皆さんこんにちは!
ギタセレ中の人です。
「エフェクター がわからない…」という入社したての時の私のような皆さんに送る【今さら聞けない】エフェクターシリーズ。
今回はフィルター系エフェクターの基礎知識をお送りいたします!
フィルター / ワウ
フィルターとは
「フィルター」という言葉の意味は、「濾過(ろか)装置」。液体や気体を濾過してゴミを取り除き、綺麗なものにする装置の事です。しかし、音楽的な意味でフィルターという場合は、「濾波装置」と訳すことが出来ます。その音の周波数全体の中で、一定の帯域をカット、ブーストしてサウンドを変化させるのが、フィルターです。
例えばこんな平均的な周波数の音があったとします。

これに、「ローパス・フィルター(「ロー:低域」を「パス:通過させる」「フィルター)」を通すと以下の様な周波数に変化します。

「ハイ:高域」部分はフィルターに引っかかって出てこない為、こもったようなサウンドになります。
ハイをカットするので、「ハイカット・フィルター」と同義語です。
では逆に、ハイパス・フィルター(「ハイ:高域」を「パス:通過させる」「フィルター」)を通すと…

低域成分がなくなった、古いラジオから流れてくるようなサウンドになります。
ローをカットするので、「ローカット・フィルター」と同義語です。

ちなみに、どの周波数帯を通すか可変できる(指定した周波数未満と、それより上をカットする)「バンドパス・フィルター」というものもあります。
これとは全く逆のカーブを描く(可変可能な特定の周波数帯のみをカットする)のが「ノッチ・フィルター」です。
ざっと見ただけでもこのようなフィルターの種類があります。
レコーディング機器等では一般的ですが、ギター・ベースではあまり聞きなれないかもしれません。
ワウの歴史
一通りフィルターについて理解が出来たところで、ワウの事も知っておきましょう。
まず、ワウの効果について、音で聞いてみます。
ジミ・ヘンドリックスが冒頭から左足でペダルを踏んで音を変化させていますね。
これがワウの効果です。
ワウの誕生にはAC30などのアンプで有名なVOXが重要なカギを握っています。

- 1960年代後半、VOXがAC30等のアンプを発売
- ビートルズがVOXを使用して世界的ヒット曲を数多く制作
- VOXアンプへの問い合わせが殺到
- VOXが生産体制強化のため、イタリアのJEN社に生産委託し、アメリカのオルガンメーカー、Thomas社と代理店契約
おや?
ここまではVOXアンプの単なるサクセスストーリー。
ワウとどういった関係が? とお思いでしょう。
VOXで最もスタンダードなアンプ「AC30」のコントロールパネルをご覧ください。

VOXアンプには、当時Fenderアンプに搭載されていたMIDコントロールがありませんでした。
これはアメリカ市場で戦うにあたって不利だと考えたThomas社が、ミッドレンジ・ブースト回路を独自に研究・開発したところから生まれたのが、ワウペダルなのです。
そしてワウペダルをめぐって、これまで共闘していた三社間でバトルが始まります。

こういった経緯を経て、JENが1972年にCry Babyの商標登録を取得(それまでどこも取っていなかったんかい!というツッコミはさておき…)。
自社の製品であったにもかかわらず、VOX社はCry Babyという名を使えなくなりました。
1980年代になると、JENが商標権をJim Dunlopに譲渡したため、今日のJim Dunlop “Cry Baby”が存在する事になりました。
ワウペダルの仕組み
ワウペダルは、あの重い筐体からは想像もつかないほどシンプルな回路です。
他のエフェクターに無くワウにしかない回路こそが「インダクタ」(コイル)です。
これによってバンドパスフィルタのような波形を作って、それをペダルで上下に動かすことで効果を生み出しています。
そのためワウはフィルター系のエフェクターとしてカテゴライズされます。
余談ですが、Jim Dunlopの”Cry Baby”は裏蓋を開けなくても電池が交換できるよう、電池ボックスがついているものが多いです。


しかしVOXのワウは裏蓋を開けないと電池交換できなかったのですよ。


これが毎回地味にめんどくさいです…(そういうところが可愛かったりもするのですが)。
オートワウ? タッチワウ? エンベロープフィルター?
JENが商標登録を取得したのと同時期…。
MUSITRONICS社が世界初のオートワウ“MU-TRONⅢ”を発表しました。

読んで字のごとく、ワウ効果が自動でかかるエフェクターです。
当時は非常に高価でした。
オートワウという名で発売されましたが、各社から「タッチワウ」として発売されたり、また同様の効果を狙った「エンベロープフィルター」といったものが発売され、価格も抑えられるようになり、市民権を得たペダルと言えます。
ワウペダル代表機種
フィルターの仕組みから始まった本記事。
「フィルター系特集」ですが、やはりスタートはワウから。
VOX V847 Wah Pedal

先述の通り「最初のワウペダル」として発売されたV846。
VOX V846 Vintage Wah

実際にV846として生産されていた時期はごく短い間だったため、後継機種として発売されたのがV847です。
V847はV846と比較して、入力部にはバッファを搭載していることにより、他のエフェクターとのインピーダンス・マッチングの問題が解消されていることと、ワウをON – OFFしたときに鳴る「ポン!」というノイズが軽減されています。
また、V846はバッテリーからの給電のみですが、V847は9V電源アダプターでの供給も可能となっています。
より現代的にアップデートされているのがV847と言えるでしょう。
Jim Dunlop GCB95 Cry Baby® Standard

エリック・クラプトンの使用により、圧倒的な支持を得た“Cry Baby”。
ブランド名は変遷があったものの、現在でも定番中の定番として地位を築いているモデルです。
1966年にThomas社がアメリカで発売したものをそのまま継承して現在も生産されているという点では、最もオリジナルに近いと言えるかもしれません。
XOTIC XW-1 WAH

1967から1968年のJEN製のワウを忠実に再現している、という謳い文句で登場したXOTICのワウ。
そのサウンドはもちろんのことながら、より現代的な仕様となっています。

トルク調整ができたり…

リレースイッチ & トゥルーバイパスの採用により音質の劣化を最小限に留めていたり…

QやEQを搭載していてワウをかけた時の音質を調整できたり…

ファズと一緒に使っても問題がないようにバッファーサーキットの調整ができたり…。
ヴィンテージのワウを現代のエフェクターと混ぜて使用する際の問題の多くを解消しています。
Ibanez WH10V3

ジョン・フルシアンテ(Red Hot Chili Peppers)が長年愛用していることから、1996年の生産完了後も(途中でマイナーチェンジあり)探し求めるギタリストが大変多かったワウ、「WH10」。
2009年。
本家のIbanezが満を持して復刻版「WH10V2」を発売。
「WH10」で大きなデメリットであった、プラスチック筐体故に踏みつぶしてしまう問題をアルミ筐体にすることにより解消した「WH10V2」。
その独特の音瘦せ具合が絶妙なんですよね。
そして2019年。
「WH10V3」へと進化。
その「音痩せ」をあえて解消できるよう、トゥルー・バイパスとバッファード・バイパスを切り替えられるスイッチを装備。
こちらも他に繋ぐエフェクターに合わせることができるようになりました。
フィルター(オートワウ・タッチワウ)代表機種
Electro-Harmonix Nano Q-Tron

前述のMUSITRONICS MU-TRONⅢ。
その開発者、Mike BeigelがElectro-HarmonixのオーナーであるMike Mathewsから依頼され開発した、言わばMU-TRONの後継機種、Q-Tron。
1996年に登場しました。
そのQ-Tronをエフェクターボードにセッティングしやすいように小型化したのがNano Q-Tron。
「これぞフィルターの元祖」の王道フィルター。
クリーンでも歪みでも気持ちよくかかってくれます。
これが基本では?
BOSS AW-3 Dynamic Wah

もちろんBOSSのエフェクターですから基本は押さえています。
調節の幅も広いです。
しかし!
このエフェクターの存在価値はHUMANIZERモードにある、と言っても過言ではないでしょう!
唯一無二。
こちらでございます。
これに他のエフェクターかけてみてくださいよ。
歪ませたりモジュレーションかけたりディレイかけたり…。
もうそれだけでヒーローになれます。
XOTIC ROBOTALK 2

2つの独立したチャンネルを持つROBOTALK 2。
要はオートワウを2個直列に繋いだ状態なのです。
二つのフィルターを調節することにより幅広いサウンドを生み出すことができます。
音の太さでは負けません!
ノイズサプレッサー & ノイズゲート
ノイズサプレッサー & ノイズゲートの歴史
昔はノイズサプレッサーとノイズゲートは名前は違えど同じものを指していました。
後に述べる「サプレッサー」の意味のものです。
しかし現代ではその役割により、ノイズサプレッサーとノイズゲートは示す意味が明確に異なってきています(今でも曖昧に使うことがありますが…)。
まずは先発のノイズサプレッサーの説明から…。
サプレッサーとは日本語で「抑圧機」のことで、ノイズサプレッサーは読んで字のごとく「ノイズを抑えるもの」のことです。
コンプレッサー の回路を踏襲して製作されたのが始まりで、当時はコンプの様にスレッショルド(動作開始音量を決める)、アタック(エフェクトが効き始める速度を決める)、リリース(エフェクトが効き終わる速度を決める)とパラメーターもコンプのようでした。
しかしコンプ回路をなぞっているために、演奏時のノイズはどうしても乗ってしまいます。
そこで登場したのがRocktronのHUSH。

現行品のHush Super C。
こういったラックタイプのHushが発売されたのが1980年代。
ローパスフィルターを応用した独自のシステムによって、演奏時もノイズ成分を「自然に」カットできる優れものでした。
そしてノイズゲートです。
時はたち2000年代。
Djent(ジェント)と呼ばれるジャンルの音楽が生まれます。
ジェントではスタッカートで音を素早く切り、パーカッシブなサウンドを出すことが求められます。
初期はノイズサプレッサーで処理を行なっていましたが、よりブツ切りなサウンドを求める世のギタリストたちには効きが穏やかで物足りない…。
そこで生まれたのが「ノイズゲート」と呼ばれるセッティング。
ゲートとは“gate”、音の「門」という事で、「一定の音量以下の音を、門を閉じてカットする」というものです。
ノイズゲートは文字通り、セッティングした以外の音は完全にカット。
しかも急峻に、素早く。
これが多くのギタリストからの支持を得ます。
控えめに使えばサプレッサーとして、派手に使えばゲートとして使える、優れものです。
ノイズサプレッサー & ノイズゲートの使用方法
上記の分類の認識でご説明いたします。
①ノイズサプレッサー:歪ませた際のノイズ除去
ノイズサプレッサーは歪み系エフェクターの後段に使用する事が一般的。
それにより歪みペダルで発生したノイズを除去します。
BOSS NS-2 Noise Suppressor

1987年に登場したNS-2は、ギターをNS-2に接続し、SEND-RETURNに歪みペダルをセッティングする方法を提唱しています。
これによって、エフェクターで発生したノイズで成分のみをカットできます。
②ノイズゲート:休符時のサウンドをカットする
ジェントは、リフを細かく刻み、休符の際は波形で切ったように音をカットするスタイルです。
BOSS NS-1X Noise Suppressor

2023年に登場したNS-1Xはデジタル処理を活用して素早く不要音をカット。
結果としてギター→ブースター→ノイズゲート→アンプといった接続順で、ミュート時のサウンドを思い切ってカットしたサウンドになります。
約35年もの時を超えて、二台が現行機種であることの理由がおわかりいただけると思います。
NS-2はナチュラルに、NS-1Xは過激に不要な音をカットします。
ノイズサプレッサー & ノイズゲートの代表機種
Rocktron MicroHUSH

ラック型エフェクターとして登場したHUSHですが、コンパクトエフェクター用としてペダル対応となっているのが本機。
コントロールはThresholdだけとシンプルながら、その基本性能はラックタイプを継承したものです。
さすが。
iSP Technologies DECIMATOR II

ジェントが流行り出した頃、Peripheryのギタリストミーシャ・マンソーが使用していたため大人気となったDECIMATOR Ⅰ。
その進化版です。
Hushの開発者が立ち上げたiSP Technologiesで生産されています。
独自に開発した“リニアライズド・タイム・ベクター・プロセッシング”機能を搭載し、リリースレスポンスがよりスムーズになっています。
フィルター系エフェクターまとめ
一口に「フィルター系」と言っても、使用方法や成り立ちにはそれぞれ個性があった事がお分かりいただけたと思います。
特にワウの歴史に関しては、「同じ筐体なのになぜメーカーが違うんだ?」「クライド・マッコイって名前はVOXもJim Dunlopも使ってるけど、どういう事?」という声もよく耳にします。
確かにこの歴史を知らなければ、不思議ですよね。
ちなみにクライド・マッコイという方はトランぺッターなんですよ。
彼のワウ奏法にちなんで名づけられたのがVOXのClyde McCoy WahWah Pedalだったのです。
英語版ですがクライド・マッコイさんのwikipediaをどうぞ。