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【今さら聞けない】エフェクターの基礎知識編 ~空間系エフェクター~

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空間系エフェクター

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空間系エフェクター、いわゆるギターの音に広がりを与えてくれるものです。
人によっては前回の「モジュレーション系」に区別したものも空間系の一部だと言う方もいるので、明確な区別はなかなか難しいところ。
特に今回はルーパーもこの空間系に入れてしまっていますので、もしかしたら「そりゃ違うだろ」ってツッコミもあるかもしれませんが、ここではひとまず空間系ということでご容赦ください。
(なぜ空間系に大別したかは後ほど...)

そもそも空間系エフェクターとはどういうものかというと、「サウンドに広がりを与えてくれるもの」。

  • 自分の部屋で声を出したとき
  • お風呂で声を出したとき
  • トンネルで声を出したとき
  • 山に向かって「ヤッホー」と叫んだとき

音の響き方はそれぞれ違います。
その響き方を再現しようとしたのが空間系エフェクターなんです。

ディレイ

まずはディレイの効果を実際に見てみましょう。
効果的にディレイを駆使してプレイしているギタリストとして有名なのはU2のEdge。
その流れを汲んだ付点8分ディレイの印象的なこの曲をどうぞ。

http://youtu.be/jcSqJ8nUgAM

イントロ、2回目のAメロ、サビと付点8分ディレイがステキ。

続いて80年代、ギタリストたちに多大な影響を与えたSteve Lukatherのディレイ。
先ほどのフレーズを作り上げるようなディレイとは違って、音に広がりを与えるためのディレイ。

http://youtu.be/EB-z4dpXJNI

これは2008年に発売されたLukeのソロアルバムのタイトル曲。
3:29あたりからのギターソロにかけられているディレイ、「これぞLukeの音」って感じです。(ディレイ音は左右に振られて、音にかなりの広がりを感じます。)

さらに、ディレイの特徴を生かしたこんな使い方も。

http://youtu.be/ZQgYn23Xvck

10:15あたりから。
Jimmy Pageが弓で音を会場に飛ばしているかのような演出。
これには皆あこがれました...(←あ。年齢バレる...)

ディレイの歴史

ではそんなディレイはどのようにして生まれて発展してきたのか、歴史を見てみます。

~世界初のディレイはLes Paulが発明!?~

まずはこの動画を見てみてください。

http://youtu.be/AWhRYevtEXU

ルーパーじゃないですか!
この動画は服装やレス・ポールの立ち振る舞い等考慮すると70年代かと想像しますが、コレを発明したのは1940年代らしいです。
その頃はステージ裏に置いたテープレコーダーで録音、再生を行っていたようで、ギターに付いていたのはコントローラー部分のみ。
あれ?
なんか聞いたことありますね?

そうです。
ディレイがまだ「テープエコー」と呼ばれていた時代は、このように
s-echo1
テープの録音と再生を繰り返してディレイ音を生み出していたのです。
そう考えるとレスポールの行っていたことはMTRであり、ルーパーであり、サウンド・オン・サウンドであり、ディレイなわけです。

テープで作り出すエコー効果だから「テープエコー」だったわけです。

~エコーマシン~

しかしテープエコーはBinson EchorecやMirano  Echo Chamber、ACETONE ECHO CHAMBER等発売され、Brian Mayなど数々のギタリストが使用し始めますが、当初は非常に高価でアマチュア・ギタリストにとっては夢の機材。
そんな中、またもや日本の企業が革命的な商品を世に送り出します。
s-re201
ドーン!
またRolandですね。
BOSS OD-1といい、Rolandはギタリストにとって無くてはならない歴史を作ってきているんですね~、スゴイ!

ちなみに中身はこんな感じ。
s-450px-RE201_Transport
エンドレステープに余分なテンションがかからず、通常よりもテープの寿命が長いという革命的なもの。
価格もアマチュアが十分買える価格だったそうです。
(それでもまだお高かったようですが...)

~またまた登場、BBD素子~

そしてコーラスの回でもお話したBBD素子が70年代に登場し、さらにその性能が上がって長い遅れを生み出せるようになると、もちろんそりゃあ作りますよね、ディレイ。
この頃からエコーは「ディレイ」と名を変えます。
BOSSから1981年に発売された世界初のコンパクト・ディレイ、“DM-2”。
s-dm2
これ以降、コンパクト・ディレイは隆盛を極めます。

~デジタルディレイの登場~

BBD素子を搭載したアナログ・コンパクト・ディレイが登場する3~4年前、Lexicon Prime Timeというラック式のディレイが発売されています。
これはBBD素子ではなく、入力された信号をA/D(アナログ/デジタル)変換してメモリに保存、再度D/A変換して再生、出力するというデジタル・ディレイでした。
しかし最長ディレイタイムは128ms(拡張メモリー搭載で256ms)という、今考えればなんとも物足りない機材。
それでもスタジオ機材として名を馳せていました。

そんな中、またもやRolandがやらかします。
SDE-2000を発売!
これはラックタイプのデジタル・ディレイ。
10万円前半で、最長ディレイタイム約300msと、これまでのデジタル・ディレイの常識を打ち破ったスペック。

そして1983年、さらにBOSSブランドでDD-2を発売!!
s-dd2

86年にはDD-2もモデルチェンジを行ってDD-3になります。
そのDD-3は今も現役で販売されている、超ロングセラー!
う~ん、ディレイ界でのRolandの偉業がスゴイ...

アナログ・ディレイとデジタル・ディレイの良し悪し

そうなんです。
みんな「なんとなく」なんです。
なんとなく、「アナログは音があったかい」「デジタルは正確」とかで区別して、なんとなく選んでる感じ。
ここでは明確にアナログとデジタルの良し悪しを判断します。

アナログは...

  • BBD素子(=バケツリレー方式)だと、どんどん水(音)が溢れて(劣化して)いく
  • フィードバック(音を繰り返し再生)していくと音質が劣化していく
  • ディレイタイムが揺れる(正真正銘、正確なテンポでフィードバックしない)
  • 上記劣化が、自然なエコー効果を生み、ギタリストにとって自然に聞こえる

デジタルは...

  • A/D、D/A変換を行うので、そのコンバーター次第で音質劣化は起こり得る
  • フィードバックしても音質劣化は無い(*劣化しているように再現するデジタル・ディレイも存在する)
  • 正確無比なディレイタイムが演出可能、最長ディレイタイムがアナログに比べて圧倒的に長い
  • 劣化が無いため、サウンドはクリアだが、無機質に感じうる(*同様)

「なんとなく」が意外と正解だったんだと分かりますね(笑)
70~80年代の、Steve Lukatherのような広がり感を、ウォームなサウンドで生み出したいならアナログ、U2のEdgeのようなディレイを駆使したプレイを楽しみたいならデジタル、と用途によって使い分けるのも良いかもしれません。

BOSS DD-3はなぜ今も現行製品なのか!?

ここまで来ると、DD-7という最新モデルがありながら、約30年も前に発売されたDD-3を今も販売し続けるのかが見えてきます。
そうです、DD-3は86年当時のA/D、D/Aコンバーターを使用しているため、「劣化」するのです。
DD-7が6.5秒というロングディレイを搭載していようが、40秒のループ演奏が出来ようが、その「劣化」具合を表現できるのはDD-3だからなのです!


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