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アッシュ(ジャパニーズ・アッシュ) ~Ash/Japanese Ash/セン~

sen
アッシュの仲間である栓(セン)。それ故にジャパニーズ・アッシュという名でも流通している木材です。アメリカからの輸入と違い産地が国内であること、また成長速度が速いということから、比較的安価に入手できます。そのため安価なギターの材料として使用される事もあります。

センは「アッシュの仲間」ではなく「アッシュの仲間とよく言われる」が正しい表現です。実際、アッシュはモクセイ科トネリコ属性、センはウコギ科ハリギリ属の樹のため全くの別物です。
※訂正2016年6月22日追記

またホワイト・アッシュスワンプ・アッシュほどの強度はないため、音の明瞭度は少々落ちます。中域が強調され、高域と低域はすこしボヤけたような特性になりがちです。ボディ材として使用されます。

ウコギ
ハリギリ
種類 広葉樹
別名 栓/セン/タランボセン/カスターアラリア/トネリコ
産地 日本、東アジア
気乾比重 0.5
強度 3

~ジャパニーズ・アッシュを使用したギター・ベース~

現在はあまりジャパニーズ・アッシュのギターは生産されていないようですね。そんな中FERNANDESの海外仕様モデルが島村楽器に入荷したこともありました。

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木材画像提供:府中家具工業協同組合様「木材図鑑」

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アルダー ~Alder~

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メイプルローズウッドマホガニー等と並ぶ、ギター・ベース、特にエレキギター&エレキベースで頻繁に使用される木材です。特に使用されるのは「レッドアルダー」と呼ばれる、アメリカ&カナダの太平洋海岸に生息するもの。(他にも日本、ヨーロッパ、ロシアを産地としたアルダーも存在します)

強度は3で、比較的柔らかく加工しやすいのが特徴。しかし乾燥までの時間も短く、より早く材が安定するため、ギター・ベースの材として適しています。

Fenderのストラト、テレキャス、ジャズベ、プレベといえばアルダー材を使用した物が多く、Fender系の楽器の代名詞にもなっています。サウンド傾向もアッシュのそれとは違い、高域成分が少々抑えられて、中~低域にピークのある安定したサウンドになりやすいので、Fenderにとどまらず非常に多くの楽器で使用される材です。ボディ材として使用されます。

カバノキ
ハンノキ
種類 広葉樹
別名 レッドアルダー/ウエスタンアルダー
産地 北米、カナダ
気乾比重 0.4~0.5
強度 3

~アルダーを使用したギター・ベース~

木材画像提供:フジゲン(株)様

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ウェンジ(ウェンゲ) ~Wenge~

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非常に硬い木材。アフリカ中部に生息するものをウェンジと呼び、東南アジア産のものはタガヤサンと呼ばれます。比重も大きく、比較的重くなってしまうため、強度を上げたり指板材としてサウンドの特性を決めたりといった使用方法が主流。Warwickにはウェンジ製のネックも存在します。

硬度が高いので、音質も非常に明瞭になる傾向があります。ローズウッドエボニーの中間に位置するようなイメージです。

マメ
ミレシア
種類 広葉樹
別名 ジゲラ/タガヤサン(アジア産)
産地 中央アフリカ
気乾比重 0.79~0.88
強度 6

~ウェンジを使用したギター・ベース~

木材画像提供:フジゲン(株)様

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ウォルナット ~Walnut~

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一般的に楽器業界で使用されているのはブラック・ウォルナットという種。別名アメリカン・ウォルナットというだけあって、基本的にはアメリカの中央部が産地。その他のヨーロピアン・ウォルナット、カナディアン・ウォルナット等はそれぞれの国で採ることが出来ます。

世界的に銘木と称されるウォルナットですが、乾燥後の狂いも少ない事、また割れにくく硬質なため、立ち上がりの早い音の傾向があります。

ギター・ベースのネックをメイプルと組み合わせて3ピース、5ピース、7ピースにする際に使用されることが多くあります。ベースではスルーネックの強度補強のために使われたり、ボディ材として使われたりと、幅広く使われています。またアコギのバックとサイドの材としても使用されます。非常に使用用途の広い材と言えます。

クルミ
クルミ
種類 広葉樹
別名 ブラック・ウォルナット/アメリカン・ウォルナット
産地 アメリカ中央部(東部・カナダ)
気乾比重 0.64
強度 5

~ウォルナットを使用したギター・ベース~

木材画像提供:(株)ディバイザー様

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エボニー ~Ebony/黒檀~

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直径が18cmに成長するまでに200年かかると言われる希少な樹木であり、さらにエボニーと言えばイメージする漆黒の部位は心材のみ。辺材は白いため漆黒のエボニーは希少で、高価になります。真っ黒のエボニーを「本黒檀」とも呼びます。

音響特性はその硬度が物語るとおり、立ち上がりの良いタイトなサウンド。アタックが明瞭になります。

ギター・ベース全般の指板として使用される事がほとんどです。
また元々希少な材である上に、現在は採取も難しくなってきていることから、リッチライト(いずれ触れます)という人工エボニー材もギターの指板に採用され始めています。

カキノキ
カキノキ
種類 広葉樹
別名 エボナイト/黒木/黒檀
産地 インド~東南アジア
気乾比重 1.16
強度 6

~エボニーを使用したギター・ベース~

木材画像提供:フジゲン(株)様

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エボニー(マッカーサー・エボニー) ~Macassar Ebony/縞黒檀~

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通常の本黒檀同様の産地、傾向ではありますが本黒檀と比べれば入手しやすい材といえます。黒檀でありながら縞模様があることから「縞黒檀」とも呼ばれ、珍重されます。

サウンド特性は本黒檀同様。指板に主に使われるほか、ボディTOP材としても使われます。

カキノキ
カキノキ
種類 広葉樹
別名 縞黒檀
産地 インド~東南アジア
気乾比重 1.16
強度 6

~マッカーサー・エボニーを使用したギター・ベース~

木材画像提供:Strictly 7 Guitars

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エボニー(カリマンタン・エボニー) ~Kalimantan Ebony~

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楽器業界ではあまり耳にしない名のエボニーですが、れっきとしたエボニー材の仲間。インドネシア・カリマンタン島に生息する黒檀です。心材は縞黒檀の様に黒い縞模様が表れますが、縞黒檀よりも縞の間隔が広めなのが特徴。

こちらも非常に硬質で強靭なため、エボニー同様エッジの効いたサウンドが得られます。

指板材に使われることがあります。

カキノキ
カキノキ
種類 広葉樹
別名 カリマンタン黒檀
産地 インドネシア カリマンタン島
気乾比重 1
強度 6

~カリマンタン・エボニーを使用したギター・ベース~

木材画像提供:フジゲン(株)様

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オバンコール ~Ovankol/オヴァンコール~

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強度はマホガニーと同等程度の広葉樹。アフリカを原産としており、ブビンガと同属、ウォルナットによく似た材として認識されています。エボニー同様、辺材は白く心材のみこのような縞模様が入っていて、高級家具にも使用される材です。

サウンド傾向もウォルナットのように立ち上がりが速め。

アコギのサイド&バック材として主に活用されています。WarwickやIbanezでネック、さらにボディ材としても使用しています。

マメ
ブビンガ
種類 広葉樹
別名 オヴァンコール/オバンコル
産地 アフリカ
気乾比重 0.73~0.85
強度 4

~オバンコールを使用したギター・ベース~

木材画像提供:府中家具工業協同組合様「木材図鑑」

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オリーブ ~Olive~

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地中海沿岸やアフリカで採れる材。重く、硬質で耐久性にも優れていますが、ギターに使用される事は比較的稀。「オリーブオイル」はこのオリーブの果肉から採取されますが、木材自体の油成分も比較的高い樹です。

硬い材ではあるものの、暖かく柔らかい音色が特徴です。

モクセイ
オリーブ
種類 広葉樹
別名 オリーブウッド/イーストアフリカンオリーブ
産地 地中海沿岸・アフリカ
気乾比重 0.85
強度 5

~オリーブを使用したギター・ベース~

FoderaやDragonflyなど、ハイエンドメーカーがボディトップに使用する事の多い材です。

木材画像提供:(株)ハリーズエンジニアリング様

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まとめ

いかがでしょうか? これまで聞いた事もなかった材もありましたか? マッカーサー・エボニーなんかは中々見かけない、もしくは「エボニーなのにローズみたい」なんて思っていませんでしたか? それぞれの材の特徴を知っておけば、その組み合わせでその楽器がどんな音で鳴るのか、おおよその予想をつける事も出来ます。ぜひ皆さんも材について知っていって下さい。

次回は「か行」の木材を取り上げます。

木材画像提供

木材事典シリーズ

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