バイヤー古川の銘器探訪 Vol.10 “山梨県・甲府発、歌とギターの距離感をデザインする SAKATA GUITARS”

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バイヤー古川の銘器探訪 Vol.10 “山梨県・甲府発、歌とギターの距離感をデザインする SAKATA GUITARS”

記事中に掲載されている価格・税表記および仕様等は予告なく変更することがあります。

今回ご紹介するのは、山梨県甲府市でカレー屋兼ライブスペース 「ハーパーズミル(Harpers Mill)」 を営みながらギターを製作しているルシアー、坂田 久(さかた ひさし)さん

甲府駅に降り立つと、坂田さんのお弟子さんでもあり、現在も島村楽器 甲府店スタッフとして働いている今村さんが、車で迎えに来てくれました。


駅前の街並みを抜け、川沿いの道や住宅街を走りながら、坂田さんとのエピソードを聞かせてもらいつつ、ハーパーズミルへと向かいます。

イントロダクション

10〜20代はシンガーソングライターとして活動し、30代で3枚のアルバムをリリース。

その後、マーチンやギブソン、ギルドといったヴィンテージギターを次々と弾き込み、「歌い手」としての耳で、数えきれないほどの名器と向き合ってきた方です。

40代で、奥様の何気ない一言をきっかけに自作ギターの世界へ。

ハーパーズミルに集うミュージシャン仲間の生の意見を受け止めながら、一本一本、自分なりの“歌のためのギター”を形にしてきました。

マーチン/ギブソンへの深いリスペクトを大切にしつつ、そこに「歌とギターの距離感」という独自の軸を通して生まれる SAKATA GUITARS のサウンドは、ステージで歌う人だからこそ設計できる音だと感じます。

実際に工房で弾かせていただいたとき、ローコードを鳴らした瞬間に、

「あ、このギターは“歌が乗ること”を前提に作られているな」

と、強く印象に残りました。

今回は、その音の裏側にあるストーリーと哲学を、坂田さんご本人のお話から紐解いていきます。

ここからは、その歩みを順を追ってたどっていきましょう。

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ルシアー 坂田 久 プロフィール

坂田 久(さかた ひさし)

山梨県甲府市在住。

10〜20代にかけてシンガーソングライターとして活動し、30代で自身のアルバムを3枚リリース。

ギブソン B-25 やマーチンなどのヴィンテージギターを愛用し、「歌とギターが並走する」弾き語りスタイルを育ててきた。

40歳を過ぎた2000年代初頭、妻の「そんなに綺麗な楽器が好きなら、自分で作れば?」という一言をきっかけにギター製作を開始。

マーチン純正キットや海外のレクチャーDVDを手がかりに、ホームセンターの工具と輸入治具を組み合わせ、完全独学で1本目を完成させる。

山梨県甲府市でカレー屋兼ライブスペース 「ハーパーズミル(Harpers Mill)」 を開業。

店に集うミュージシャン仲間に自作のギターを弾いてもらい、演奏家からの率直なフィードバックを受けながら試行錯誤を重ねる。

2000年代半ば、ハンドクラフト・ギターフェスに初出展。

プロミュージシャンからのオーダーも本格的に増加。

以降、年間約8本のペースでギターを製作し、「歌い手のためのギター」として多くのプレイヤーから信頼を集めている。

現在もハーパーズミルを拠点に、マーチン/ギブソンへのリスペクトと、シンガーとしての耳を軸にしたギター作りを続けている。

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古川 × 坂田 久 インタビュー(前半)

シンガーソングライターとしての20代・30代― ヴィンテージギターとの出会い

古川

「今日はよろしくお願いいたします。まずは、坂田さんご自身の音楽活動について伺いたいです。」

坂田さん

「よろしくお願いします。
若い頃からずっとシンガーソングライターとして活動していて、30代の頃にアルバムを3枚リリースしました。

ライブハウスで歌ったり、自分の店でライブをしたり。ギターはいつも、“自分の歌の相棒”という存在でしたね。」

古川

「その頃から、いわゆるヴィンテージギターを愛用されていたんですか?」

坂田さん

「ヴィンテージに本格的にハマったのは40代に入ってからですね。

マーチン、ギブソン、ギルド……いろんなギターを弾いていくうちに、『ヴィンテージのギターって、どうしてこんなに違うんだろう』と興味が止まらなくなって。

買ったり売ったりを繰り返しながら、かなりの本数を触らせてもらいました。」

「そんなに綺麗な楽器が好きなら、自分で作れば?」― 奥様の一言から始まったギター製作

古川

「そこから、“作る側”に回ろうと思ったきっかけは何だったのでしょう?」

坂田さん

「45歳のとき、妻と一緒に御茶ノ水の楽器店に行ったんです。

ずっと探していた60年代の Gibson B-25 が、とても良い状態で並んでいて。

『これ欲しいなぁ』という話をしていたら、妻が一言、『そんなに綺麗な楽器が好きなら、自分で作れば?』と。」

古川

「なかなか出てこない言葉ですね(笑)。」

坂田さん

「本当に(笑)。それまで、自分でギターを作るなんて全く考えたことがなかったですし、ナットやサドルに触るのも怖いくらいで、調整は全部プロのリペアマンにお願いしていました。」

「でもその一言で、『あ、作るという選択肢もあるのか』と視界が開けました。

帰りに寄った東急ハンズの木工コーナーでルーターの実演を見て、“こういう工具があれば、ギター作れるかもしれないな”と本気で思ってしまったんです。」

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マーチンのキットと、ホームセンターから始まった完全独学

古川

「そこから、最初の一本に辿り着くまでの流れを教えてください。」

坂田さん

「家に帰ってすぐにインターネットで調べて、マーチンが純正の組み立てキットを販売していることを知りました。

ちょうど個人輸入や海外通販がインターネットで身近になってきた時期で、
アメリカから工具やパーツを直接買えるようになっていたんです。」

「同じ頃、“ルシアー”という言葉も雑誌やネットでよく見かけるようになっていて、『世界中にこんなに個人のギター製作者がいるんだ』と知ったことも大きかったですね。

海外のサイトには、マーチンのキットを作る工程を写真付きで紹介している人がたくさんいて、英語のレクチャーDVDも販売されていました。」

古川

「英語版でも理解できるものなんですか?」

坂田さん

「映像であれば、言葉が全部分からなくても手順は見えるので。

レクチャーDVDを何度も繰り返し観て、ホームセンターの工具と海外から取り寄せた治具やパーツを組み合わせて、完全に独学で一本目を仕上げました。」

古川

「一本目の出来上がりを見たときの感想は?」

坂田さん

「正直、自分でも驚くくらい“ちゃんとギターになっていた”んです(笑)。

もちろん職人の目から見れば荒い部分もあったと思いますが、『これはもう少し続けてみたいな』と思えるだけの手応えはありました。」

ハーパーズミルとミュージシャン仲間― “原価でもいいから作らせて”という時期

古川

「その頃は、まだ完全に“趣味”としての製作だったんですよね。」

坂田さん

「そうですね。最初は『自分のために3本作れたら満足かな』と思っていました。

でも、その3本を、自分の店“ハーパーズミル”でライブをするミュージシャン仲間に見せたら、『これ、俺の分も作ってよ』という話になって。」

「ハーパーズミルには、毎年ツアーでいろいろなミュージシャンが来てくれます。

そのたびに“これ、自分で作ったんだ”とギターを見せると、『ここをこうしたらもっと良くなるよ』と演奏家ならではのアドバイスをくれたり、“じゃあ一本お任せしてみようかな”とオーダーをくださったり。

最初の5年くらいは、材料代だけをいただいて、“作れること自体が楽しくてたまらない時期”でした。」

ハンドクラフトギターフェスでの出会い

古川

「プロの現場から声がかかるようになったのは、ハンドクラフトギターフェスがきっかけだったそうですね。」

坂田さん

「はい。ウォーターロードの増田さんに『一緒に出ませんか』と声をかけていただき、2000年代半ばに初めてハンクラに出展しました。」

「その時点で僕が作っていたのは、まだ十数本。

周りには、長年この世界で活躍されているルシアーの方々や、メーカーのカスタムショップが並んでいて、“自分のギターをその中に並べる”というのは、本当に勇気のいることでした。」

「それでも思い切ってハンドクラフトギターフェスに出展したことで、僕のギターを弾いてくださる楽器店の方との出会いが生まれて、そこから少しずつ“楽器店からのオーダー”という流れが始まっていきました。」

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工具と銘木が共存する、小さな“大陸”のような工房

ハーパーズミルの奥にある工房に足を踏み入れると、まず圧倒されるのが、その密度です。

ノミやカンナ、ルーター、各種ジグ、ミニバンドソーから大型バンドソーまで、多種多様な工具が所狭しと並びながらも、一本一本のギターに合わせてすぐに手に取れる位置へと、機能的に配置されています。

その足元と壁際には、ハカランダやキューバンマホガニーをはじめとした銘木が、年代も産地もさまざまに積み重なり、まるで「木の地層」のような光景をつくり出しています。

一本のギターのために選ばれるまで、長い時間をかけてシーズニングされた材たちと、それを形にするための道具たちが、狭い空間の中にぎゅっと凝縮されて共存している――。

それはまさに“小さな大陸”のような光景でした。

ここからは、そんな坂田工房を支えている道具や工程を、いくつかピックアップしてご紹介します。

トップブレーシング(表板の力木)構造

アコースティックギターの表板(トップ)裏側に取り付けられた、ブレーシング(力木)の構造です。

薄いトップ材にかかる弦の強い張力を支えつつ、その振動の伝わり方をコントロールする“骨組み”の役割を担っています。

棒状の木材を組み合わせたこのブレーシングパターンは、トップのどこがどのように振動するかを左右し、音量・レスポンス・音色のキャラクターを決定づける重要な要素です。

強度を確保しながら、歌声を気持ちよく支えてくれる鳴り方を探っていくための、ギター作りの心臓部ともいえる部分です。

バックブレーシング(裏板の力木)取り付け工程

アコースティックギターの裏板(バック)の内側に、ブレーシング(力木)を接着している場面です。

板厚わずか 2〜3mm のボディに、弦の張力による 60〜70kg 相当の力がかかっても耐えられるよう、棒状の木材=ブレーシングで強度と耐久性を持たせると同時に、その配置や形状によってギターの響き方や音色のキャラクターも繊細にチューニングしていきます。

ボディ内部構造(甲付け・ライニング・ブロック)

曲げたサイド(側板)にライニングと呼ばれる細かな補強材を接着し、ネックブロック/エンドブロックとともにボディの骨格を形づくっている工程です。

表板・裏板をしっかり受け止める土台を整え、クランプで正確な位置に固定しながら、歌い手のタッチを支える「箱」の強度と響きのバランスを作り上げていきます。

ミニバンドソー

木材はもちろん、鉄や真鍮などの金属の切断にも対応しており、刃のスピードは 130〜200m/min の範囲で調整できるため、材質や用途にあわせた切断が可能。

ギター製作の現場では、ブレース材や小物パーツの成形、型板づくりなど、細かなカット作業を効率よく行うための汎用カッティングツールとして活躍します。

バンドソーと集じん機(KERV ダストコレクター)

木材の切断に用いるバンドソー(帯鋸盤)と、その横に設置された KERV 製集じん機(ダストコレクター)の組み合わせです。

バンドソーでブレース材や型板、各種パーツを切り出す際に発生する木くずや粉じんを、集じん機が同時に吸い取り、作業環境をクリーンに保ちます。

希少材ストック(ハカランダ/キューバンマホガニーなど)

銘木として知られるハカランダやキューバンマホガニーをはじめ、今では入手が難しくなった杢材が、所狭しと積み上げられています。

いずれも長期シーズニング(自然乾燥)を経た杢材で、次にギターとして生まれ変わる出番を静かに待っている状態です。

特にハカランダは、最高級材として高級ギターに用いられてきた歴史を持ち、画像の板には濃淡のはっきりした美しい板目が多く見られます。

卓越した耐久性と独特の木目は、「何世代にもわたって使い継がれていく楽器」を支えてきた時間の厚みを感じさせます。

こうした道具と銘木のストックに囲まれながら、一本一本のトップ厚やブレーシング、サイド&バックの構造、13フレット・ジョイント……

坂田さんは「歌い手のタッチ」を基準に、少しずつ自分の答えを積み上げてきました。

ここからは、いよいよその“音づくり”の核心部分。

80本にわたる試行錯誤で掴んだ「自分の音」や、歌のためのトップ設計、サイド&バックの考え方について、じっくり話を伺っていきます。

古川 × 坂田 久 インタビュー(後半)

80本の試行錯誤で掴んだ「自分の音」

古川

「ここからは、“音の話”をもう少し詳しく聞かせてください。

坂田さんご自身が『これが自分の音だな』と感じられるようになったのは、どれくらい作り続けた頃だったのでしょう?」

坂田さん

「音に関しては、本当に試行錯誤の連続でしたね。

『ここをこう変えたら、もっと良くなるんじゃないか』というアイデアはたくさん出てくるんですけど、一度に2箇所も3箇所も変えてしまうと、何が効いて、何が効かなかったのかが分からなくなってしまう。」

「なので、自分に
『1本につき変えるのは1箇所だけ』
というルールを課しました。

ブレーシングの形なのか、トップの厚みなのか、サイドの構造なのか……。

1本ごとに“ここだけは変える”と決めて、それ以外は極力いじらない。」

「それをずっと続けて、だいたい80本目くらいまでかかりました。

80本ほど作ったあたりで、ようやく
『ああ、これが自分の音だな』と、腰を据えて言えるようになってきた感覚があります。」

古川

「80本分の階段を、一段ずつ上がっていったわけですね。」

坂田さん

「そうですね。もちろん、最初の頃のギターが“悪い”というわけでは全然ありません。

ただ、頭の中で鳴っている“理想の歌とギターの関係”に近づけていくには、
自分にとってはそれくらいの時間と本数が必要だったんだと思います。」

坂田ギターの音を形づくる三要素― レスポンス・クリアさ・太さ

古川

「では、その“自分の音”をもう少し分解してみると、どんな要素になるでしょうか。あえて3つ挙げるとしたら?」

坂田さん

「レスポンスの速さ、音のクリアさ、一音一音の太さ。

この3つは、どのモデルでも絶対に外したくないですね。」

古川

「まさに、プリウォー・マーチンのような名器が持っている要素です。」

坂田さん

「そうですね。サンフランシスコのショーンバーグでプリウォーのマーチンを弾かせてもらったときも、どのギターにもそれが共通していました。

“ジャラーン”ではなく、“パンッ”と立ち上がる。しかも、それでいて音が痩せない。

ああいう音を知ってしまうと、『ここを目指したい』という気持ちはどうしても強くなります。」

歌のためのギターとしてのトップ設計― 太鼓ではなく「スピーカー」のイメージで考える

古川

「トップの厚みについてのお話も、とても印象的でした。」

坂田さん

「一般的には、『レスポンスを良くするならトップを薄く』という考え方がありますし、実際に薄いトップで素晴らしい音を出しているギターもたくさんあります。」

「ただ、“シンガーソングライターがステージでガツンとストロークする”という前提に立つと、あまりに薄いトップだと、“気持ちいいけれど、コントロールが難しい”と感じることがあるんです。」

「そこで僕は、“太鼓”のように全面が大きく振れるイメージではなくて、
“スピーカー”のイメージで考えるようになりました。

スピーカーのコーンって、真ん中に重いマグネットがあって、外周に向かってしなやかになっていきますよね。」

「僕のギターも、ブリッジ周りはしっかりと、外周に向かって少しずつ薄くしていくような設計にしています。

中心はタイトに、外側はしなやかに動いてくれるようなイメージですね。」

古川

「ステージで歌いながらストロークするときの“コントロールしやすさ”を、すごく意識されているんですね。」

坂田さん

「そうですね。ブリッジ周りがしっかりしていることで、ストロークしたときに音が暴れにくくなりますし、弾き手が“自分のタッチで音をコントロールしている”感覚を持ちやすくなると思っています。」

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サイドは“揺らさない”、バックは“歌わせる”― エネルギーが逃げないボディ設計

古川

「サイド&バックの考え方も、“エネルギーの流れ”という視点が強いですよね。」

坂田さん

「サイドは、できるだけ“揺らさない”ようにしています。

サイドまで一緒にワンッと動いてしまうと、音のエネルギーが散ってしまう感覚があるので、ライニングやサイドブレースをしっかり入れて、“壁”として機能してもらうイメージです。」

「バックに関しては、トップが動いたときに、それを受けて自然に反応してくれる板が理想ですね。トップが叩いて、バックが歌ってくれる。

そんな関係性をイメージしながら、厚みやアーチを決めています。」

古川

「トップが“声を出す人”で、バックが“ハモってくれる相棒”みたいな。」

坂田さん

「そんな感じかもしれないですね(笑)。

サイドがしっかり壁になってくれることで、トップとバックのやり取りが素直に出てきてくれる。

そのバランスが、自分にとっての“歌いやすいギター”につながっている気がします。」

こだわりの材選び― アディロンダック、ハカランダ、キューバンマホガニー

古川

「使われる杢材についても、こだわりを教えてください。」

坂田さん

「トップはアディロンダックスプルースを使うことが多いです。

シトカに比べて“粘り”があって、アタックの後ろからググッと押し出してくるようなトルク感が、歌ものやストロークにはすごく合うと感じています。」

「サイド&バックは、ローズ系ならハカランダやマダガスカルローズ、マホガニーならホンジュラス。

特にキューバンマホガニーは、密度が高くて光沢にも粘りがあって、大好きな材ですね。」

古川

「共通して、“粘りと密度”のある材に惹かれている印象です。」

坂田さん

「そうですね。ただ“鳴る”だけではなくて、アタックの後ろにある“言葉にしにくいふくらみ”を支えてくれる材が好きなんだと思います。

歌のニュアンスを、しっかり受け止めてくれる感じがある材ですね。」

13フレット・ジョイントという“もう一つの答え”

古川

「構造面では、13フレット・ジョイントも 坂田ギター の大きな特徴ですよね。」

坂田さん

「12フレット・ジョイントの深みも、14フレット・ジョイントの軽やかさも、どちらも大好きです。

ただ、一本のギターで一日のステージを全部こなそうと思うと、その中間の“ちょうどいいところ”が欲しくなることがあって。」

「13フレットは、12 と 14 の真ん中にあって、その“いいとこ取り”をしてくれるポジションだと感じています。

ローコード中心のシンガーソングライターにとっては、弾き心地の違和感もほとんどなくて、音としては“厚みと軽やかさのバランス”が非常に良い。」

古川

「『坂田さんに頼むなら 13 フレットで』というお客様も多いそうですね。」

坂田さん

「はい。気づけば、“13フレット=坂田”というイメージを持ってくださる方も増えてきました(笑)。

もちろん 14 フレットのモデルも作りますが、“歌のための一本”として 13 フレットを選んでくださる方は多いですね。」

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「歌とギターの距離感」を一番大事にする

古川

「オーダーを受けるとき、一番大事にしているのはどんなことでしょう?」

坂田さん

「『歌とギターの距離感がどうか』ということですね。

この声、この曲、この言葉に対して、このギターの音は似合うかどうか。
そこを何より大事にしています。」

古川

「楽器店向けのオーダーについては、どのように考えていらっしゃいますか?」

坂田さん

「個人のお客様とは違って、楽器店に置かれるギターは“誰が弾くか分からない”状態で作ることになります。

最初はそこが難しかったのですが、
『そのお店の担当スタッフさんが一番気に入ってくれる一本を作ればいい』
と気づいてから、とてもやりやすくなりました。」

「スタッフさんが心から『これがうちの一押しです』と言ってくだされば、
その熱量は必ずお客様にも伝わります。

なので、楽器店向けのオーダーでは、
そのお店に来られるお客様の傾向や、スタッフさんご自身の好みを伺いながら、“その場所にふさわしい一本”を一緒に作っていくイメージです。」

「6弦の天才」と呼ばれたローの立ち上がり

古川

「坂田さんのギターの音を、一言で表現するとしたら何でしょう?」

坂田さん

「最近、『6弦の天才ですね』と言われたことがあります(笑)。

ドリカムのギタリスト、武藤さんにそう言っていただいて。」

「自分ではあまり意識していなかったのですが、いろいろな方から『6弦の立ち上がり方が独特だ』と言っていただくことが多くて。

どのモデルでも、“6弦の気持ちよさ”にはこだわっているので、そこに僕のサウンドの核があるのかもしれません。」

古川

「実際に弾かせてもらうと、ローコードを鳴らした瞬間に、『あ、これは歌えるな』と感じる6弦ですよね。」

坂田さん

「その感覚を持ってもらえたなら、とても嬉しいですね。」

これから坂田ギターに出会う方へ

古川

「最後に、坂田さんのギターに興味を持ってくださる方に、一言いただけますか?」

坂田さん

「僕はずっとシンガーソングライターとして歌ってきたので、“歌とギターの距離感”にはとても敏感です。

だからこそ、ギターを作るときも、
『この一本は、どんな歌のそばにいてくれるんだろう』と考えながら作っています。」

「マーチンやギブソンへのリスペクトを大切にしながら、そのうえで“歌い手としての耳”でチューニングしたレプリカ、それが坂田ギターだと思っています。」

「僕のギター弾いてみて『このギターとなら、まだ新しい歌が書けそうだ』と感じていただけたなら、それが何よりの喜びです。」

古川

「“歌とギターの距離を測り続けている人”という言葉が、本当にしっくりきました。

坂田さん、本日はありがとうございました。」

坂田さん

「こちらこそ、ありがとうございました。」

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坂田ギターの入荷について

現在、SAKATA GUITARS(坂田 久さん製作)のギターは、ルシアーズセレクションをはじめとした一部店舗への入荷に向けて準備を進めている段階です。

実際に店頭・オンラインストアに入荷しましたら、本連載『バイヤー古川の銘器探訪』のページにて、1本ずつの仕様やサウンドの特徴、坂田さんの「歌い手のための設計意図」とあわせて、丁寧にご紹介してまいります。

SAKATA GUITARS にご興味をお持ちいただいている皆さまには、お待たせしてしまい恐縮ですが、歌とギターの距離感を追求した一本との出会いを、どうぞ楽しみにお待ちいただければ幸いです。

まとめ

ハーパーズミルの扉を開けると、カレーとコーヒーの香り、壁に並んだレコード、ゆったりとした時間の流れ――

その真ん中に、歌とギターと坂田さんの暮らしが、自然に溶け込んでいました。

若い頃からシンガーソングライターとして歌い続け、マーチンやギブソンのヴィンテージを弾き込み、ハーパーズミルに集うミュージシャンたちの声を聴きながら育ててきた「歌い手のためのギター」。

インタビューの中で印象的だったのは、トップの厚みやブレーシング、サイド&バック、材選び、13フレット・ジョイント――

どの話題に触れても、最終的には

「歌とギターの距離感がどうか」

という一点に話が戻っていくことでした。

派手なスペックや“一発のインパクト”だけではなく、ローコードを鳴らしたときの手応え、ストロークしたときのローの立ち上がり、ステージで一日歌い終えたあとに「やっぱりこの一本だな」と素直に思えるかどうか。

坂田ギターは、そういった“歌い手の現場感覚”を出発点に設計されたギターなのだと強く感じました。

取材を終え、甲府駅から JR 特急ふじかわに揺られながら、車窓に移ろう雄大な富士山を横目に見る帰り道。

そんなことを考えながら、ローコード一発で「歌えるな」と感じさせてくれた 6 弦の感触が、何度も頭の中でリフレインしていました。

もし店頭やイベントで SAKATA GUITARS のギターを見かけたら、ご自身の歌い方に近いタッチで確かめてみてください。

気になる点や「こういう場面で使いたい」といったイメージがあれば、どうぞ遠慮なくスタッフにご相談ください。

みなさまの歌と生活に、自然に寄り添ってくれる一本を、一緒に見つけていければと思います。

この「銘器探訪」が、
みなさまと SAKATA GUITARS との出会いのきっかけになれば嬉しく思います。
では、次回もどうぞお楽しみに。

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ルシアーズセレクションについて

国内外のルシアーが手がけるワンオフ作品・少数製作モデルを集めた企画「ルシアーズセレクション(Luthier’s Selection)」を展開しています。

ルシアーズセレクション 展開店舗

最新情報や試奏のご希望はオンラインストア掲載ページまたは各店までお問い合わせください。
カタログモデルでは出会えない一本とじっくり向き合っていただけるよう、落ち着いて座って試奏できる環境でご来店をお待ちしております。
※店舗ごとに展示モデル・在庫状況は異なります。

店舗名取扱い商品一覧
仙台ロフト店
新宿PePe店
名古屋パルコ店
三宮オーパ店
広島パルコ店
アミュプラザ博多店

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銘器探訪の管理人

古川 惠亮プロフィール

京都府出身。大阪での歌い手としての活動を経て、「音楽の楽しさを届ける側になりたい」との思いから、2004年に島村楽器へ入社。
ギターへの深い愛情と幅広い知識を武器に、アコースティックギターの販売で10年連続トップセールスを達成。

現在はバイヤーとして、米国のMartin社での買い付けをはじめ、Furch、K.Yairi、Takamineなどのブランド、ならびに国内外のルシアーと共に、数々のカスタムモデルの企画・仕様策定・デザインを手がける。

プライベートでは3児の父として、家族との時間を大切にしている。
目下の悩みは、子どもとのゲーム対戦でなかなか勝てないこと。

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