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PRS Guitarsの魅力とは?|バイヤー平林が綴る PRSという美学Vol.2

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PRS Guitarsの魅力とは?|バイヤー平林が綴る PRSという美学Vol.2

記事中に掲載されている価格・税表記および仕様等は予告なく変更することがあります。

島村楽器静岡パルコ店、店⻑兼バイヤーの平林です。
連載ブログの記念すべき第1回目は、いきなり製品の紹介ということではなく「PRS Guitarsの魅力」をテーマに私の主観でお伝えしていきたいと思います。

ギターの世界は趣味嗜好や楽しみ方が様々ですので、本ブログでは私の主観をベースに書いてまいります。
⻑文ではございますが、お付き合いいただければ幸いです。

ブランドの強み

PRSギターの魅力は、美しいデザインと卓越したサウンド、そして創業者ポール・リード・スミス氏(以下、ポール氏)と熟練の職人たちの情熱と技術が融合した点にあります。

ポール氏が設計した製品を、細かなパーツに至るまで自社で製作していることも特徴です。

1985年の創業当時から在籍する職人たちとともに、ポール氏は現在も製品開発の最前線に立ち続けています。
このチームの結束が、PRS社の強みであり、常に魅力的な製品をリリースし続ける原動力となっています。

もちろん、会社ですので商業的な側面もありますが、音楽やギターを愛するハートがPRS製品から伝わってくることが、創業約40年というキャリアながら多くのギター愛好家から支持されている所以だと感じます。

ワシントンD.C.から2時間程度の距離にある、メリーランド州スティーブンスヴィル・チェサピーク・ベイ・ビジネス・パークに拠点を構えるPRS本社兼ファクトリーを実際に訪問するたびに、従業員・取引先・ユーザーをPRSファミリーとして大切にしていることを実感します。

そんなPRSチームから生み出される製品は現状に満足せず、サウンド・ルックス・プレイアビリティを追求するべく、日々アップデートが図られています。

塗装や細かな仕様もアップデートを続けているため、時にフィットしないこともありますが、改善を重ねた結果により現在のPRSがあるだけでなく「年代ごとに様々な仕様があること」が私たちPRSファンにとっては面白くもあり、気付けばその魅力に取り憑かれているという一因となっています。

造形美

オリジナルシェイプのSANTANA、CUSTOMに代表される、美しいアーチを描くダブルカッタウェイのボディに、3:3のヘッドストックを採用した、レガシーギターをルーツに持ちながらも独自の発展を遂げた造形美は唯一無二です。

さらに、繊細な美しさを宿し芸術的な気品を醸し出すフィンガーボードのバードインレイはPRSの象徴です。

ポール氏の母親がバードウォッチ好きで、自宅にあった本の鳥をベースにデザインされており、異なる鳥のシルエットがフレットごとに配置されています。

バードインレイのマテリアルには、アバロンシェル(アワビの貝殻等が原材料)が主に使用されています。

アバロンシェルは、その美しい見た目から装飾品等にも使用され、その強度と耐久性から様々な工芸品にも利用されています。

Private Stockでは、ヘッドストックにイーグルインレイが燦然と輝きを放ちます。
PRSギターの装飾は鳥に由来するものが多く、ポールと家族の絆を感じます。

ポール氏はPRS製品のサウンドを最重要視していますが、サウンドを体感いただくのにルックスも重要だと話しています。

ウッドマテリアル

世界中のサプライヤーから独自のルートで仕入れるウッドマテリアルのクオリティやストック量は「世界最高峰」との呼び声が高く、他ブランドからも羨望の眼差しで見られています。

特に、レアウッドの中でも頂点に君臨するブラジリアンローズウッド材に関するギター製作では傑出しており、ハカランダネック・ギターを浸透させたパイオニアです。

ハカランダ・ギターに関しての詳細はこちらをご覧くださいませ。

さらに上の写真のPrivate Stockでは、スポルテッドメイプルの杢目に合わせて、Copper(銅箔)をアクセントで使用しています。

「Wood × Metal」という異質なマテリアルをミックスするセンスやスキルは流石の一言です。

マニュファクチュアリング

USAピックアップは自社工場で製作し、ペグやトレモロブリッジ等は、提携工場に専用パーツをオーダーして、各モデルに合わせて最適化されています。
ピックアップまで自社生産するブランドは極少数で、ほとんどが社外製品か、OEM製品をマウントしています。


PRSは各モデルに合わせて最適化されたPUがマウントされるケースが多く、2018年からは「TCI」という独自システムによる大幅なアップデートが入っています。

ジョンメイヤー氏と開発したSilver Skyでシングルコイルの研究を徹底的に行い、そのノウハウを用いることで従来のピックアップも改善され、サウンドやタッチレスポンスが驚くほどに向上しているだけでなく、コイルタップ時のトーンも見違えるほど向上しています。

自社製造しているUSAピックアップは全てTCIプロセルを通って品質の確認が行われ、繊細なシングルコイルピックアップのみ、もう1段階、別の品質検査が行われる等、管理も徹底しています。

PRS専用のペグは、サウンドとチューニングの正確さ両面を追求しており、PHASEⅢタイプへと進化を遂げています。
PHASEは「段階」という意味で PHASEⅢはその名の通り3つ目に開発したタイプで、チューナーだけでも相当な変化を遂げています。

ペグポストには弦振動を損なわないように、あえてノンメッキのブラス材を使用しています。

使用するネジの一つまで妥協を許さず、拘り抜いた細かなパーツの一つひとつが組み合わさることで、PRSギターのサウンドと造形が完成します。

スペックの変化

スペックに関して、いつ何が変更されるのかは、大きな変更の場合は事前に発表されますが、多くの場合は日々少しずつ変化しています。

オフィシャルに告知されないため、入荷した個体をじっくり見て検品を行う中で気付くこともあります。
創業当時から在籍しているスタッフに確認すると、市場での定説とは異なることが実際にあり、数10年経ってから真実が明らかになることもあります。

一部の年代ではPRSの塗装が経年変化で白濁することもありますが、これは製品を追求しアップデートしていくなかで生じた結果です。

以前はアンダーコートとトップコートを別の業者から仕入れていましたが、現在はPRS専用の塗料を一つの業者から仕入れることが可能になりました。

こちらは推測ですが、上述の問題改善とサウンドの向上を図るため、2019年~2022年初頭までは下地にCAB(合成樹脂の一種)、トップコートにNITROラッカーを使用したNOC/Nitro Over Celluloseに変更。

2022年春頃からはアンダーコート、トップコートともにNITROラッカーを採用したフィニッシュとなり、サウンドが飛躍的に向上したことと、白濁問題も実質改善されたと考えて良いのではないでしょうか。

諸説ありますが、1985年以降でUSAレギュラーモデルにラッカー塗装が使用されたのは初めてです。(一部、初期DGT、SCシリーズ等はございます)

創業以降、1980年代もラッカーは使用しておらず、アンダーコートを塗布せずに塗料を塗り重ねていったため「ラッカーのように見える」という話を、現在IT部門を担当している創業当時の元ペインター、ジェフ氏から直接伺うことができました。

カラーリング

PRSの塗装プロセスは非常に高度で、その塗装は「Dipped in Glass」と称される独特の光沢と美しさを持ち、まるでガラスの液体に浸したような美しい仕上がりになります。

宝石に由来するカラー名も多く、エメラルドグリーン・カラーは緑色で人気を博したギター業界において特筆すべき例です。

現在では他社でもスタンダードとなったグラデーションカラー(PRSでいう~Fade)や、ドラゴンズ・ブレスといったバリエーションも、PRSが浸透させたといって過言ではありません。

カラーのフェイド(褪色)に関してですが、上述のようにPRS専用塗料を業者が作成してくれたことで改善を図っているとのことです。

ギターに限ったことではありませんが、経年変化でのカラーフェイドへの対策は、紫外線や蛍光灯等の光に当てないことで全てではありませんが防止することが可能です。
比較的フェイドが進みやすいカラーは明るいブルー系・ピンクや明るい赤・淡いバイオレット・⻩色、これらのカラーは紫外線によりフェイドしやすい傾向にあります。

カラーフェイドの仕方は個体ごとに異なることと、フェイドしないようにして欲しいというニーズも多くあり、PRS社に声も届いているようです。

PRS にはFADED WHALE BLUE、TRIPPLE FADED INDIGOといった、あえて経年変化した様子を再現したカラーも数多く存在しています。
上の画像は、カラーフェイドが進んだAquamarine Smoked Burstカラーです。

1950年代のLP BURSTに採用されていたCherry Sunburstカラーが、経年変化や異なる環境によって多様な表情を見せているように、全てではございませんが、PRSでもカラーの経年変化が一つの魅力とも言えます。

現在の技術でフェイドしたカラーを再現することに成功し、2025年で40年のキャリアを迎えるブランドとして、その魅力をさらに引き立てています。

さいごに

初回は「PRSギターの魅力」について、私の視点からお話しいたしました。

ギターはオーナーによってサウンドやルックスが変化し、その変化を楽しむことができる楽器です。
皆様も、ぜひPRSギターの奥深い魅力を体感し、自分だけの特別な一本を見つけていただければ幸いです。

そして「1人のPRSギターファン」として、PRSギターがこれからも多くのギター愛好家に支持され続けることを願っています。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。

平林 大一プロフィール

埼玉県出身。現在は静岡県に移り住んで15年が経過。
趣味は釣りとワインで、自然の中でリラックスする時間や美味しいワインを楽しむのが大好き。

2024年現在、PRS USAファクトリーでのオーダーやGIBSONナッシュビルでのバイヤー業務、国内外のギター・ベース、アンプやペダルのオーダーに携わっている。

所有楽器はPRS Private StockやAMPをはじめ、Fender 1963 Stratocaster、Gibson CS LP、Ken Smith BSR5、Vintage Ibanez & Maxonなど多岐に渡る。

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