島村楽器が輸入代理店を務めているブランドの一つに“Grosh Guitars(グロッシュ・ギターズ)”というものがございます。日本を含むアジア圏では“Don Grosh”というブランド名でも知られていますが、同一ブランドです。
あまり耳慣れないブランドかもしれませんが、創業者兼ビルダーであるドン・グロッシュ氏は1本1本こだわり抜いてギターを造る方針なので、どうしても流通量が限られてしまい、島村楽器でも全国約10店程度でしか常時展示できていません。
また、華やかなプロモーションに資金を投じる経営方針ではないことも相まって「知る人ぞ知る」ブランドとして地位を確立していますが、「日本のギタリストにももっとGroshの良さを知っていただきたい」という想いから、当ギタセレにおきまして“ドン・グロッシュ氏の職人魂”と銘打ち、Grosh Guitarsについて様々な角度から解説していきます。
記念すべき第一回目はずばり“Grosh Guitarsってどんなブランド?”というテーマで、ブランドの概要・歴史についてご紹介いたします。
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Grosh Guitarsの概要
米国コロラド州デンバーに工房を構えるコンポーネント系ギターブランドで、ドンと数名の技術者によって手作業で造られております。
生産本数が限られており、日本には1年で20本程度しか入ってきません。必然的に日本国内におけるブランド認知は高いとは言えませんが、米国ではSuhrやTom Anderson、James Tylerなどと肩を並べるブランドとされております。
主な使用アーティスト
Grosh Guitarsは米国で活躍するベテランアーティスト、スタジオミュージシャン、ツアーギタリストを中心に愛用されています。
・Mark Lettieri(Snarky Puppy)
・宮脇俊郎
・佐藤将文
・Steve Miller
・Erik Walls (Michael Jackson, Mariah Carey, Jay-Z, Kanye West and etc)
・Matthew Charles Heulitt (Sting, Sammy Hagar, Carlos Santana, Keiko Matsui and etc)
・George Pajon Jr. (Black Eyed Peas / Fergie)
Grosh Guitarsの歴史
誕生~ギタービルダーになるまで
ドン・グロッシュ氏はカリフォルニア州ロサンゼルス生まれ。父親がハリウッド映画のセットを作るショップを経営しており、ドンも高校卒業後そこで働き、木工や塗装、金属加工の経験を積みました。
その後ゼネコン(総合建設業)へ転職。当時からその腕は評価されており、マイケル・ジャクソンやポール・マッカートニーの自宅の工事を手がけた事もあったそうです。
しかし元々ギタリストでもあったドンは趣味としてギター製作もしており、ギターが何よりも好きでした。
1985年のある日、ドンは自作のギターを片手に、ロサンゼルスのカスタムギターブランド兼リペアショップ”バレーアーツ”の面接を受けたのです。
バレーアーツ時代~独立まで
晴れて採用となったドンは1985年に”バレーアーツ”に加入。リペア部門を経て、後に工場長になりました。バレーアーツは80年代~90年代初頭にかけて、ラリー・カールトン、リー・リトナー、スティーヴ・ルカサー(元TOTO)、ジェイ・グレイドン、ヴィンス・ギルなど名立たるギタリストを顧客に抱える有力ブランドでしたが、こうしたアーティストとの案件を通してドンは「徹底的にこだわるギタリストの要望を聞き、実現のために考え抜き、トライ&エラーを繰り返す事で、トッププロが求めるギターとは何か?を学ぶ事ができた」と話しています。
またリペアの仕事を通して数多くの楽器に触れ、大手ブランドや、高額で取引されるヴィンテージギターの良い点・悪い点・改良すべき点といったノウハウを蓄積していきました。
James TylerやTom Andersonなど80年代南カリフォルニアを代表するビルダーが人気を博す中、いわゆる「カスタムハイエンドギター」のビルダーの一人として、ドンも評価されていきましたが、1990年にバレーアーツ工房は放火に遭った事を発端に経営状態が悪化。
その余波を受け1992年に一部株式を売却。経営方針が変わり、ギター制作の方針が大量生産へ移行した結果、ドン含め多くの技術者が離散してしまいました。
Grosh Guitars創業
バレーアーツを離れたドンは、納得のいく品質のギターを1本1本創り上げるべく、1993年に自らのブランド“Don Grosh Custom Guitars”を創業しました。
また2007年頃、ドンは社名・ブランド名を“Grosh Guitars”に変更しましたが、今でも“Retro Classic”など一部モデルのヘッドストックには“Don Grosh”とロゴが入っています。
こうした背景もあり、日本国内ではまだ“Don Grosh”そして“Grosh Guitars”両方のブランド名が使われています。
先人達が築いてきた伝統を重んじながらも、バレーアーツで得られた楽器製作のノウハウや、トップミュージシャンとともに仕事をしてきた中で得られた経験を活かし、創業から今日に至るまで妥協なく一本一本作り続けています。
最後に
いかがでしたでしょうか?今回はブランドの概要、歴史について簡単にではございますがご紹介いたしました。
長年、様々なギターを販売してきた島村楽器が「輸入してでも取り扱いたい」と考え、代理店となった“Grosh Guitars”、ギタリストの方には是非一度お試しいただきたいです。
今後はGrosh Guitarsの楽器としてのこだわり・魅力なども当ギタセレにてご紹介していきますのでお楽しみに。
それではまた次回の特集でお会いしましょう。
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