PRS Factory Visit 2024レポート(前編)【Paul Reed Smith】

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PRS Factory Visit 2024レポート(前編)【Paul Reed Smith】

記事中に掲載されている価格・税表記および仕様等は予告なく変更することがあります。

いつも島村楽器をご利用いただき、誠にありがとうございます。
島村楽器静岡パルコ店、店長兼バイヤーの平林です。

2024年2月初旬にPRS Factory Visit 2024に参加し、PRS社やUSAディーラーとのミーティング、現地視察、Private Stockオーダーにあたっての木材選定を行ってまいりましたので、前・後編の2回に分けてその様子をレポートいたします。

本レポートを通じて皆様にも現地の雰囲気を感じていただければ幸いでございます。

PRS Factory Visit 2024 Overview


以下で詳しくご紹介していきますが、ライトにも行程の様子をお楽しみいただけるよう動画も作成いたしました。
併せてご覧くださいませ。

出国→入国→現地到着


久し振りのPRSファクトリーへの出張、自宅の静岡から約80分(実は近距離)で羽田空港に到着。
PRS JAPAN 大坪氏と参加されるディーラーの皆様にご挨拶し搭乗します。

片道14時間のフライト、3泊5日のスケジュールでメリーランド州スティーブンスヴィル・チェサピークベイに拠点を構えるPRS本社へ向かいます。

機内では偶然にもSantanaのドキュメントムービーを発見。
生い立ちやウッドストック等の映像でSantanaのルーツを辿りながらPRSの素晴らしいサウンドとルックスを堪能します。


ダレス空港へ到着し、入国審査をパスします。(少し緊張します...)
荷物をピックアップしたら先に現地入りしているPRS JAPAN 林氏と合流します。

到着日が日曜でPRS本社が休日のため、ワシントンD.C.を散策してからスティーブンスヴィルへと向かうことにしますが、その前に少し早めのランチにします。


「USAと言えばハンバーガー」ということでSILVER DINERというローカルチェーン店に行きました。
11時なのに店内はほとんど満席という人気ぶりです。


オーガニックビーフを使用していてジューシーで美味しいです。
アレルギー等も考慮してトッピングが全てカスタムオーダーというのも嬉しいポイント。
あっという間に完食して、ルート66でワシントンD.C.の中心部へ向かいます。


何度もPRS本社を訪問しているものの実は観光はほとんどできておらず、今回初めてホワイトハウスを見ることができました。
予想よりもコンパクトで驚いたことと、ワシントンD.C.らしさを存分に感じます。


日本の永田町のようなナショナル・モールの中心に立つワシントン・モニュメントや議事堂、アメリカンなアイスクリームの移動販売車を見て回ります。
現地の雰囲気や文化を直接感じることが、この後のギターオーダーに活きてきます。

雨の中2時間ほど散策して、今回の目的地PRSファクトリーがある、スティーブンスヴィルへ車で向かいます。
冬のワシントンは初めてですが寒いですね...


車で2時間ほど走り、少し晴れてきました。
チェサピーク・ベイブリッジを越えるとPRS本社があるKent Islandです。
日本を出発して1日経って現地に到着します。


夜までは時間があるため、PRSファクトリーの裏にあるTerrapin Nature Parkという自然公園を散策します。
ここで創業者であるポールリードスミス氏(以下Paul)のお母さんがバードウオッチングやスケッチをしていたのかなと回想します。


この公園内にチェピーク湾が一望できる絶景スポットがあります。
こちらの写真は別日にホテルから撮影したチェサピーク湾のサンセットですが、Private Stockのアートワークになるのがうなずけるほど絵画のような美しいコントラストです。


近年オープンしたホテルHyatt Place Kent Narrows & Marinaにチェックインします。
時差ボケは最終日まで解消されませんでしたが、快適なホテルで良かったです。
夕食をレストランで食べて就寝します。

PRS Factory Tour


外はまだ暗いですが、朝食ビュッフェでフルーツやハッシュド・ブラウンを食べて、いよいよPRSファクトリーへ出発します。


2023年10月、地域貢献が評価されてPRS本社前にあるストリートがPAUL REED SMITH PARKWAYと名付けられました。


看板を通り過ぎると間もなく到着です。


今回のPaul専用の駐車場はこの位置でした。


以前は無かった看板やロゴマーク等がファクトリーに取り付けられたことでPRS感が増してます。


中に入ると Jamie(President)、Paul Miles(Private Stock Director、以下Miles)、Tim(International Sales)といったPRSチームが暖かく迎えてくれます。
モニターにはWelcome SHIMAMURA MUSICと表示されていて感動です。


PRSファクトリーのシンボル的な存在で玄関に展示してあるARCHTOPⅡですが、いつもパーツまで手入れが行き届いていてチューニングも合っています。
こういった所にPRSのギターに対する愛情や、質の高さを感じることができます。


現在一般公開されているファクトリーツアーですが、2024年2月時点での様子をお届けします。

今回はライアン氏にアテンドいただきファクトリー内を見学します。

PRS本社は400人が2シフト+ナイトシフトで勤務しています。
朝6時から始まるので17時ごろには、ほとんどのスタッフが退社します。

サウンドやクオリティーアップを最優先に日々工程がブラッシュアップされ、試験的な取り組みも進められています。


ヘッドストックのローズウッドベニアです。
この後カットされ、インレイマテリアルが入れられます。


保管する際のフックに使用されるトラスロッドカバーにも、遊び心があるゴーストインレイが入れられています。


ギターが保管される専用スタンドもPRSらしいデザインで、この隙間から覗くだけで絵になります。


スタンドの下部にはバードインレイが入っています。


こちらは Private Stcok(以下PS) セクションです。

PSチームは現在19名で構成されています。
PSで使用されるNitroラッカーの塗料等はCoreモデルと異なり取り扱いが難しいため、Coreチームの中から卓越したスキルを持つメンバーがPSチームへと引き抜かれていきます。


2024年2月時点でUSAモデル(一部のPSを除く)の塗装はアンダーコート、トップコートともにPRS専用のラッカー塗装が採用されています。

塗料業社との関係構築により、PRSギターに最適なケミカルの少ない塗料が提供されることでサウンドや乾燥等も同社のギターに最適化されています。

さらにベースコートとトップコートは近年塗布する方法を変更したことで厚みを均一化に成功しています。


こちらのバック・ルーティングだけでお分かりの方もいらっしゃると思いますがJM “Dead Spec” Silver Skyの制作途中です。
PRSのアッシュ/アルダーボディ材のギターは、2PCまた3PCにて製作されます。


検品にはRoland社のアンプが使用されています。
USAブランドに日本メーカーの製品が導入されていると嬉しくなるのは私だけでしょうか。
※ちなみにPaulが使用しているチューナーはBOSS TU-3です。

フロントピックアップ+トーン0の状態でチューニングをすることがPRS流です。


写真の何気ないスポットにピンとこられた方はいらっしゃいますでしょうか。
実はこちらがInstagram等のSNSでよく見る画像を撮影している場所です。
説明されなければ、気付かず通り過ぎるところでした。


TCIが導入された後のピックアップセクションも拝見します。
部品製造から完成組立まで一貫生産するマニュファクチュアリングがPRSの特徴です。

TCIに関しては割愛しますが、実際に計測機器もお願いして見せていただけたことで、さらに理解が深まりました。

ワックスポッティングはPUによって2種のワックスを使い分けています。

ワイヤーのテンションもPUごとに調整するだけでなく、AWG○○といったワイヤーを製作する治具まで自社用に開発するこだわりです。
JM635PUだけは全品検品を行い、2kHzが出るようにレジスターや抵抗を取り付ける場合があります。


PSディレクターPaul Milesの専用ルームです。
中を見せていただけないかご本人にお願いしたところ「もちろん大丈夫!」と快諾いただけました。

残念ながら画像はお見せできませんが、PRSやPSに関するアイディアの源がここにありました。


SEシリーズのUSA出荷用ストックです。
USAへの出荷品はPRSファクトリーで検品された後、楽器店へ発送されます。
それにしても凄い物量ですね。


製品開発や自社製品のリペアを行うAMPセクションです。
もちろんPRSギターでチェックされています。


PSのような佇まいのウッドパネル&ブラウンペイズリー・トーレックスを採用したRecording Ampです。
個人的に再販して欲しい仕様の1つです。


最後にWEST ST.EAST STOREに向かいます。
こちらはPRSグッズやパーツの購入やギター/ペダルの試奏、貴重な1985年以前のプリファクトリー・モデルを見ることができる、PRSファクトリーのショウルーム的な存在です。


まず目に入った左のギターですがP2 No Serial Singlecut Natural Finish First Guitar Paul ever modelと表記された、最初期にPaul本人が製作したギターです。

最初は1PUでしたが、後に2PU仕様にモディファイされています。
GIBSON好きなPaulらしいギターです。


こちらは大変雰囲気の良いウェザーチェックが入っています。
現在、IT部門を担当している1985年創業当時の元ペインター、ジェフ氏から聞いた話ではプリファクトリー期のPaulはバスルームで塗装していたそうです。


P11 No Serial Sorcerer’s Apprntice Maple Top – Royal Blue 27F Double P-90 Humbukerと表記された、プリファクトリー期にPaulが製作したギターです。
ベースPUにP-90、トレブルPUにDouble P90ハムバッカーがマウントされた27Fギターという、現在でも斬新なアイディアで製作されたモデルです。


美しいアーチを描くボディカーブやバードインレイは、すでに高い完成度とオリジナリティです。
ブラス製のブリッジを採用する等、現在にも続くPRSのサウンドの原型が見られるレガシーギターです。


F6 Serial # -5 0005 Custom Vintage Yellow Production #5というギター。
まだ22Fギターのラインナップが無かったため、モデル名はCustomです。

1985年当時はウッドフィラー無しで塗装しており、ハーレーショップが近くにあったため、バイク用の塗料を購入して使用していた時期もあるそうです。

Whale BlueやVintage Yellowをペイントしていたジェフいわく、フィラーを使用せず、塗り重ねていくことによりウッドグレインでラッカーのように見えるのが、創業当時のフィニッシュの特徴とのことです。
今でも絶大な人気を誇るエメラルドグリーンは、ジェフのエンプロイギターから誕生しているレジェンド的な存在です。


さらにPTCへ行く途中、ArchiveにてPaulが個人的に所有する秘蔵のコレクションを見せていただきました。
こちらも残念ながらお見せできませんが、1985年以前のプリファクトリー期やプロトタイプの宝庫です。


PRSの現在と過去を体験したところで、ランチタイムのピザを食べながら休憩を取ります。
この後、PSオーダーに関するウッドマテリアル・セレクトに向かいます。

後編へ続く

ここまでお読みいただきありがとうございました。
後編ではいよいよPrivate Stockオーダーに向けた木材選定の様子をお届けいたします。

PRS Factory Visit 2024レポート(後編)【Paul Reed Smith】

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