「アコギと出会う。」チェコ特別編・前編 【Furch Guitars Factory Tour 2025】

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「アコギと出会う。」チェコ特別編・前編 【Furch Guitars Factory Tour 2025】

記事中に掲載されている価格・税表記および仕様等は予告なく変更することがあります。

ギタセレをご覧の皆様こんにちは。島村楽器の荒木です。

普段は所属するアミュプラザ博多店にてシリーズ連載をしているブログ「アコギと出会う。」を今回特別にギタセレに掲載頂けることになりました。
先日の発表にもある通り、3月より島村楽器はチェコのギターメーカー、Furch(フォルヒ)とInternational Dealer契約を結びます。
それに際してFurchよりファクトリーツアーのお誘いを頂きましたのでその様子をお届けいたします!

羽田からロンドン・ウィーンを経由し陸路でブルノへ

国際線といえば羽田空港第3ターミナル。弊社バイヤーの薄葉、古川と合流し諸々の手続きを済ませていきます。
チェコへの直行便は無いためまずはロンドンへ約13時間のフライト。そこからウィーンへの飛行機へ乗り換え約2時間半のフライトを終えた後、陸路でチェコを目指します。

今回はJALを利用させていただきます。機内ではFurchの新しい仕様などを予習しつつ、映画などを見て過ごします。

経由地のロンドンへ無事に到着しました。あまりイギリス感はありませんがせめてこの空気を楽しんでおきます。。

乗り継ぎのフライトを終えて無事にウィーンへ入りました。ここからはFurchの海外セールスマネージャーであるホセ氏に案内をいただき陸路でチェコのブルノという町へ向かいます。

長旅を経てようやく滞在地であるチェコ・ブルノへ到着です。日本を出てからおおよそ24時間かかりました。なかなか遠い土地へ来てしまったなと感慨深くなりつつ明日からのファクトリーツアーへ向けてしっかり休息をとります。

DAY1 【Furch Factory Tour & Inspection】

ホテルでの朝食を済ませて早速Furchへ向かいます。

とても美しい街並みです。。日本では絶対に見られない光景だと思いますのでしっかり目に焼き付けます。

Furch Guitarsはここブルノから車で20分ほどにあるニェムチツェ村にあります。
車に揺られているとまた街並みが変わっていきます。長閑な風景になってきたところでようやく見えてまいりました!

赤い屋根と白塗りの壁がとても良い雰囲気でなんだかどこかのテーマパークに来たような感覚になります。(実際ある種テーマパークみたいな気も致しますが。。!)
私自身、長年Furchのファンでもありましたのでこの地に足を踏み入れられることを光栄に思います。

まず案内されたのはFurchの歴史ごとまるっと体感できるショールーム。

先代であるフランティセク氏が最初に製作したギターも美しく鎮座しておりました。
Furchの歴史についてここでは多くは語りませんがとてもユニークであり、いつでもプレイヤーのことを第一に新しいことへ挑戦し続けるブランドのポリシーにはとても感動を受けました。
https://furchguitars.com/en/about-us/our-story/

現在発表されているほぼすべてのFurchの実機を試すことができ、あまり日本国内では見ることのないモデルなどもその音色を体感することが出来ました!(こちらはVintageシリーズの一本)

Furch Factory Tour

ここからはFurch Guitarsがどうやって作られていくのかをいくつかのポイントに注目しながら見ていきましょう!
このこだわりを知ればよりFurchへの愛情が深まること間違いありません。。!

1.製材・木材管理へのこだわり

Furchではある程度サプライヤーにて製材、グレーディングされた木材を導入し使用しています。
そのままギター用の製材へ回して使っていくことも可能なのですが、ここでは均等に製材されたのち再度目視ですべての素材を確認し改めてグレーディングを行います。(マスターグレードやAAAグレードなど)
美しく整えられた木材たちはその後湿度管理・シーズニングを行うための部屋へ納められます。

Furchでは木材を強制乾燥はせず、加湿と乾燥を繰り返して含水率10%まで落としていきます。こちらはスチーム噴き出す湿度50%に保たれた部屋の様子。

その後隣接する湿度10%に調整された乾燥部屋へ移動し乾燥させます。乾燥しすぎた場合などはまた先程の加湿部屋へ戻り再度湿度を調整します。
それらの工程を何度か繰り返して木材の含水率を10%になるように管理していきます。
他工場で見られる強制乾燥の炉は使用せずに自然な乾燥を行うことで、永く安定する木材にチューニングしていきます。

Furch Pick UP!①自然な乾燥を目指し徹底的に管理されたウッドマテリアル。 

2.木工エリア (ボディ・ネック等各種製材)

含水率の調整を終えた木材たちはこの区画でギターの為の形へ製材されていきます。
ボディやネックなどの製材には大型のマシンがしっかりと導入されています。わずかな誤差でも音色や弾き心地にかかわる部分では誤差の無いオートマチックな製作を取り入れられています。これにより品質の管理も行われると同時に修正の手間も減っていくため非常に効率が良いとのこと。

マシンでの製作プログラミングはすべて現社長のPetr(ピーター)氏が行っており一貫してその精度の高さを裏付けています。
こちらはトップ材などの製材を行っている大型マシン。

ネックなどの製材にもこのようなマシンを導入されております。寸分違わず無駄のない製作を実現しています。これまでにGibsonやTaylorなどいくつかの工房を見てまいりましたが最新鋭の機械導入工程を良い塩梅で組み込んでいる印象を受けます。

その理由がオートマチックに製作する工程を8割程度とすると残りの2割程度に人の手を入れる部分を残しながら製作している点です。

各工程にハンドメイドで行う工程を組み込むことでまれに起こりうる機械的なエラーを目視で確認し都度対処できるほか、人間の審美眼をもって良い楽器、美しい楽器を作ることを可能にしています。楽器に温かみが生まれる気がしますね。

製材を終えたマテリアルは全てナンバリングされデジタルで管理をされていきます。これによりどの機種のどの部位が今どこの製作過程なのかを瞬時に確認することができ、非常に効率の良いシステムとなっています。

Furch Pick UP!② ハンドメイドとオートメーションのハイブリット工法

3. 組み込みエリア

このエリアではトップ材等へのブレーシング張りからボイシング、サイド材の曲げ作業、それぞれの組み込みまでを行います。
Furchのサウンドメイクの大きな部分を含むエリアとなります。ぜひその秘密を紐解いていきましょう。

Furch Pick UP!③ 各ボディサイズで異なるブレーシングスタイル

Furchではボディ形状によってどこにブレイシングを配置するかを研究し採用されています。写真のようにスピーカーで高周波、中域、低周波を鳴らし、その上に置いたボディTOPの上に塩を振ってどこが振動するか、どこに塩が集まるかを観察。それぞれの周波数で最も邪魔にならない場所にブレーシングを配置するように考えられていました。
それによってFurchでは形状が変わるとブレーシング形状も変化させる、という工法を取っています。
物理的な研究から新たな革新に挑む姿勢が見られます。

こちらはサイド材を曲げる装置。熱した木材をギターの形へと変貌させていきます。

曲げ終わった材にはヘッドとテールブロックを接着し、

カーフィングを取り付けさらに強度も高めていきます。こういった細やかな接着する場面はほぼ人の手によるものでした。
続けてトップとバックを取り付け箱の形になっていきます!

トップとバックを張る前に接着面が美しい状態化を計測され必要に応じでオートメーションでサンディングをかけられます。
その後ドッキングされほぼギターの形となって出てきます!

細やかなセル巻きはハンドメイドによる仕上げ。本体全体からするとわずかな部分ですがバインディングやパフリングがきれいなギターだとやはりオーラが違ってきますよね。

乾燥させて各部位が固定されたらはみ出した接着剤などを綺麗に取り除いたのち塗装工程へ入ります!

オートメーションによるベルトサンダーで細かな凹凸などをなくし美しく仕上げていきます。

塗装~最終工程エリア

塗装に関しては全てオートメーションにて行われます。Furchの塗装は非常に薄く仕上げられますが、強度もしっかり残していくことを考えられているためUV塗装を採用しています。
外観としても非常に艶やかで美しい仕上がりにもなるためFurchにとても適した塗装かと思います!

バフ掛けもしっかりプログラミングで管理。どの個体も誤差なく美しい仕上がりとなるためオートメーションを採用されています。

昨年より新登場したレッドサンバーストカラーもやはり美しいですね。。!

塗装後乾燥を終えたギターたちが最後の工程へと進んでいきます。
ここでは各種パーツの取り付けからセットアップ、検品、梱包を行っていくセクションです。

熟練のスタッフたちの手作業で全て行いますので細かなエラーなどもここでチェックを受けながら完成していきます。
特にボディとネックの取り付けに関しては一番大きなポイントがあるのですがここは後編の記事で深堀りさせて頂きます。。

検品を終えて出荷へ

一本ずつ目と耳と手で検品を行い丁寧に梱包され各国へ旅立っていきます!

長旅となりましたがファクトリーツアーはこれにて終了です。
Furchの培ってきたアコースティックギターへの美学がしっかりと垣間見えた革新的な工房でした。

夜はFurchチームとともにテーブルを囲みます。チェコはビール大国という事で早速乾杯。
ギター談義が盛り上がります!

明日はInternational Dealerとしてはじめて入荷させていただく個体たちを改めて検品させて頂きながら
Furchのセットアップについて学ばせていただきます。
よろしくお願いいたします。

後編の記事はこちら

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