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【インタビュー】UNCHAIN谷川正憲が語る新たな創作と機材へのこだわり|ドン・グロッシュ氏の職人魂 特別編

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“知る人ぞ知る”アメリカのギターブランド“Grosh Guitars(グロッシュ・ギターズ)”についてご紹介する本連載。

今回は特別編としてバンド・UNCHAIN(アンチェイン)でボーカル&ギターを務める谷川正憲氏にお話を伺ってまいりました。今月末に約2年半ぶりとなるオリジナルアルバム『Animal Effect』のリリースを控えているUNCHAIN。普段のライブはもちろんのこと、新作のレコーディングでもGrosh Guitarsを多用したという谷川氏に、創作と機材へのこだわりについて聞きました。

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NEWアルバム『Animal Effect』について

まずは『Animal Effect』というアルバム名の由来をお聞かせいただけますか?


インディーズデビューから25年間、UNCHAINというバンドを4人体制でやってきました。
昨年、ギターの佐藤くんが脱退する事となったので、今回は3人体制で初めてのアルバム制作となりました。

でも実はインディーズデビューするまでは3人体制で活動していて、その頃に戻った感覚を覚えました。
当時を振り返ってみると、あまり難しい事は考えずに感覚的に音楽をやっていましたね。

なので今回は初めてバンド組んだ時のような衝動的な感覚を大事にして作品を創りたいという想いから『Animal Effect』というタイトルを付けました。

実際に今まで150曲近く制作してきたのですが、ライブのために既存曲を1からアレンジし直したりもしました。
11枚目のオリジナルフルアルバムでもあり1枚目、原点回帰のような想いも込められています。

3人体制になった事で特に大変だった事は何ですか?


やはりリードギターとコーラスを務めていた佐藤くんの存在は大きいですね。
簡単には「抜けたから代わりを」という訳にもいかないので、抜けた穴をどう埋めるかではなく3人だからこそできる事は何か、を考えて制作に臨みました。

その一つとしてベースの谷くんの存在感をどう活かすか、という事はかなり意識しました。
実は3人体制時代は僕と谷くんのツインボーカルをする事もあって、それを復活させたり、ベースのフレーズが注目されるような曲のアレンジを考えました。

5曲目の“Not Too Late”の2サビ直前のベースフレーズは特にお気に入りですので是非聴いてみていただきたいです。

アルバムを制作する上で一番最初に採用された曲は何ですか?


2曲目の“Choices”は3人体制になって初めて作った曲で、比較的早いタイミングで採用になりましたね。
あとは1曲目の“Elephant Ship”、3曲目の“Wait For The Sun”なども制作の序盤で決まりました。

“Choices”は3人体制で初めて作った、との事ですが制作時のエピソードなどお聞かせいただけますか?

これは2020年春、ちょうど1回目の緊急事態宣言下に制作していた曲で、なかなかメンバーと会う機会が作れませんでした。
スタジオに入る機会も減ってしまったので、様々なスタイルを模索中ですが、リモートでのセッションを試してみたりもしました。
そのような制作面での難しさはありましたが、グルーブ感のある曲に仕上げる事ができました。

“Elephant Ship”と“déraciné”が「前(希望)に向かって進んでいく」という同じコンセプトを持った曲だと感じました。

実はこれはたまたまなんです。
“déraciné”は単体で元々制作していた曲だったのですが、アルバムのセットリストを考えている中で1曲目に“Elephant Ship”の採用を決めた際に、“déraciné”のストーリーが“Elephant Ship”で描かれている、UNCHAINの「新しい船出」に通ずるなと感じたんです。

その後、1曲目に“Elephant Ship”、アルバムの最後の曲に“déraciné”を入れる事を決めたのですが、実は“Elephant Ship”の最後の行の歌詞を直前で変えてレコーディングを行ないました。

“déraciné”と同じように「旅はまだ続く」という内容に変えていて、人生において過去は必ず何かしらの未来に繋がっていて、時代や環境が変わって楽しい時期だけでなく、つらい時期があっても前を向いて進んでいけるんだという事を表現しました。

“Elephant Ship”ミュージックビデオ

その昔、雷に打たれても沈まなかったという伝説がある戦列艦の名前をタイトルに掲げた、アルバムのリード曲。
人生を航海に例え、「困難や不安の中でも“Take it easy(落ち着いて)”、一歩ずつ着実に歩みを進めていく。そうすれば必ず未来には希望が広がっている。」というメッセージが込められている。

今回はゲストアーティストの参加もトピックの一つですね。


やはり3人体制になった事で仲間の力を借りたいな、という想いはありましたね。
色々なアイデアはありましたが、その中から厳選をして今回のゲストアーティストに依頼をさせていただきました。

特に僕の場合は女性の詞を歌わせていただく際にすごくしっくり来る時があるので、最近一緒に演奏もさせていただいていて、めきめき頭角を現している竹内アンナさんに協力をお願いしました。
BRADIOもかなり付き合いは長いのですが、僕たちが活動してきた中ですごく実力の高さも感じるし、一緒に作品が作れたらよりパワーのある物になるのではないかと思い、お願いしました。

僕たちもすごくパワーというか、良い刺激を受けて楽曲制作に臨めたので、3人体制の新たな船出にふさわしい楽曲が生み出せたなと感じています。

7曲目の“Roar”は前作『LIBYAN GLASS』に引き続き2作目のドラムの吉田さんによる作曲ですね。


吉田くんは実は一番アーティスト性を持っていると思うんですよね。感性が鋭敏というか。
彼は絵を描いていて、吉田画伯なんて呼ばれたりしているんですけど、小学生の頃から同じ絵なんですよね。

当時はあまり気にしていませんでしたが今見てみると僕の目にはすごくアートに見える。
何とも言えない感覚なのですが、この何とも言えないのがアートだと思うんです。

ベースの谷くんを目立たせていくという事にも絡みますが、今まではあまり積極的に曲を提案してこなかった彼がどんどん提案をしてくれる事で、よりバンドとして表現の幅や深さを高めていけるのではないかなと考えています。

使用している機材について

今回のアルバム制作にあたって最も使用したギターは何ですか?


レコーディングで一番使用したのはGrosh Guitarsのテレキャスタータイプですね。
抜け具合と低音の鳴り方が僕らのような楽曲、カッティング主体のフレーズには非常に合うなと感じているのですが、このギターに関しては「合わない楽曲はない」と感じてしまうくらい気に入っています。

割と全曲通して使用しましたが、"Wait For The Sun"のカッティングフレーズはこのギターの音が分かりやすいと思います。

隣には同じくGrosh Guitarsのストラトキャスタータイプもありますね。


やはりストラトキャスタータイプの魅力はスプリング感だと思っていて、テレキャスタータイプとの対比で使用しました。
“Wait For The Sun”ではハーフトーンで細かく動くフレーズを弾いていて、“Choices”ではどちらも同じくらい使いました。

同じシングルコイルのギターでも音像が違うので、良いバランスでアンサンブルが創れました。

Grosh Guitarsはどういう経緯で知ったんですか?


これも本当にたまたまで、ストラトキャスターを探していて色々試奏をしていたのですが、そのうちの一本という感じです。

僕は見た目よりサウンドで楽器を選んでいて、どうしてもライブやレコーディングなど現場で即戦力になるか?という側面から考えると、弾き込まれていて既に鳴る状態のユーズドの楽器に興味を持つ事が多いのですが、Grosh Guitarsに関しては新品の時からとてもしっくりきて即戦力でした。

Grosh Guitarsのここがすごい!というところはありますか?


やはり「音が太いのにアンサンブルで抜ける」というところですかね。
音の太さだけで言うとレスポールや335も太いですが、少し抜けにくかったりするんです。

しかもGroshは特別ピーキーな帯域がなく、極端なイコライジングをする事なく使えます。
ピッキングのニュアンスにもすごく反応してくれるので、表現力の幅がとても広いですね。

他のブランドのテレキャスターやストラトキャスターと比べたときのインプレッションなどございますか?

例えば同じようなトラディショナルなルックスのブランドだとサウンドや演奏性がヴィンテージに寄り過ぎてしまう事があるんです。

Groshはトラディショナルなだけでなくて少しモダンな要素も含まれていて、ハイブリッドな感じなんです。
それでいて、いわゆるハイエンドギターのようなカチッとした感じが大げさではないので非常に弾きやすく、サウンドも使いやすいです。

アンプやエフェクターは何を使用されましたか?


機材は好きで色々試しています。特に昨年は色々試して、ようやく今の機材たちにフォーカスされてきたという感じです。
歪みエフェクターだとVEMURAMのJan Rayは非常に優秀で、よく使用します。

元々それほど歪むエフェクターではないですが、僕はさらに歪みを抑えて使用していて、他の歪みエフェクターと組み合わせて使っています。
歪むか歪まないかくらいのゲインで薄くかける、みたいな音が好きですね。

コンプレッサーはDemeterのものが好きでよく使用します。
これも薄がけで少しだけ弦の音にコーティングがされるというか、ワントーン上質になる感じが好きです。

アンプはGROOVE TUBE製のものを使っていてセンドリターンにDumbleのOverdrive Specialを再現したプリアンプを入れて、少しだけ歪みを加えて、艶感が出るようにしています。

なので基本の音で純粋なクリーンって実はあんまり使わないですね。

純粋なクリーンをあまり使わないメリットは?


ギターとアンプの組み合わせもあると思うんですけど、クリーンの音ってとてもレンジが広いんですよね。

でもオーバードライブを踏むと一気にレンジが締まるというか、音色の方向性が変わってしまうというのが気になってしまうんです。
なので基本のクリーンを少しだけ歪ませておくとオーバードライブを踏んだ際にもレンジ感が変わらずに音にパンチを加えたりできるので音作りでは意識しています。

バンドの音楽性や活動について

谷川さんの音楽的ルーツをお伺いできますか?


僕個人はビートルズとスティーヴィー・ワンダーに一番影響を受けました。
実はビートルズバーで働いていた事もあり、恐らく知らない曲もないのでは、というほど好きですね。

UNCHAINのバンドとしての多ジャンル性という部分に関してはカーク・フランクリンというゴスペルアーティストに影響を受けていて、ジャンルはゴスペルなのですがヒップホップやソウルミュージックの要素が含まれていて好きですね。

ギタリストとして影響を受けた方はいますか?


ギターは何と言ってもラリー・カールトンですね。

僕はギターはブルースフィーリングが大事だなと思っていて、ブルースやジャズ、フュージョンのエッセンスが彼のギターからすごく感じるんです。
なので僕も中心はペンタトニックでたまにドリアンやオルタードを入れるという感じで弾く事が多いです。

曲作りのコツはありますか?

先ほどのブルースフィーリングにも関連してますが、ツーファイブの使い方やドミナントモーションの挟み方で工夫をしています。

でも困った時は逆にフレーズを単純化させたりもしますね。
色々詰め込み過ぎてしまうと後からコーラスだったりギターとぶつかってしまったりするのでコードにテンションを加えるのもワンポイントにしたりします。

特に今回のアルバムに関しては3人体制になって物理的に複雑な事ができなくなったからこそシンプルな方向に考える事で深さを出せるんじゃないかなという想いで制作に臨みました。

バンド結成25年目という事ですが、バンドを長く続けるコツはありますか?


今になって思うのはメンバーのプライベートな部分まであまり干渉し過ぎない、という事ですかね。
あまりあれもこれもとなってしまうと親と子の関係というか、反抗期のようになってしまうと思うんです。

もちろん最初からだと上手くいかない事もあると思いますが、ある程度時間が経過したらメンバーの自主性みたいなものを尊重していく事でそれぞれがきちんと自分の人生を歩めるし、バンドとしての幅も広げられると考えています。

今後やっていきたい事はありますか?


やはりライブなど生で音楽を届けられる場を作っていきたいですね。
音楽ってとても感覚的なもので、聴く人によって感じ方が全然違うし、生で聴くとまた印象も変わるし、得られるものも大きいと思ってます。

活動が制限されたからこそ気付けた事かもしれませんが、音楽を生で聴ける場が縮小していってしまうのはやはり悲しいので、これからも模索していきたいなと思います。

レコーディング使用機材

エレキギター


左からGibson ES-335(ラリー・カールトン シグネチャーモデル)、Grosh Guitars Retro Classic Vintage T、Grosh Guitars NOS Retro、HISTORY HS-LS

エフェクター


①カスタムジャンクションボックス
②TRIAL製 ABボックス
③TRIAL製 Bite Distortion(ディストーション)
④Demeter製 Opto Compulator(コンプレッサー)
⑤Limetone Audio製 focus(コンプレッサー)
⑥Fulltone製 CLYDE(ワウ)
⑦Limetone Audio製 LTV-30(ボリュームペダル)
⑧BOSS製 EV-30(エクスプレッションペダル)
⑨KORG製 pitchblack Portable(チューナー)
⑩VEMURAM製 Jan Ray(オーバードライブ)
⑪JHS Pedals製 Morning Glory(オーバードライブ)
⑫Zahnrad by nature sound製 ZVKC(オーバードライブ)
⑬Line6製 M5(マルチエフェクター)
⑭SOURCE AUDIO製 COLLIDER(ディレイ・リバーブ)
⑮MusicomLAB製 EFX MK-V(スイッチャー)

アンプ


GROOVE TUBE製 SOUL-O
アンプ上部にはDumble Overdrive Specialクローンのプリアンプをセッティング

『Animal Effect』リリース情報


バンド結成25年⽬に突⼊したUNCHAINの約2年半ぶりとなるオリジナルアルバム。
2020年のメンバー脱退を経て、新体制で制作された今作は、バンドキャリアに裏打ちされた熟練の技と卓越したメロディーセンスを基本としつつ、新たなUNCHAINがいかんなく表現されている。
盟友:⽵内アンナ、BRADIO・真⾏寺貴秋(Vo)/⼤⼭聡⼀(Gt)も楽曲参加した快作が誕⽣。

リリース日 2021年3月31日(水)
販売価格 ¥3,300(税込)/¥3,000(税抜)
レーベル CROWN STONES
商品番号 CRCP-40624

収録曲

1. Elephant Ship
2. Choices
3. Wait For The Sun
4. Touch My Soul
5. Not Too Late
6. Like A Star
7. Roar
8. Dark Horse
9. Dear Jay
10. Dive Into Deep
11. Stay Broken
12. déraciné

『Animal Effect』について詳しくはこちら

UNCHAINプロフィール


L→R:⾕ 浩彰 (Ba/Cho) / 吉⽥昇吾 (Dr) / ⾕川正憲 (Vo/Gt)

 

ジャズやソウルミュージック、フュージョン、更にはシティポップス的なエッセンスまでを絶妙にブレンドしたグルーヴィーなロックを鳴らす京都府出⾝の 3ピース・バンド。

1996年、中学の同級⽣だった⾕川正憲(Vo/Gt)、⾕浩彰(Ba/Cho)、吉⽥昇吾(Dr)の3⼈で結成。
後に1年後輩の佐藤将⽂(Gt/Cho)が加⼊。

2005年インディーズ・デビューし、2枚のミニアルバムをリリース後、2007年にメジャー・デビュー。
ボーカル⾕川の圧倒的な歌唱⼒と確かな演奏⼒は、国内ロックバンド勢の中でも唯⼀無⼆の存在として独⾃の地位を確⽴している。

2020年6⽉に佐藤将⽂(Gt/Cho)が脱退。結成当時のオリジナルメンバーのみでリスタートを切る。
2021年3⽉、新体制初のオリジナル・アルバム『Animal Effect』をリリース。

バンド結成25年⽬を迎えながらも、常に新境地を拓くUNCHAINから⽬が離せない。
UNCHAIN 公式ウェブサイトはこちら

各種Grosh Guitars、お取り扱い中

島村楽器では谷川氏が愛用しているRetro Classic Vintage TやNOS Retroに加え、様々な仕様のGrosh Guitarsを取り扱っております。皆様の演奏スタイルやお好みに合った一本を是非お探しください。

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また、Grosh Guitarsはカスタムオーダーも可能です。
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「テレキャスタータイプでこんな仕様ができないかな?」もしくは「谷川さんと同じ仕様でオーダーしたいな」などご要望ございましたら、お気軽にお近くの島村楽器までお問い合わせくださいませ。

さいごに

いかがでしたでしょうか?

今回は特別編としてUNCHAINの谷川正憲氏に、アルバム制作秘話に加えてGrosh Guitarsの現場での使用感、さらにはアンプやエフェクターを含めた音作りのコツに至るまで、貴重なお話をお伺いしました。UNCHAINの音へのこだわりが溢れた『Animal Effect』をお楽しみに。併せて第一線で活躍するアーティストが認めるGrosh Guitarsのサウンドに耳を傾けてみてください。

それではまた次回の特集でお会いしましょう。
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撮影協力

撮影:TAISHO

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